「このままで良い。続けよう」という富山・安間貴義監督のハーフタイムコメントが物語る通り、前半の徳島は完全に富山の守りの術中にハマってしまっていたと言えよう。
高い位置ではプレッシャーに行かず、素早く来陣してブロックを形成する富山の守備に対し、徳島はボールを保持しても明らかに持たされている状態。組み立ての多くが時間をかけさせられて窮屈なサイドに追いやられ、青山隼ら最終ラインの選手たちが裏へ飛び出すドウグラスと津田知宏の2トップを狙い長いフィードを送ってもそこにはスペースがなく、ボールは幾度となく富山GK・守田達弥の手に収められてしまった。
また徳島としては、ボランチ・柴崎晃誠と濱田武へのコースを上手く消されていたことでいっそうそうした状況を打開できなかった。富山の前線の選手たちが常にアタック出来る距離で目を光らせていたことにより、コンダクターとなるべきその2人はほとんど中央エリアでボールを引き取れないまま。結果チームの攻撃のスタートはほとんどがセンターバックからタッチライン際に張るサイドバックへのパスという苦しいものになり、組織として効果的な組み立てを全くと言っていいほど行えなかったのである。
さらに折り返した後半、徳島は攻撃だけでなく守備でも難しい戦いを強いられるようになっていく。55分、自陣右サイドの混戦から逆サイドへ流されてソ ヨンドクに強烈なフリーシュートを打たれると、続く60分にはそれ以上のピンチが。朝日大輔に右サイド深くをえぐられて折り返され、ゴール正面の白崎凌兵にヘディングで合わされた。どちらも今季初出場となったGK長谷川徹の好守により失点こそ免れたものの、後半の序盤、徳島が攻めの意識を強めてきた富山に相当追い込まれ始めていたのは間違いない。
しかし、前節悔しい想いをした(彼の出場停止も大いに響きチームの連勝がストップ)大崎淳矢が見せた67分のワンプレーがそのような徳島を救う光となる。背番号20はこのゲームで初めて大胆にポジションを崩し、左サイドから長いダイヤゴナルランで富山のペナルティエリアへ侵入。宮崎光平から出たスルーパスを受けると、そこで鋭くドリブルを仕掛けて価値あるPKを獲得したのだ。そのPKを沈めたのはエース津田であったが、このゴールが何より大崎の積極性あってのものだったことは誰もが認めるところであろう。
そしてこの先制点でエネルギーを増した徳島は、その後の富山の反撃を非常に集中した対応でことごとくシャットアウト。全員が勇敢に体を張り、意識を高くキープした守備によってゴールを許さなかった上で、終了間際には柴崎が追加点まで奪って勝利を掴んだ。
前節で一旦連勝が途切れたとは言え、今節再び勝点3を手にした徳島はこれで8試合負けなし(クラブレコード)。前節に続き今節も上位が首位・G大阪を除いて総崩れとなったため順位はついに4位にまで浮上した。だが、小林伸二監督も「確かに結果はついてきていますが、一試合一試合どうやって点を取って勝っていくかというところにポイントを置きながら戦い、それが連勝に繋がればいいというふうに思います」と試合後会見で話したように、眼前の戦いを何より大事するスタンスは今後も絶対持ち続けなければならない。それが出来ればきっと徳島はこれからもチーム進化を遂げ、求める成果を挙げていけることであろう。
さて、敗れた富山に関してだが、「試合内容はそれほど悲観するものではない」という安間監督のコメントは十分うなずけるものだ。徳島を陥れた守りの戦術の徹底度は間違いなく高かったし、攻めに出た時のスピード感と迫力もあった。ただ攻撃の仕上げ部分の精度についてはまだ向上の必要性があるのではないか。実際この一戦で決定的な形の数が多かったのは富山であり、ラストパスやフィニッシュの精度をもう少しアップ出来ていればゲームの行方も当然変わっていたはずだ。それだけに、次節には個々がそれへの意識と集中をいっそう高めて戦いへ挑まなくてはならない。
以上
2013.08.19 Reported by 松下英樹
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