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【J1:第21節 広島 vs 名古屋】レポート:戦術的要素満載のぶつかり合い。膠着した試合を動かしたのは、強烈な個性だ(13.08.18)

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シュート数は、広島5本で名古屋が9本。シュート数だけで試合を語ることはできないが、昨日の広島対名古屋戦は、数字そのままの試合だった。少なくとも、ミキッチのゴールが生まれる77分まで、ゴール前に絡んでくるシーンが、本当に少なかった。

名古屋・ストイコビッチ監督は試合前日、「戦術的な試合になる」とコメントしていたが、まさにその言葉どおり。守備の局面で名古屋は4バックにボランチを加えた5人で、広島の1トップ2シャドー+ワイドを見ると同時に、起点となる青山敏弘にはマンマークをつける。攻撃では、両サイドバックが高い位置をとる一方、後ろは闘莉王・増川隆洋の2センターバックに加えて、ボランチの田口泰士かダニルソンが下がって「3バック」を形成。もう1人のボランチも低い位置でボールを受け、パス交換を繰り返す。それは、広島のカウンター対策としての人数合わせと同時に、ボールを奪いに来させてブロックに「スキ」をつくることが狙いだった。
実際、広島は前半、何度か相手のパスをひっかけて、カウンターをとった。ワンタッチパスの連続で相手のゾーンをかいくぐり、縦に速攻を仕掛けた。だが、リスク管理に怠りない名古屋は、決定機を与えずに守り切る。名古屋の狙いは、守備面では奏功していた。

一方、名古屋の「誘い」を理解した広島は、名古屋が後ろでボールをさらしながら誘っても、5-4-1のブロックを崩さない。将棋でいえば千日手。柔道でいえば、互いに「指導」が出るような膠着状態が長く続いた。
ピッチ近くで写真を撮っていたカメラマンが「局面の激しさ、技術の高さ。剣豪同士の対決のようなピリッとした空気があった」と指摘していた。そういう要素も、確かにある。ただ、ピッチとスタンドの間にトラックがあり、さらにスタンド上部にある記者席からは、局面の激しさ・厳しさの実感よりも「駆け引き」が目立った。

「もう少し(名古屋が)前にボールが入ってくれれば、ボールを奪えると思ったんだけど、なかなか縦には入れてくれなかった。バックパスが多くて、名古屋もリスクを冒しては来なかった」と佐藤寿人は言う。
「かといって、僕が無理をしてボールを前から取りにいく必要はない。名古屋の良さは、相手に攻めさせて、いい形でボールを奪うこと。そこの強みは、出させなかった。ただ、その上で、自分たちの良さを出すことが足りなかった」
前半に何度か受けたカウンターも影響したのか、ボールを保持する名古屋は縦パスを入れない。酷暑のために運動量が落ち、遅攻がうまくいかない広島は、名古屋の思惑にはまることがないよう、我慢する。ゴール前に迫るシーンもあるのだが、共に単発。その状態が大きく変わったのは、やはりミキッチのゴールからだ。

ボールを受けたのは、自陣の深い位置。そこから広島のミスター・タフネスが、走る。ドリブル。約60m、1人でボールを運ぶ。名古屋は、スピードスターを止めることができない。
「監督からゴールに向かって仕掛けろ、とアドバイスをもらった」。
その言葉どおり、ミキッチは中に切れ込む。コースが空いた瞬間の左足。楢崎正剛の手も届かず、そしてネットに収まる唯一のコースを、ボールは走った。広島にとって初の決定機がそのまま、ゴールにつながった。

ストイコビッチ監督は闘莉王を最前線に投入。一方の広島は闘莉王に入るハイボールを跳ね返し、カウンターを狙う。選手たちもボールも、波のように寄せては返し、ダイナミックに動き始めた。得点が動いたことで、相手の良さを消すのではなく、自分たちの強みを出す意識が上回った。
アディショナルタイム。広島のミスから得たスローインから、阿部翔平がクロス。闘莉王が飛ぶ。水本裕貴が競る。こぼれた。永井謙佑が頑張り、ボールを置いた。闘莉王、ギラリ。左足を振り切る。同点だ。

ゲームはここで終わらない。青山敏弘の美しい縦パスにファン・ソッコが走り込む。阿部、必死に走って身体を寄せる。クロス。石原直樹、フリー。シュート。決定的。増川隆洋が決死の顔面ブロック。さらにソッコがクロス。今度は藤本淳吾がクリア。ビッグプレーの連続に、スタジアムは熱くなった。

内容から見ても引き分けは妥当と言わざるをえない。相手の研究を重ね、練り上げた戦術が「打破」ではなく「膠着」を生む。そこで生まれた予定調和的な空気を突き崩したのは、ミキッチと闘莉王という、強烈な「個」だったという現実。そういう意味では、興味深い戦いだった。
ただ、あえて思うのは、このカードがもっと涼しい時期に、広島に森崎和幸がいて、名古屋にケネディと中村直志がいたら、果たしてどんな試合となっただろうか。もう一度、互いのチームがいいコンディションの中でぶつかり合う姿を見たい。試合後の正直な感想である。

以上

2013.08.18 Reported by 中野和也
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