仙台の手倉森誠監督は、バランスを重視する。攻守のバランス、前後左右の位置取りのバランス、さらには心のバランスも。それらのバランスが取れた状態、というものは常に50-50ではない。むしろそうでないことの方が多い。状況によっては意図的に大きく崩すことも少なくない。
では仙台は、30日のJリーグヤマザキナビスコカップ準々決勝第2戦で、どのようなバランスを基本方針とするのか。そこに23日の第1戦の反省と、第2戦の勝利のカギがある。
「前の試合のテーマは『守りながら攻める』でした」と、手倉森監督はアウェイでの第1戦における方針を28日に報道陣に明かした。最低でも引き分けで終えるつもりで川崎Fに挑み、その結果、敵地ながら前半はボールを支配する時間も長かった。しかし自陣からの攻撃の組み立てをカットされ、カウンターから先制点を許した。そしてそのこと以上に指揮官が反省すべき点として挙げたのが、「思うようにシュートまでいけない戦い方を選びすぎてしまった」ということ。そのために、第2戦の仙台は、勝利が義務づけられるかたちとなった。それにはゴールが必要だ。手倉森監督はこのホームでは「もちろん攻めに出ます。しかし、カウンターが得意な相手に対するリスクマネジメントの選択も必要。今度は『攻めながら守る』、でいきます」という考えだ。
ユアテックスタジアム仙台に乗りこんでくる川崎Fは、第1戦で仙台を2-1で破った。小林悠は試合後に、「次も勝てばアウェイゴールも関係なく準決勝に進めます。まずは勝ちをねらいます」と、引き分け以上で勝ち抜けが決まるこの一戦に向けて気を引き締めた。彼が言及したアウェイゴールとは、この場合は第1戦の終了間際に松下年宏が決めた仙台の1点のこと。川崎Fは、勝ち抜けの条件を考える際にこの1点がのしかからないような結果に持ちこむことが必要になる。
この1失点を喫したのは、「失点を怖がったのか消極的になってしまった」(風間八宏監督)、「裏へ蹴ってしまうだけになってしまった」(大久保嘉人)とそれぞれが試合後に反省した、川崎Fの2点リード時の試合運びにある。第2戦は「もっと足下でしっかりつなぐことが自分達のサッカーには必要」と大久保が続けたように、現在の川崎Fが志向する、ボール保持を大事にするスタイルで主導権を握ることが求められる。第2戦では中村憲剛が日本代表から戻る。パスワークの中心となりうる彼をうまく組みこんだ攻撃の精度が、川崎Fの結果を左右するともいえる。
この川崎Fに対して「(中村)憲剛選手が入ることで、今季のこれまでの対戦よりも細かいパスが増えるかもしれない。そうなったら逆に、こちらが確実にカットしてカウンターをしかけるチャンスにしたい」と展望するのは鎌田次郎。仙台は今季の川崎F戦ではパスをカットされてカウンターを浴びた立場だったが、相手がボールを持ったときにはその「お返し」をするチャンスでもある。互いにボールを持ったとき、持たせてカウンターを狙うとき、それぞれの駆け引きがこの試合では注目点となる。仙台にとっては、負傷から角田誠が復帰することが、この駆け引きの中での攻守のバランス制御に影響を与えそうだ。
そして仙台は第1戦で退場処分を受けた林卓人に代わってゴールマウスを守る桜井繁を中心に、攻撃時のリスク管理に気を配りたい。桜井は第1戦では途中出場で、10人で攻めに出た仙台の守備を支えた。今度は「基本的にやることはいつもと変わりないですが、相手カウンターのケアについてはいつも以上に声を出したりジェスチャーをしたりして、仲間との連係に気を配りたい」と第2戦に挑む。
「攻めながら守る」バランスのもと川崎Fを迎え撃つ仙台は、クラブ史上初の準決勝進出を逆転で勝ち取れるか。
以上
2013.06.29 Reported by 板垣晴朗
J’s GOALニュース
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