8節からの6連敗など、開幕から苦しい戦いが続いていた北九州に、ついに待望の瞬間が訪れた。ホームでの大量7得点で熊本を粉砕した前節に続き、アウェイで鳥取から逆転勝利を収め、今季初の連勝。その鳥取と入れ替わって18位に浮上した。

前半、押し気味に進めたのは鳥取で、ディフェンスラインの背後を突いてくる北九州の攻めに苦しめられながらも、相手守備網の隙間にパスを通し、ゴールに迫っていった。19分には尾崎瑛一郎から久保裕一、さらに住田貴彦とつないで右サイドから中央にボールを運ぶと、最後は住田のパスから永里源気が、右足でカーブをかけて右スミに蹴り込み、均衡を破った。
北九州も30分、鳥取のボランチの背後を突いてチャンスを作り、宮本亨のパスを池元友樹が落とし、フリーとなった森村昂太が、左足で約25メートルの鮮やかなミドルシュートを突き刺して同点とした。しかし鳥取は前半のアディショナルタイムに、右ストッパーの林堂眞も敵陣深くまで侵入して右サイドでパスをつなぎ、ペナルティエリア内で尾崎からのパスを受けた森英次郎が中央へ折り返すと、久保が左足で合わせ、良い時間帯に勝ち越して後半へと折り返した。

森村が「2失点目の時間帯は最悪だった」と語り、柱谷幸一監督も「あのまま1―1でいきたかったんですけど、選手もショックがあった」と振り返ったように、北九州にとっては嫌な流れだった。しかし、森村が「これまでだったらガクッとなるところだけど、今のチームはネガティブじゃないし、後半も点は取れると思っていた。逆転するぞ、という意気込みがみんなにあった」とも語ったように、北九州は後半に立て直し、逆転へとつなげていった。

逆転の2ゴールを生んだのは、いずれも左サイドからのＦＫだった。まず49分、小手川宏基が中央の選手に合わせるボールを送ると、ニアサイドで鳥取の住田が空振りしてクリアできず、そのままファーサイドのネットを揺らして同点（記録は小手川のゴール）。66分にも同じような位置からのＦＫを小手川が中央に送ると、下がりながら守った鳥取の久保と交錯しかけた鳥取ＧＫ杉本拓也がキャッチし切れず、こぼれ球をアン ヨンギュがヘッドで押し込んで逆転した。

柱谷監督は「コテ（小手川）が非常に良いボールを入れてくれて、こういう難しい試合で、セットプレーで点を取れるのは大きいと、今日あらためて感じた」と振り返ったが、ミスで崩れた鳥取から見れば、非常にもったいないプレー。良い時間帯で奪ったリードを、警戒が必要な時間帯の失点でフイにしたのをきっかけに、勝利への流れを手放した。

その後は北九州がカウンターで追加点を狙う一方で、鳥取も反撃に転じる。足がつった横竹翔、鮫島晃太の両ボランチを吉野智行と実信憲明に代え、前線では住田に代えて岡本達也を投入。前へ前へとボールを運んでゴールに迫ったが、84分の岡本の右足ボレーと、88分の尾崎のヘッドを、いずれも北九州ＧＫ武田博行がファインセーブ。90分に鳥取の林堂が2回目の警告を受けて退場となった後も、アディショナルタイムに入ってからプレーの中断があった影響で、通算97分を過ぎても試合は続いたが、そのまま北九州が3―2で逃げ切った。

鳥取は、いずれも順位が下のチームとの直接対決に敗れて3連敗。ホームでは2試合連続の逆転負けで、20位に後退した。4節から18節まで2得点以上を奪えなかった苦しい状況から一転、前節は3得点、今節も2得点を奪いながらも、守備が乱れて勝点ゼロに終わっている。
「一人ひとりが責任を持って自分のプレーをやらないと、何点取っても勝てない」と久保が厳しい表情で語ったように、永里が3試合連続ゴールを決めても勝利をつかめず、攻守がかみ合っていない。小村徳男監督は「後半になると徐々に、チームとして、どこかメンタルの部分なのか、弱い部分が出てしまっているという印象」と振り返ったが、2試合続けて後半に逆転され、精神的にも尾を引くかもしれない連敗となった。

逆に北九州は、二度にわたって突き放される苦境をはねのけての勝利が、確かな自信につながるだろう。次節も順位が近い最下位の岐阜とのアウェイゲーム。「順位が近い者同士の直接対決。勝てば引き離せるし、順位も上を狙えるようになる」と前田和哉が語ったように、中位浮上を狙う次節以降に向けて、大いにはずみのつく勝点3となった。

以上

2013.06.23 Reported by 石倉利英