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【J1:第14節 名古屋 vs 清水】レポート:新戦術が機能した名古屋は小川の2得点などで清水を圧倒。3か月ぶりの勝点3を手に入れ、最高のリスタートを切った(13.07.07)

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歓喜に沸くゴール裏と、晴れやかな表情の名古屋の選手たちを久しぶりに見た。リーグ戦での勝利は4月13日の第6節・新潟戦以来の約3か月ぶり。ストイコビッチ監督は素直に「タフな内容のゲームの中で勝点3を取り、新しいスタートを切ることができた。今はハッピーな気持ちだ」と勝利の喜びを口にした。選手も同様だ。5月のリーグ5試合で5連敗を喫していたチームは見事に再生を果たし、忘れかけていた勝点3の重みを噛みしめた。

名古屋が勝ち越し点を決めたのは試合終了間際だったが、試合の流れは開始15分でほぼ決まっていた。キックオフ直後の攻撃で増川隆洋がロングフィードを藤本淳吾に合わせ、落としたボールをケネディがシュート。続く4分には田中マルクス闘莉王のロングフィードを小川佳純が落とし、ケネディ、玉田圭司とつないで最後はまたもケネディが惜しいシュートを放つ。この2回の攻撃が、清水の守備組織を狂わせた。両サイドバックが同時に高いポジションを取り、ボランチの1枚とセンターバックがビルドアップを担う現在の名古屋の戦い方では、センターバックからのフィードは主な攻撃パターンのひとつ。その形で決定機を作ってみせたことで、清水の最終ラインは裏のスペースを警戒せざるをえなくなった。そのためこの試合での清水のDFラインは名古屋のポゼッションに対しズルズルと後退。結果、中盤に大きなスペースを空けてしまい、そこを玉田や藤本、ケネディらに使われさらなる劣勢の呼び水となった。

最高の試合の入り方をした名古屋は、その流れを逃さず先制点を奪う。9分、右サイドに流れた玉田からDFの足先をかすめるパスが中央のケネディに通る。振り向いてDFの位置を確認したケネディが丁寧に裏へとスルーパスを送ると、絶妙のタイミングで走りこんだ小川が冷静に流し込んだ。サイド攻撃偏重になりがちだったチームは中央での崩しも新戦術の中で取り組んできたが、その狙い通りの得点はチームに勇気を与えた。4分後にはGK楢崎正剛の珍しいミスにより失点したが、守護神は34分の伊藤翔の決定機を貫録のビッグセーブで阻止。同点後に清水はフォーメーションを4-1-4-1から4-4-1-1に変更し名古屋の変則布陣に対応したものの、主導権を奪い返すには至らなかった。

15分間のインターバルで、両指揮官は状況に応じた的確な指示を与えたが、残念ながらそれを実行に移せたのは名古屋だけだった。後半はほぼ隙のない、名古屋のワンサイドゲームとなったからだ。シュート数にして何と12対0。清水は後半で決定機どころか、シュートすら打てなかったのである。ゴトビ監督はその理由を「湿度や暑さのせい、そしてケネディをリスペクトしすぎた」と語ったが、藤本の「清水が失速していった」という感想と合致する。そこでストイコビッチ監督はあくまで強気に振る舞い、勝点3獲得へ積極的に動いた。74分に中村直志に代え田中輝希を投入し、87分には玉田に代えてダニエルを入れ、闘莉王を前線に上げる「最後の切り札」(ストイコビッチ監督)まで操り出す。確かにドローで終えるには、あまりにもったいない展開だった。

指揮官の執念が実ったのはダニエル投入からわずか2分後だった。左サイドバックの阿部翔平がDFが触れない絶妙なアーリークロスをファーサイドに送る。抜け出したケネディはトラップミスするも、何とかボールを突ついてシュートに持ち込む。これはGK櫛引政敏が弾いたが、こぼれ球には闘莉王が詰めていた。しかしこれも清水DFのブロックにあい、ボールはゴール正面へ。待っていたのは小川だ。三度目の正直とばかりに左足を振り抜くと、低く抑えられたシュートが文字通りネットに突き刺さった。土壇場で生まれた勝ち越しゴールには17,950人の観衆も大爆発。激情家のストイコビッチ監督などは嬉しさのあまり、ガッツポーズの着地点がピッチ内だった程だ。チームと指揮官の根底に流れる「Never Give Up for The Win」の精神ここにあり。今季好調を維持してきた小川の大活躍で、名古屋は連敗を5でストップし、3か月ぶりの勝点3を手にした。


すんでのところで勝点1を失った清水は、守備の修正がチグハグだったことが一番の敗因だったといえるだろう。しきりにDFラインを上げろと指示したゴトビ監督だったが、選手にしてみれば「相手のセンターバックが持ち上がってきた時、あれだけフリーで持ってこられると何でもできる。監督には勇気を持ってラインを高く保てと言われたんですが、ファーストディフェンダーのところが今日はあいまいだったので」(平岡康裕)と、解決するべきポイントに微妙なズレがあったようだ。伊藤などは厳しいフォアチェックからボールを奪い、効果的なショートカウンターにつなげていただけに、その点をもっと強調していれば形勢は逆転していたかもしれない。カウンターへのリスクマネジメントは、楢崎らが最も懸念していた部分だったからだ。この日も平均年齢がスタメン24歳、18人で23歳という若いラインアップだった清水は、そうしたゲームマネジメントにおける経験が足りなかった。

だが、名古屋も浮かれている場合ではない。内容は及第点を超えたが、相手が自由にしてくれた部分が大きいことを忘れてはならず、結果としても連敗を止めたに過ぎない。順位はひとつ上がったが、依然として降格圏の方が近いのだ。試合後、硬い表情を崩さなかった闘莉王の言葉が真理を突く。
「たったの1勝なんでね。勘違いされちゃ困ります。また、次は厳しい相手なので頑張ります」
次戦は中3日、大宮とのアウェイゲームが待っている。今季のリーグ最強の守備とカウンターを誇る首位を相手に同じサッカーが展開できるかどうか。良いリスタートを切った今こそ、次戦以降でその真価が問われることになる。

以上

2013.07.07 Reported by 今井雄一朗
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