勝った山形にも、負けた鳥取にも、6-0と大差がついた第15節は記憶に新しい。というより、あれからまだひと月半も経っていない。今節から後半戦。前半戦の結果も加えられた新たな過程のなかで、前回とはまた違う形で対戦相手と向き合うことになる。

山形の前節・水戸戦は前半に相手が退場となり、数的優位の相手にカウンターから先制を許す展開となったが、前半にPKで振り出しに戻すと、後半さらに1人退場で9人となった相手に対しボールを動かしながらじっくりと攻めた。相手を消耗させたところで経験値の高い、復帰明けの山崎雅人、石川竜也を投入してシステムも中盤ダイヤモンドに変更。石川のコーナーキックから中島裕希がスラし、山崎が勝ち越しゴールを挙げると、直後にも林陵平が追加点を挙げ、終わってみれば3得点。4月以降は一度もなかった連勝を果たした。6月以降は3勝2分と負けなしで、いずれも複数得点を記録。ここまで半分以上の12試合が複数得点で、J2トップを走るチーム総得点は42となり、ついに1試合平均を2点台に乗せた。昨シーズンに首位で折り返したことを考えれば現在の7位はもの足りない感もあるが、多くの選手が試合経験を積み、人を入れ替えても簡単に質を落とさないチーム状況は、後半戦に向けて希望を抱かせるものだ。

水戸戦は、そこへさらにチームの経験値を上げる得難い教訓となる試合だった。10人になった水戸がシステムを変え、自陣を固めてカウター狙いとはっきりと戦術を切り換えた一方で、山形はその変化にどう対応するのか、個々の意思がチームの意思として収斂されるまでにやや時間がかかったように見え、その時間帯にカウンターから先に失点も喫した。「僕のイメージとしてはサイドを変えて、相手を疲れさせてというのをやりたかったですけど、みんなボールを持てるようになったから、自分のところに来たらずっと持っている。もともとそういう選手が多いチームなので」と秋葉勝。勝点とともに得たそうした教訓は、残り半分となった今シーズンのどこかで必ず生かされるものだ。

前節、愛媛に0-1で敗れた鳥取はこれで4連敗。順位も21位まで下がり、最下位・岐阜との勝点差も2まで迫ってきた。このタイミングで前回大敗している山形との対戦となる。第19節・岐阜戦は3-4、第20節・北九州戦は2-3といずれも逆転負けを喫しているが、前節は林堂眞の出場停止でバックラインに吉野智行を、GKにも今季初めて小針清允を起用して0-1。小村徳男監督は「ここ数試合、得点は取れているが失点も多いというところで、まずは守備に関してはアウェイなので修正して臨んだ。内容としては1点取られたが、それは我々のミスで守備の綻びではないと思う。守備のところで改善してチャンスを与えなかった」と守備の修正に一定の効果を認め、8試合ぶりに先発した実信憲明も「ここ何試合かは先制して逆転を許し、嫌なムードだった。今日は失点するまでは粘り強くやれたし、そこは次につながると思う」と手ごたえを口にしている。

一方で小村監督はこうも語っている。「攻撃のビルドアップのところから中盤のところまではボールがいくが、そこからの工夫は守備に時間を割かれて、前線の動き出しやコンビネーションは、点が取れていた頃と比べて運動量が落ちていたと感じている」。愛媛戦では攻めきる形に持ち込めないことで守備への負担がさらに増えていた。こうした“副作用”を改善するには、中3日でのアウェイ連戦は厳しい条件には違いないが、「0-6」の悔しさを晴らそうとするパワーが雪辱へ大きく一歩踏み出させることもある。

「相手は連敗中だが、そこに彼らがどういう気持ちで臨んでくるかは明白。こちらはそれ以上の目標に向かってやっていきたい」。山形・奥野僚右監督も、鳥取のそうしたリバウンド・メンタリティーに思いを致す。そして、「前回と同じ展開に持ち込めれば理想的だが、人も違えば形も違う。蓋を開けてみないとわからない」と今節が前回と違う1試合であることを強調した。鳥取の外へ追い出す守備に対して、サイドチェンジを使いながら崩していくこと、鳥取のボランチに自由にさばかせないこと、陣形をコンパクトに保ちセカンドボールを優位に拾うことなど、やるべき仕事を着実に進めた先に、勝点3は待っている。

以上

2013.07.02 Reported by 佐藤円