J2・9年目の群馬と今季J2初参戦の長崎との初対戦だ。最近10試合1勝2分7敗の21位群馬と、6勝3分1敗の3位長崎。最近10試合の結果をみても両チームの違いは明らかだ。ただし、これを単なる勢いの差で片付けてしまうことはできない。リーグの3分の1が経過した今、群馬と長崎との勝点差は18。長崎の強さは本物。群馬は、長崎を新規チームとして捉えれば他クラブ同様に痛い目に会う。群馬は、長崎を3位チームとして捉えて迎え撃たなければならない。
秋葉忠宏監督は「長崎は勢いに乗っているが、選手一人ひとりのクオリティをみれば、うちも決して劣っていない」と分析する。しかし、順位は群馬が降格プレーオフ圏内の21位となっているのに対して、長崎は昇格プレーオフ圏内の3位。データを比較すると、群馬の総失点25(リーグワースト2位)に対して、長崎は14点(リーグ3位タイ)。群馬の被シュート総数186本(リーグワースト2位)に対して、長崎は136本(リーグ2位)。勝負を決めるのは攻守のゴール前。群馬はペナ内で気持ちを見せなければいけない。
前節ホーム北九州戦をスコアレスドローで終えた群馬は、ホーム連戦となる今ゲームでの勝利が要求される。崖っぷちに立つチームには下位脱出へ向けての危機感が広がる。北九州戦でのシュートミスを反省し前髪を切った遠藤敬佑は「長崎戦は勝つことしか考えていない。チームが勝つために、自分に何ができるかを突き詰めていく」と、今季初ゴールへの決意を固めた。闘志を燃やすのは遠藤だけではなくチーム全員。群馬はありったけの気迫を長崎へぶつける覚悟だ。
負けられない理由もある。長崎の左サイドで異彩を放つ山田晃平は、10、11年の2年間、群馬に在籍した。キレのあるドリブルと、キレのないトークでサポーターのハートをがっちりとつかみ、異色キャラとしての地位を地味に確立した。だが結果を残せずに2年で戦力外となった。どん底を経験し涙ながらに群馬を去ったさすらいのドリブラーは翌年、強運ぶりを発揮しMLS(米国)コロラドへ入団。シーズン途中にJFL長崎へ加入した。そして今節、好調長崎を支えるキーマンとして正田スタへ戻ってくる。群馬は、山田に一度のドリブルも許すわけにはいかない。
快進撃を続ける長崎だが、山田のように群馬でどん底を味わい、長崎へたどり着いた選手が多い。藤井大輔は07〜09年まで群馬に在籍、杉山琢也はザスパチャレンジャーズチーム出身、さらに岩間雄大は07〜10年までJFLアルテ高崎でプレーした経歴を持つ。そんな選手たちのハングリー精神をエネルギーに替えて、チームは昨季J2へ昇格。高木琢也監督を迎えた今季はJ2で大暴れしている。
J2・9年目の今季、低迷が続く群馬はかつて備えていた雑草魂をどこかに置き忘れてきてしまった。今季、大幅な若返りを図ったチームだが、本当の意味でどん底を味わった選手は少ない。小林は「過去のチームと比較してテクニックは上だが、闘うという部分では足りない」と指摘する。リーグ経過とともに緊迫感が増す群馬は意識改革によって闘争心を注入している。闘争心だけで勝てる世界ではないが、それをベースにしなければ勝点は拾えない。シーズン序盤で大きなハンディを背負った群馬が、巻き返しを図るには上位チーム以上に走り、闘い抜くしか道はない。長崎戦は、置き忘れた魂を取り戻す戦いだ。
以上
2013.05.31 Reported by 伊藤寿学
J’s GOALニュース
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