「全体的にF・マリノスの方がアグレッシブでしたし、球際も激しかった」
敗れた鹿島アントラーズの曽ヶ端準が、淡々と試合を振り返った。その言葉どおり、横浜FMが攻守において鹿島を上回り、準決勝への勝ち名乗りを上げた。
横浜FMの守備では、一人の男のクレバーな状況判断が、鹿島に反撃の糸口をつかませなかった一つの要因に。男の名は中町公祐。普段はトップ下とアンカーの間に位置するセンタープレーヤーで、この日もキックオフ時は、中村俊輔と富澤清太郎の間の位置にいた。しかし、試合開始からの鹿島の数プレーを見て、自らの判断から微調整を施したという。
「相手ボランチが俺らを引き出す感じで繋いできた。俺らをボランチに食いつかせて、その空いたスペースを、野沢(拓也)さんと本山(雅志)さんが使いたかったのではないかと、感じた。それでわざと(前に)行かなかった。行ったら相手の思うツボだった」
中町は前からボールを奪いに行かず、富澤と並んで中盤の底でどっしりと構えた。その結果、小笠原満男を起点に鹿島がボールを繋ぎ主導権を握っているかのように見えたが、どちらかと言えば、“ボールを持たされた感”が強かったに違いない。
また横浜FMは、ある程度ブロックをしっかり築いたことで、守備陣形がコンパクトにまとまった。そのため大迫勇也、ダヴィは、第1戦とは異なり、走り込むスペースが見つけられずに苦戦。足元でボールを受けようとしても、ファビオ、中澤佑二にインターセプトされるか、鋭い寄せで潰された。
ただし、チャンスがなかったわけではない。35分、右からのアーリークロスのこぼれ球を本山が至近距離からシュート。だが、これは榎本哲也の横っ飛びセーブに阻止された。
すると、4分後に横浜FMがベスト4に向け、大きく前進するゴールをゲット。齋藤学が左からカットイン。一人かわしてすぐさま振り抜いた無回転ミドルがゴール隅に突き刺さる。
このゴールがメンタル的に鹿島にダメージを与えたのか、後半は冒頭の曽ヶ端のコメント内容がより顕著にあらわれる。59分には、ドゥトラのスルーパスで裏へ抜け出したマルキーニョスがスライディングシュートを見舞い、2点差に広げる。
直後に鹿島はジュニーニョ、遠藤康を同時投入して大胆にリズムを変えようとしたが、時すでに遅し。64分に大迫が粘って右サイドをこじ開けクロスを上げ、ダヴィがダイビングヘッドで1点を返すに留まった。逆に途中出場の奈良輪雄太にプロ初ゴールを献上し、大会3連覇の夢が潰えたのである。
試合後、鹿島ゴール裏からの辛辣なブーイングを、選手たちは一身に浴びた。リーグ戦再開に向け、そのブーイングのメッセージを真摯にくみ取らなければいけないはずだ。
一方“したたかな”戦いぶりで横浜FMは、4年ぶりのベスト4進出を決めた。次に待ち構える相手は、過去2年で勝てず、昨年末の天皇杯準決勝、今季のアウェイ戦でも敗れた天敵、柏レイソルだ。それを知った中澤は静かな口調でこう言った。「今日勝てたのは、F・マリノスが成長しているというあらわれなので、だからこそ決勝に行きたい。(柏は)相手にとって不足はない」。
以上
2013.07.01 Reported by 小林智明(インサイド)
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