アグレッシブさを看板に掲げる富山と福岡が持ち味を出し合い、期待通りの熱戦になった。前からボールを奪いにいき、縦へ縦へと果敢に仕掛ける。球際で激しく戦い、素早く攻守を切り替えてハードワークした。前半から目まぐるしく両者にチャンスとピンチが訪れて観客を沸かせた。
先制したのは福岡。前半12分、FW石津大介がドリブルで仕掛けて鋭いミドルシュートを放って右CKを得た。キッカーDF尾亦弘友希が左足から曲がり落ちるボールをニアサイドにコントロールし、飛び込んだ石津が頭で決めた。石津は「ボールがニア（のDF）を越えた瞬間に絶対に入ると思った。触るだけだった」と振り返る。昨夏にＪ初得点を挙げた富山戦で再び輝いた。
しかし直後の14分、富山が電光石火の攻めで同点に追い付いた。キックオフからの流れで相手クリアボールをMF大西容平がヘディングでMF大山俊輔につなぐ。呼応して走り込んだFW苔口卓也がスルーパスを受けて勢いのまま蹴り込んだ。

その後は富山ペースで進んだ。少ないタッチ数でボールを動かして福岡のプレスを交わし、縦パスを送って好機をつくった。25分には右サイドMF國吉貴博のクロスが苔口にぴたりと合って決定機を迎えたが福岡GK水谷雄一に阻まれた。前半アディショナルタイムには相手CKから切り返し、３、４人が弾かれるように敵陣に走り込んで見せ場をつくった。カターレらしさを存分に発揮した。
富山は後半もゴールまであと１歩のところまで何度も迫った。同６分に國吉のクロスがゴール前を横切り、同25分にはCKにDF足助翔が飛び込んだ。しかし、勝ち越し点は福岡に生まれた。同28分、途中出場のMF船山祐二がゴール正面約25ｍのFKを左足で決めた。富山GK守田達弥が反応していたが指先をかすめゴール左上に突き刺さった。新加入の船山にとってＪ２で８点目となる今季初得点。「コースとスピードが良かった。FK、CKは練習さえすれば確率は高くなる。監督からもいつも練習しろと言われている。練習はうそをつかないことを示せた」と話した。

追う富山は同38分、苔口が倒されて得た右サイドからのFKで決定機をつくった。DF舩津徹也がニアに走り込んでヘディングで合わせ、GKが弾いたボールに足助が詰めた。だがシュートは枠を捉え切れずにサイドネットへ。後半だけで10本のシュートを放ったが２点目を奪えなかった。富山は今季初の連敗で６戦未勝利となった。勝利を目指してサッカーの質を高めていくという王道に照らして、得点チャンスが増えているという現状はプロセスの正しさを示している。しかし勝利を手にすることはできていない。MFソ・ヨンドクは「経験が足りないと思った。（得点を決める・失点しないといった）雰囲気をつくり出すだすことができていない。しかし、チームも自分もそういう段階からはもう脱しなければいけないと思う」と話した。手ごたえを自信に変え、成長過程を早めるためにも次の１勝がほしい。

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2013.05.20 Reported by 赤壁逸朗