富山が8試合ぶりの勝利をつかみ、連敗を3で止めた。徳島の特長を把握したうえでの固い守りが光った。「冷静にやるべきことを遂行した」と安間貴義監督は選手たちのプレーぶりを表現する。
チャンスを多くつくるがピンチも多いという今季これまでのハラハラドキドキするゲームと様相は異なる。相手にボールを保持されて自陣での守りが長くなったが隙なく対応し、与えた決定機は少なく被シュートも自軍と同数の8本に抑えた。
窮地では真価が問われる。未勝利が続く苦しい状況下、気負い過ぎたり虚勢を張ったりするのではなく情熱を内に秘めつつもしたたかに結果をもぎとった今回の戦いぶりは評価できる。試合運びの柔軟性、対戦相手に応じた戦術の幅といった昨季にはなかった種類の強さを示し、今後のリーグ戦への期待を再び高める勝利だった。
富山はMFソ ヨンドクの出場停止、DFラインのメンバー入れ替えに合わせて今季初めて[3-4-2-1]のフォーメーションを採用。ボランチを大西容平と舩津徹也の2人に増やして中央の守りを厚くした。現在の戦力と状態を踏まえて徳島の実力に一目置き、ボールを回されても危ない場所にはパスを入れさせない作戦だった。
相手の攻撃の始点であるMF濱田武、DF斉藤大介には前線の3人が代わる代わるプレッシャーをかけ続ける。ボランチの2人は抜群の運動量を発揮して要所を抑えてピンチの芽を摘む。後方からの走り込みには徹底マークで対抗した。
連敗中の富山がリズムをつかむうえで、開始4分に挙げたFW苔口卓也の先制点は大きかった。右サイドでスローインを受けた大西が入れたアーリークロスを、DFの背後を突く動き出しからヘディングで決めた。
一方の徳島にとっては痛すぎる失点。2ラインの守備態勢はできていたにもかかわらず、簡単にクロスを入れられてゴールを割らせてしまった。「開始3分ほどで失点してしまうのはゲームに軽く入っているからだと思う。球際の厳しさがチームに備わったり、個人のものになったりしていかないと勝つことはできない」と小林伸二監督。第11節以来4度にわたり2連勝を目指していずれも果たせていないのはこのあたりに原因があるのだろう。
徳島は前半8分にDF千代反田充のフィードでFWキム ジョンミンがGKと1対1になるが決め切れない。同11分にも濱田の縦パスからFW津田知宏が抜け出しにかかるなど、富山が警戒していたパターンで好機をつくる。同34分には左サイドを連係によって突破し、クロスを津田が狙うがシュートはゴール上に外れた。後半最初からは富山県出身のFW大崎淳矢が起用され、同15分にペナルティーエリア内をドリブルで仕掛けて見せ場をつくった。前半はやや単調だったDF裏を狙う攻撃を修正し、中盤でボールを受けるプレーと後方から走り込む動きを増やして勢いは強まった。しかし人数をかけて守る富山から決定機をつくることができない。逆に同32分にカウンターから追加点を許し、同35分にPKから1点を返すのがやっとだった。
富山の追加点は途中出場のFW西川優大が決めた。MF朝日大輔からのクロスを受けると落ち着いてDFを交わして左足で蹴り込んだ。サイドで縦に仕掛けて相手DFラインを下げ、空いたスペースを使って得点を狙うのはチームとして練習してきたかたち。今季は開幕からずっと決定力アップを目指してシュート、ラストパスの練習を続けている。地道な努力が実を結んだことからも今回の未勝利脱出は意義深いといえよう。2010年から続いた対徳島の連敗もついに6で止まった。
以上
2013.06.02 Reported by 赤壁逸朗
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