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【J2日記】岐阜:美しき景色(13.06.19)

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「俺、最高やな(笑)」。感動したことを伝えると、美尾敦からそう返ってきた――。

壮絶な打ち合いとなった前節・鳥取戦。4−3の大逆転で岐阜が勝利を収めると、なかなか興奮は冷めなかった。スタジアムへ出向けなかったことは心残りだが、普段、取材させて頂いているクラブが試合に勝つというのは、やはりうれしいものだ。

けれど、それ以上に目を奪われたのは試合後だった。テレビ画面の向こう側に広がっていたその光景は何よりも印象的で、同時に、スタジアムに出向けなかったことを最も後悔した瞬間でもある。そんな画を作り出したのは、鳥取サポーターだった。

「ミ・オ・アツシ!」

チームが負けてもなお、相手チームの10番を大きなコールで呼んだのだ。すでにスタジアムの中へ姿を消していた美尾も、それに気付くやいなや踵を返す。後半アディショナルタイムに交代するまで走り抜いたその足で鳥取サポーターの下へ駆け寄ると、何度も何度も、そして丁寧に、拍手と挨拶を繰り返した。最後には涙を流していたようにも映っていた。

「あれは泣くな(笑)。泣いたらダメだと思っていたけど、俺にもいろんな思いがあったし」

鳥取は、昨季まで袖を通したチームだった。JFL、J2昇格、残留争い、キャプテン就任。とにかく、いろいろなことを経験させてもらった自分を、温かく、熱く支えてもらった。美尾の口からは「俺は常々サポーターに『一緒に戦ってくれ』と言うんだけど、あれを見て『本当に一緒に戦ってくれていたんだな』と思ったら、(涙を)抑えられなかった」と感謝の言葉があふれてやまない。

しかし、そんなサポーターに、それだけの感謝と思いを告げる時間がなかった。昨シーズン、鳥取を残留に導いた功労者を待っていたのは、皮肉にも契約非更新という現実。後ろ髪を引かれる思いで「3年間、本当にお世話になった」(美尾)鳥取を離れ、岐阜に身を移したのだった。

「一緒に戦ってきた仲間に挨拶する機会がないまま、移籍という形になっちゃったから。しかも試合はウチ(岐阜)が勝っているのに、ましてや俺ぐらいの選手をホームで呼んでくれた。サッカー選手で良かったなと思ったし、うれしかった。本当に感謝しています」

美尾の言う“いろんな思い”とは、それだけに留まらない。鳥取への感謝を紡ぎつつも、「いまは岐阜の選手だから」と何度も前置きしていたのは、プロ選手としての自覚を忘れていないからだ。自分に新しくサッカーができる場を与えてくれた岐阜にも感謝している。

どこへ行っても、誰よりもチームを思い、必死の形相で走り抜く。第18節・長崎戦を控えた4日には、練習を終えても、ただ一人帰ろうとせず、結果を出そうとコーチと意見をぶつけ合っていたほどだ。そして結果は2連勝、最下位脱出である。自身にゴールやアシストという数字は付かなかったが、その責任感にあふれたシルエットが、すでに岐阜サポーターの目にもしっかりと映っていることは、“あの光景の続き”を見れば分かる。

鳥取サポーターに挨拶を済ませた美尾が、すぐさま向かったのは岐阜のスタンド。直後、岐阜サポーターからも、大きな『美尾コール』が沸き起こったのである。感動したことを伝えると、美尾からこう返ってきた。

「俺、最高やな(笑)。嘘うそ、いろいろ良かった。ホント良かったよ。試合はJ2の42分の1かもしれないけど、鳥取は思い入れのあるチームだし、本当にお世話になったチームだったから。勝てたことも良かったし、試合後に鳥取のサポーターが声をかけてくれたのも、本当にうれしかった。本当、サッカー選手冥利に尽きるよ」

初めての鳥取戦。そこには一人のサッカー選手を巡る、美しい景色が広がっていた。

以上

2013.06.19 Reported by 村本 裕太
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