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【J2:第20節 熊本 vs 群馬】レポート:一時は逆転を許すも、粘りを見せた群馬が平繁の2ゴールで逆転し9試合ぶりの勝利。失点が続く熊本は3連敗で17位に後退。(13.06.23)

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最終的な数字として表示されるスコアは90分を戦った結果である。熊本は先制を許したあと前半のうちに逆転に成功したものの、再びひっくり返されて2−3で群馬に敗れ3連敗。順位は17位に下がり、下との勝点差も詰まる非常に厳しい状態に陥った。特に15節以降の6試合で20失点と、守備で大きな問題に直面している。試合を振り返れば、流れそのものは熊本と群馬の双方に傾いた時間帯があったが、90分を通してゲームをコントロールできていたのは、勝った群馬の方である。

9分、小林竜樹のフリーキックに有薗真吾が頭で合わせて先制した群馬だが、秋葉忠宏監督が「前半は寝ているようなゲーム」と述べた通り、その後は熊本にペースを譲る。早い時間にリードしたことで意図的に攻めさせているようにも見えたが、ボールを奪う位置は総じて低く、奪ってからの攻撃への切り替えでは小林や保崎淳が勢いのある飛び出しを見せていたとは言え、平繁龍一とエデルにはいい形でボールが収まらず、決定的な場面は作れていない。

一方、またも早い時間に失点した熊本は、前節や前々節のように慌てて前にかかることはなく、立ち上がりから相手の状況を見た効果的なフィードを送って高い位置で起点を作り、6分には右の筑城和人から、25分には左の片山奨典からと、両サイドからのクロスでチャンスを迎えている。高橋祐太郎の同点ゴールはその直前のプレー、片山からのクロスが流れたのを仲間隼斗が追って残したことで得たフリーキックから生まれたもの。さらに28分、藤本主税からの浮き球に抜け出したファビオが群馬GK北一真と交錯して倒れ、こぼれ球を拾った齊藤和樹が決めて逆転。ファビオの倒れ方がおかしかったため、笛が吹かれたり誰かが流れを切っていたりすれば生まれなかった可能性もあるが、「戦うプレーをしてくれた」(齊藤)というファビオの突進を無駄にしまいとプレーを続けた判断が、群馬守備陣の隙をついた恰好となった。

だが後半を迎えると、「勇気を持ってラインを上げ、走力が生きるサッカーに戻すこと、そしてファイトすること」という秋葉監督の指示を受けた群馬が眠りから覚め、切り替えは前半以上に早くなり、飛び出しもより鋭さを増した。まずは55分、自陣でボールを受けた平繁がドリブルで運んで右から並走してきた青木孝太へいったん預け、リターンを受けると迷わず右足を振り抜き同点に。熊本のDF陣が青木に引っ張られて空いたわずかな隙間を見逃さなかった。平繁はさらに77分、保崎からのパスをフリックで流し、加藤弘堅の落としを持ち込んでボックス外から再び右足で狙い澄ましたシュート。これが右隅に決まって遂に群馬が勝ち越した。

熊本の吉田靖監督は追いつかれた直後にファビオから堀米勇輝、さらに逆転される直前に原田拓から養父雄仁、逆転された後には仲間から北嶋秀朗と、立て続けに攻撃的なカードをきり、終盤には高橋を前線に上げてパワープレーにも出たが、精度も欠いて、整った群馬の守備ラインを崩すにはいたらず、得点に結べないまま時間が経過。前節同様に「5枚にして逃げ切ることも考えた」と秋葉監督は話したが、結局はアグレッシブな姿勢を貫いた群馬が9試合ぶりの勝利。順位をひとつ上げて最下位こそ脱したが、秋葉監督が話している通り群馬にとってはまだ安心できる状況にはない。それでも、本来の形を取り戻して逆転で勝点3を手にしたことは小さくない自信となるだろう。

対照的に熊本は、吉田監督が会見の冒頭でも触れた通り、降格圏がちらつく「非常に厳しい状況」になったと言わざるを得ない。勝った群馬の戦いぶりにその差を求めれば、運動量や球際の強さ、切り替えの早さ、そしてゴールへ向かう縦への推進力、さらには戦う気持ちやボールへの執着心、ということにもなろう。当然、失点が続いている守備では、基本的な対応のまずさや個々の能力差にも起因している部分もある。しかし最も大きな違いは、自分たちがやろうとするサッカーを表現しようという意思、だったのではないか。

群馬の秋葉監督は「ボールを奪ったらしっかりと、まずはうちらしくカウンターアタックにいくこと、それができなかった時にはじめてボールを動かす。その順番を間違えるな」と指示したようだが、「裏へ蹴ることが多くなってしまって、サッカーをした感じは僕の中ではあまりない」と藤本が言うように、熊本が目指すのは本来これとは逆である。与えた決定機の全てを得点にさせてしまった守備の改善も大きな課題だが、ボールを動かすためのポジショニングやサポートの連動、バイタルまで運んだ後の工夫や精度などの問題で、攻撃を終えない状態でボールロストしてしまう場面の多さが、守備のバランスの悪さと無関係ではない。

2位の神戸を迎える次節でリーグ戦は折り返す。ひとつひとつの螺子が弛んだ現状で真っ向からぶつかれば、それこそ砕け散ってしまう危険性もゼロではない。今こそ原点に返って、謙虚に次の試合に備えなくてはならない。敵将の言葉を借りれば、まさしく「下を向いている暇はない」のだ。

以上

2013.06.23 Reported by 井芹貴志
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