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【J1:第21節 F東京 vs 横浜FM】レポート:首位に立った横浜FM。完敗のF東京が埋められなかった精度の差(13.08.18)

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その差は小さいようで大きかった。F東京はホーム・味スタで横浜FMと対戦して0−2で敗れた。前半31分に先制点を与え、前掛かりとなった試合終了間際に追加点を奪われて試合を決められた。7戦ぶりの敗戦で9位まで順位を落とした。効率的な試合運びをした横浜FMは8戦ぶりの完封で3連勝。広島が名古屋と引き分けたため、首位に浮上した。

横浜FMの樋口靖洋監督は試合後、「選手を称えたい」と声を踊らせた。プランどおりの試合展開、それに応えた選手。指揮官は改心の勝利を嬉々として語った。
「ファーストDFがどれだけ決まるかというところがポイントだった。それが決まることによって、全体が下がることなくラインを保ちながら閉じることができる。チャレンジ&カバーの連続もかなりできた。ファーストDFが決まるかどうかはうちの守備のポイントだと思うので」
前半は、その言葉通り、横浜FMの選手たちは攻守が入れ替わった直後から狙いを絞って献身的に走った。このプレッシャーを感じたF東京は奪った瞬間のチャンスを逃し、プレスを抜け出たとしても中央を堅く閉ざした横浜FMの前に決定機を多くつくり出すことができなかった。
ただし、横浜FMにも多くの決定機を与えていたわけではない。F東京も攻守の切り替えや、中央を閉ざす守備は練習していることだからだ。実際にシュートも横浜FMの7本を上回る9本を放っている。

しかし、2つのチームには差があった。それを分けた場面があった。F東京は前半18分、徳永悠平が右サイドをフリーで抜け出てそのままエリア内へと侵入した。だが、中央に人数を揃えた横浜FMの前に、クロスを待つ選手の動きも乏しくパスコースを見出すことができなかった。直接狙うという選択肢もあったが、エリアの外に走ってきた高橋秀人へとボールを落とした。高橋はそこでシュートを放ったが、枠を捉えることができなかった。
それに対し、横浜FMは前半31分、左サイドに開いたマルキーニョスが中央へとパスを送る。ボールを受け取った中村俊輔はドリブルで仕掛けてF東京の守備を中に寄せる。そこで左サイドのペナルティエリア角で待つ兵藤慎剛へとボールを渡した。兵藤はマルキーニョスが空けたFWのポジションに入ってきた端戸仁とパス交換してマークを外すと、右足で鮮やかにゴールを奪った。このとき、F東京は中央に人数を揃えていたが、横浜FMの連係について行けずにゴールを割られてしまっている。

横浜FMは前線の4人が流動的にポジションを変えて、そこにパスを引き出す動きとドリブルを交えてF東京の守備を翻弄した。流動的にポジションを変えることにはリスクがはらんでいる。が、樋口監督は「やはり攻守が切り替わった瞬間が一番パワーを使わなければいけないと話しています。もちろん経験値もありますが、パワーを使うところを共有できていることは大きいと思います」と言う。前半の横浜FMは、しっかりとネガティブトランジションを怠らないことでリスクを最小限に抑えることができていた。もっと言えば、相手の攻撃スピードを抑えた後、狙いを定めて囲い込んで奪うということも実践できていた。前半は、攻守における精度に開きがあった。

後半に入ってF東京は前半以上に決定機を増やした。横浜FMの運動量が徐々に落ち、途中出場で入ってきた三田啓貴、石川直宏が積極的に縦へと仕掛けた。後半からボランチに入った長谷川アーリアジャスールがドリブルでマークを剥がして前を向くプレーを増やしたことも一因。それによって横浜FMの守備網に歪みが起こり、そこからチャンスをつくり出せていた。84分に石川がシュートを放ち、85分に徳永の折り返しを渡邉千真が狙ったが、いずれも得点にはつながらず。
逆に、試合終了間際の89分、カウンターからトドメを刺されてしまう。マルキーニョスがキープして時間をつくるとサポートした中村がボールを受け取る。エリア外でDFと対峙した中村は、複数のフェイントを織り交ぜてシュートコースが空くのを待った。そのステップにF東京DFは踊らされ、バランスを崩した瞬間。左足を振ってゴール左上へと突き刺して試合を決めた。

敗者は、正しく勝者を評価した。
米本拓司は「決めるまで後ろが我慢しなければいけない。それができるチームが強いチーム。後半の最初は押し込めた。でも、相手はしたたかだった。攻められても慌てていない。ここを守りきれば、チャンスが来ると分かっていた。そういうところも相手から学ばないといけない」と語り、高橋秀人は「動きの内容も量も相手の方が上。寄せだけじゃなく、動き出しや、声の量もすべてにおいて相手の方が勝っていた。自分たちの力はまだまだ」と話した。
横浜FMはチームとして完成されつつある。崩されないように守り、セットプレーやカウンターの精度も高い。さらに、守備もどこでどう奪いきるかというところまでハッキリしていた。そこに、流動的な攻撃を積み上げようとしている。
F東京には、磨くべきところは際限なく残っている。流動的で攻撃的なサッカーを目指すのであれば、一つひとつのプレーの判断や、ゲームに向けた戦略も含めてさらに練り上げなければいけない。残り13節。首位横浜FMとの差をどこまで縮められるかは細部にこだわるところから始まる。

以上

2013.08.18 Reported by 馬場康平
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