連敗を4で食い止めることができた栃木だが、本音を言えば勝点3が欲しかった。必勝を期した鳥取戦でも勝ち切れずに、これで10戦未勝利。「負けなかったことを前向きに捉えるしかない」。本橋卓巳は勝点1をネガティブに受け止めるのではなく、あくまでもポジティブに考え、中2日で迎える古巣・山形戦に向けて頭を切り替えるしかなかった。対する鳥取も監督交代というカンフル剤を使っただけに、勝点3を掴み取りたかったが逃げ切りに失敗。双方ともに泥沼から這い上がれずに、勝点3のみを求めた試合は痛み分けに終わった。
「廣瀬が3バックの外に走って起点になっていた。そういう攻撃を、前半はもっとやるべきだった」(松田浩監督)
高い位置でボールを奪うことに成功した栃木は、序盤から相手のウイークポイントである、3バックの両端のスペースを執拗に突いた。定石通りに3バックを攻略にかかったが、クロスの質とペナルティエリア内の人数が足りずに決定機を作るには至らない。その間、ピッチコンディションに悩まされたこともあり、不必要なミスを重ねたことがリズムを狂わせる。DFラインが安定感を保てなかったことで、次第に流れを失っていった。そのため、3バック対策がぼやけてしまった。
栃木とは対照的に鳥取は攻めにかかった際には迫力があり、クロスの精度も高かった。じわりじわりと、栃木を追い込む。迎えた21分、ドゥドゥのロングスローをGK榎本達也がキャッチミスして得たCKから、林堂眞のJリーグ初ゴールとなる先制弾が生まれた。勝ち癖が全くない状況で、榎本のミスは痛恨。29分に杉本真が股間を狙って放ったシュートは、GK小針清允に抜群の反射神経で防がれた。逸機するとボールに関与する機会が減り始め、栃木の攻撃は停滞してしまう。ボールを支配しながらも、5‐4‐1と専守防衛の鳥取を攻め崩せなかった。
悪しき状況を打開しようと、後半の頭に松田監督は一気に交代カードを2枚切る。菊岡拓朗とチャ・ヨンファンに代えて、サビアと小野寺達也を投入。この交代に速効性はなく、逆に「クロスをどんどん入れていこう」と前田浩二監督が出した指示通り、様々な角度からクロスを入れた鳥取がゴールに迫った。ところが、60分、68分に訪れた追加点の機会を鳥取は逃してしまい、71分に高速カウンターから被弾。クリアボールを収めた廣瀬浩二を林堂が潰しきれず、右に展開されクリスティアーノの狙いすましたクロスを、最後はサビアに左足で合わされて同点に持ち込まれた。サビアは鳥取戦の相性の良さを活かし、前回の対戦時と同様にチームを窮地から救った。振り出しに戻った試合は、追い付いたことで波に乗った栃木が優位に運ぶ。しかし、「鳥取の守備が良かった」(サビア)ことでゴールは割れず。ゴール裏のサポーターが掲げた、「+3」の横断幕のメッセージに結果で応えることは叶わなかった。
「勝点1は最低限」
引き分けをそう解釈したGK小針は続けて、「体制が変わったので勝点3が欲しかったけど、アウェイで先制点を取ったり、守るところは守れた」と一定の手応えを口にした。僅差の展開で詰めの甘さが露呈し、7試合ぶりの歓喜を味わい損ねたとはいえ、守備から攻撃に移りフィニッシュで終わる形を、絶好機を幾つか作れたことは収穫だった。G大阪をホームで迎え撃つ次節に向け、鳥取は明るい材料を持ち帰ることができたと言える。
同点に持ち込みながらも、あと一歩が足りなかった栃木。勝点2を喪失しただけでなく、次節の山形戦はチャとクリスティアーノを出場停止で欠く事態に見舞われた。2位・神戸を3‐2で撃破した山形は攻撃陣にタレントが揃い、パワーのあるチャとクリスティアーノの離脱は相当の痛手になるだろう。だが、長期離脱を強いられたボランチの小野寺が戦線復帰したことは、栃木にとって少なくない光明だ。フル出場は難しいかもしれないが、試合の頭から使える目処が立ったことは小さくない。鳥取戦の小野寺のパフォーマンスに関して、指揮官は「相手のプレスをはぐらかす仕事をしてくれた」と評した。ようやく中盤にいるべき選手が戻ったことで、ボールの循環が良くなるなど、様々な波及効果が期待できる。ピッチに立てる選手がチームの役割を順守し、個々の持ち味を発揮することで、今度こそ勝利という果実をもぎ取りたい。
以上
2013.08.19 Reported by 大塚秀毅
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