再開前のJ1で10位の仙台と、16位の湘南。ともに巻き返しをはかる上でも、勝点3が欲しい。湘南の曹貴裁監督は試合中に「2009年に仙台さんと一緒に昇格させてもらって、10年に我々は降格してしまいましたけれど、そのときにこの地で逆転負けを食らったこととか、いろんなことが浮かびました」とのことだが、09年にJ2で首位争いを繰り広げた者同士、意地を見せ合う勝負だった。
通常とエンドが逆の状態で始まった前半は、仙台ペースで進む。湘南が左サイド・高山薫の切れ味鋭い突破を中心にチャンスをうかがおうとするのに対して、仙台は菅井直樹と蜂須賀孝治の両サイドバックが守備を重視してサイドを守る。また、トップに入った大槻周平にクサビのボールが入ることに対しては、この日、出場停止の鎌田次郎に代わってセンターバックに入った角田誠が石川直樹と連係して対処。「コレクティブな守備を表現する」という手倉森誠監督の狙いが当たり、仙台は「いい守備から攻撃へ」というプランを遂行した。
湘南は前線の3人のプレッシャーが強く、一方で最終ラインとボランチとの距離感も適切だった。しかし前半はこの前後のポジション間が開く隙を見せていたために、仙台がこのスペースを利用。赤嶺真吾がポストプレーからこの位置にボールを落としたり、ボランチに入った梁勇基と富田晋伍がボールを拾ったりして、チャンスを作った。特に先発に抜擢された武藤雄樹がこの日は好調で、18分にターンから突破に持ちこんでのシュート、30分には中央に抜けての力強いシュート…と、チャンスを量産した。
仙台にとって悔やまれたのは、この前半に得点できなかったことだった。「最後に自分がシュートを決めるところで決めていれば…という思いが強いです」と武藤が試合後に反省したように、前半だけで8本打ったシュートは精度を欠く。また、その武藤を阻んだ大野和成のカバーリング、44分に赤嶺の決定的なシュートを止めた安藤駿介の好プレーといった、湘南守備陣の水際の踏ん張りも効いた。
後半に湘南が曹監督の重視する「コンパクトフィールドの意識」をピッチで表現し直し、距離感を修正。仙台は中央のスペースを前半ほど使えなくなった。そして後半開始から投入された馬場賢治を筆頭に、交代で入った選手がチームに推進力をもたらした。終盤にはカウンター合戦になったが、湘南は中川寛斗が高山と入れ替わりながら左サイドでチャンスメークをしたことで、あわやゴール、という場面も増やすことができた。しかし87分に高山のループシュートが枠に弾かれたように、仙台守備陣の寄せの速さが衰えなかったためにゴールへのスペースを射貫くことができなかった。
先発メンバーでのゲームプラン、精力的なプレッシング、状況を読む力、そして効果的な攻撃のカード。両チームとも論理的に考えられる手段を取ったものの、ゴールが入らない時は入らず試合終了。湘南の古林将太が前半終了前のチャンスを「あそこで決めていればもっと後半を楽に戦えた」と振り返り、仙台の角田は「ボールもしっかり回っていたし、今までのような悪い失い方もなかったので、あとは個人の決める部分」と語った。
互いに欲しかった勝点3を取れなかったという事実は、もう覆すことができない。両チームにできるのは、短期的にはこのゲームの内容を反省し、攻撃の選択肢を増やしたりシュートの精度を上げたりして、長期的なシーズンの成績につなげるという作業だ。この勝点1を悔やんだままで終わるのか、この勝点1が後で生きたと言えるようになるのかは、自分達の今後の努力次第である。
以上
2013.07.07 Reported by 板垣晴朗
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