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【J1:第14節 甲府 vs 浦和】レポート:勝って大宮との差を詰めた浦和に祝福を、甲府に慰めはいらない(13.07.07)

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試合後の記者会見では、通訳の時間を含めて約20分話したペトロヴィッチ監督。「話が長くなってすいません」と言って、会見を終えてからも尻は椅子にくっついたままで、もう1回エンジンが掛かって、自分が指揮するチーム(昔・広島、今・浦和)に対して対戦相手が、何故守備を崩そうとしないで攻撃を止めることに主眼を置くのか、という趣旨の話などをした。日本サッカーに対する提言でもあり、疑問でもあると思うのだが、この日の甲府のサッカーに対する印象でもあるはず。83分まで、よく連携して耐えた甲府だったが、那須大亮に頭で決められた後の前掛かりになった甲府に対して、浦和に2点を追加するチャンスがあったことを見れば、“浦和の守備を崩す”というサッカーをやりたくてもできないことはよく分かる。ペトロヴィッチ監督は、(チーム作りでは)攻撃を作る方が時間が掛かる、とも話していたが、失点のリスクを覚悟して相手の守備を崩すサッカーを標榜しても、3失点、4失点する負け試合が続ければ大抵の監督はクラブの偉い人に肩を叩かれる。例えば、ペトロヴィッチ監督が、湘南や大分で監督をしたらどうなるのか、どんなことをするのか興味があるが、この日の甲府は地に足をつけた戦いをやりきったと思う。

甲府はヤマザキナビスコカップをグループリーグで敗退していたので1ヶ月以上公式戦が無く、リーグ戦の再開試合が国立競技場で、相手が浦和という条件に開場後からアドレナリンがチョロチョロ出始め、キックオフ直前になると両クラブのサポーターの声でスタジアムが引き締まると、ドバドバ出てくる感じになった。立ち上がりは、初めて買った新車をディーラーから家に乗って帰るときの運転みたいに、お互いに慎重。そして、徐々に浦和がサイドチェンジをしながらアクセルを踏み込む場所とタイミングを見つけ始め、6分にはDF槙野智章が甲府の右サイドでSBの福田健介と1対1の場面を作り、振り切ってクロスを上げた。14分には興梠慎三が同じサイドで福田からボールを奪ってチャンスを作った。ここは甲府の選手が身体を張って守りきったが、距離を詰め切れない消極的な守備や自陣での決定的なミスをするとすぐに傷口を広げられてしまう。

甲府はこの流れて失点すると、自信を失うパターンに陥りそうだったが、19分に山本英臣が石川遼みたいにバックスピンが掛かったような縦パスを浦和のディフェンスラインの裏に入れ、水野晃樹に通した。このシュートはホームラン性になってしまったが、気持ちを取り戻すきっかけになったように思えた。35分には柏好文が中央からドリブルしてシュートを打ち、最初の決定機になったが、水野、柏、羽生直剛のコンビネーションでは39分にも決定機を作っており、平本一樹との連携を高めればこの4人でかなりの仕事ができそうな印象を持った。主導権は浦和にあったものの、そうなることを想定しての戦いなので、そのなかから決定機を作ることができていることは甲府の狙い通り。あとは、その数を増やすこと。“数打ちゃ入る”と言うと、選手のプライドを傷つけるかも知れないが、ワンチャンス、ワンゴールを求めるのは高望み過ぎる。決定機の数が増えれば、“浦和の守備を崩すことに主眼を置いたサッカー”に近づくのではないだろうか。

0−0で後半に入り、なんとなくソワソワする展開となったが、52分の羽生のシュートは決定機に認定できるもので後半の立ち上がりは甲府ペース。でも、徐々に気になってきたのは浦和のシュートシーンや決定機に、46番(森脇良太)や5番(槙野)や4番(那須)という、後ろにいるはずの数字が見えること。これがペトロヴィッチ監督のサッカーなのだろうが、ボランチに下がった柏木陽介あたりが上手くバランスを取っているオートマチックな感じが素晴らしい。前半も薄々感じていたが、やられるならディフェンスラインの選手という感じが強くなってきた。後半の中盤になると、(浦和の方が数が多いけれど)お互いに相手ゴール前に攻め上がるチャンスが増え、守備の組織力が低下し個や少人数のコンビネーションで局面を打開できる展開になってきた。こうなれば普通は浦和が圧倒的に有利だけれど、3連敗で悔しい中断期間を過ごしてきた甲府はまだアクセルを踏めた。70分の森脇のシュートをスライディングで土屋征夫が防ぎ、78分には前半は少し消極的的な守備だった福田がカウンターを防ぐ積極的な守備を見せるなど、闘い続けた。佐々木翔も1対1の強さを見せつけていた。

それでも、決められてしまった83分。梅崎司のクロスから。ペナルティエリア内は3対3だったけれど、ボールサイドはカバーの意識があったから実質は浦和の3人を2人で見ている守り方。少し前に似た場面があっただけに、感じることができていればよかったが、失点という授業料を払わないと「まだまだだよ」ということは教えて貰えなかった。試合後、ミックスゾーンに出てきた選手は当然悔しそうにしていたが、何人もが「勝たないと意味がない」と言い切った。そう、「悪くない内容だったけれど…」なんて慰めはいらない。GKの河田晃兵も失点シーンを悔やむと同時に、“あの(クロス)ボールに出て行ける選手になるように努力する”と成長を自分自身に誓い、課すように話した。1ヶ月以上続いた3連敗の悔しさは、4連敗の悔しさとなって今週水曜日のアウェイ鳥栖戦まで続く。鳥栖戦、湘南戦と世間様が降格候補に挙げることが多いチームとの対戦続くが、甲府にとって一戦必勝の戦いになる。

浦和は、難しい90分間を戦いながらもしっかり勝点3を手に入れた上に、大宮が鳥栖と引き分けたため勝点差を2縮めて1試合分の3差に持ち込んだ満足のリーグ再開戦。3−0で勝てなかったことは不満かも知れないが、勝ち切ったことに価値がある。次節以降は、F東京(8位)、川崎F(7位)、横浜FM(3位)と、今度は代表クラスの選手を多く抱える、予算規模が大きいクラブとの対戦が続く浦和。甲府より決定力のあるストライカーやキッカーがいるのだから失点する可能性も高まると思うが、それ以上に点を取り、攻撃的サッカーの魅力を見せつけて勝つことができるかどうかが注目される。

以上

2013.07.07 Reported by 松尾潤
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