「サッカーは個のスポーツではなくチームスポーツ。代表選手、二人の抜けた穴は確かに大きいけれど、それをチームとしてどう補えるか、プラスアルファの力を生み出せるかに期待している」
G大阪の長谷川健太監督が試合前に話していた言葉に照らし合わせて考えるなら、この日の栃木戦はG大阪にとって多くのプラスアルファを見出した試合になったと言えるだろう。
DF今野泰幸、MF遠藤保仁の大黒柱を欠く中で、この日のスターティングメンバーは、DFラインが右から加地亮、西野貴治、丹羽大輝、藤春廣輝。ボランチには内田達也とともに、今季初先発の岡崎建哉が名を連ね、前線は右MFに家長昭博、左MFに二川孝広。2トップはレアンドロと倉田秋が構成しキックオフを迎える。
その立ち上がり、G大阪は落ち着いた入りをみせる。選手同士の距離感もよく、全体をコンパクトに保ちつつ、ラインコントロールを巧みに行いながら、攻守に連動して試合を進めていく。
加えて、その戦いを後押ししたのが、10分、23分、44分と効果的に奪った得点だ。まず最初に、栃木のGK榎本達也からDFラインに甘く入ったパスを内田が奪い、浮き球のパスを前線へ。あわせて抜け出したレアンドロが右足でゴールネットを揺らし、試合を落ち着かせるための貴重な先制点を手にすると、23分にも、藤春が相手DFと競りながらも自慢の俊足を活かして前線へ抜け出し、今季初ゴールを決める。更にぐっと勝利を引き寄せる3点目は再びレアンドロ。相手選手のトラップミスを見逃さずにボールを奪った岡崎がドリブルで前線へ。右から倉田が、左からレアンドロがあがってくるのを冷静に見極め、左のレアンドロにパス。右足でコースを捉えたボールがゴールネットを揺らし、3-0と栃木を突き放す。
これに対して栃木は前節の横浜FC戦で負傷し、左足の腓骨骨折と足首の三角靭帯弾列と診断された攻守の要、ボランチのパウリーニョを今季初めて欠いた中での戦いに。それでも、試合の入りは決して悪くはなかったが、10分にミスからG大阪に許した先制点がチームにブレーキをかける結果となる。
それは松田浩監督の試合後のコメントを聞いても然り。「本当に自信があるチームならあの時間の1失点で浮き足立つことはないはずだが、結果的に、あれを機に大人と子供のサッカーになってしまった(松田監督)」と話したように、不容易な失点に動揺が走ったのか、以降は攻撃では消極的なパスが目立ち、かつ、ボールを奪ったとしても、全くと言っていいほど本来の連携は築けず、常に後手を踏んだ展開になってしまう。加えて、自分たちのミスも絡んで前半だけで3点も失うとなれば、反省ばかりが残る前半だったと振り返るのが妥当だろう。
それでも、後半はG大阪の運動量がやや低下したこともあり、かつ、ビハインドを負った栃木の選手が少しずつ思い切りの良さを示すようになったことで、栃木がやや盛り返しはしたものの、3点差をひっくり返すほどの勢いはなく。
かつ、G大阪も攻撃では前半ほどの勢いは示せなかったものの、守っては、丹羽を中心に全体が意思統一の感じられる展開に持ち込み、3-0のまま試合終了。5試合ぶりの完封勝利を挙げ、首位の座を守った。
この一戦、両者ともに主力を欠いた中で、ある意味、チーム力の真価を問われる一戦でもあったが、G大阪は若い戦力が躍動し、かつ個のパフォーマンスにもそれぞれ手応えを感じられる90分になったのに対し、栃木は主力不在を嘆かざるを得ない結果に。G大阪としてはこうした内容、結果をどれだけ続けられるか、栃木としては、パウリーニョの不在をいかに組織として補っていくかが今後の課題になっていきそうだ。
以上
2013.06.02 Reported by 高村美砂
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