「メンバー表を見たら、(鳥取の先発メンバーのフィールドプレーヤーに)身長180センチ台の選手が全くいなかったので、セットプレーはカギになってくると思っていました」
身長186センチの山形・林陵平が試合後に振り返った通り、高さで大きく上回る山形が、空中戦で鳥取を圧倒。CKから4得点を挙げ、クラブのJ2での最多得点記録を更新する6得点のゴールラッシュで圧勝した。
山形は風上に立った前半、キックオフ直後から鳥取を自陣に押し込み、積極的にシュートを放って連敗脱出への意欲を見せる。「アウェイでずっと勝っていなかったので、自分たちから前に行くサッカーをしようと、立ち上がりから良い感じで入ることができた」(林)状況で迎えた12分、伊東俊の左CKに、中央の西河翔吾がヘッドで合わせ、ネットを揺らした。
このとき、マークしていた鳥取の森英次郎は横でジャンプしていたものの、西河は大きく上をいく打点のヘッドで捉えた。182センチの西河に対し、森は173センチで、高さのミスマッチが起こっており、体をぶつけるなどして自由にプレーさせない守りができなかった森のプレーを差し引いても、山形が自分たちの武器を生かして奪った先制点だった。
さらに山形は22分、今度は右CKを中村太亮が蹴り、ファーサイドに流れた林が合わせて2点目。高さを生かした形ではなく、ファーサイドに流れて左足で合わせた形だったが、今度は鳥取の横竹翔が林のマークを外していた。もともと鳥取はセットプレーの守備が乱れることが多く、そこがストロングポイントの一つである山形との対戦で、ウイークポイントを露呈する序盤となってしまった。
前半、風下だった鳥取は、強い風と雨に悩まされて前線へのロングボールが思うように飛ばず、山形の早いプレッシャーもあって自陣から抜け出せない状況が続いた。クリアのようなロングパスでも、いつもならポストワークが持ち味の久保裕一が何とか収めることで、攻撃の形ができることもあるが、久保はこの日、警告累積で出場停止。代わりに先発した岡本達也、2トップを組んだ永里源気が何とか状況を打開しようとするものの、山形の厳しいマークをかいくぐることができない状況が続く。
それでも2失点した後、ようやく落ち着きを取り戻した頃に、鳥取にもチャンスがめぐってきた。27分、田中雄大のスルーパスを、コースに入っていた山形のイ ジュヨンが空振りして、こぼれ球が永里の足元へ。しかし、右45度から狙ったシュートは左ポストに当たって決まらなかった。31分には永里が岡本とのパス交換で左サイドを崩し、今度は左サイドから狙ったが、山形GK常澤聡がセーブし、廣田隆治もこぼれ球に詰めることができない。結果的に、鳥取が流れを変えるチャンスがあったとすれば、この時間帯だったが、ここで得点できなかったことで、後半は完全に山形の勢いに飲み込まれていった。
後半の立ち上がりは、風上に立った鳥取が押し気味に進めていたが、ゴールを奪えないうちに迎えた58分、逆に山形が3点目を奪う。山田拓巳がスローインを投げ入れ、伊東からの折り返しを受けて右サイドを突破。最後はニアサイドに入り込んだ林が巧みに合わせてネットを揺らした。
たたみかける山形は60分、中村の左CKを林がヘッドで合わせ、ゴール前で鳥取守備陣に当たってはね返ったところを、山崎雅人が押し込んで4点目。さらに66分、右サイドを崩して山田がアーリークロスを送ると、交代出場したばかりの萬代宏樹が中央で待ち構えてヘッドで合わせ、ニアサイドを破って5点目とした。
完全に勝負は決したものの、ホームで1点でも返したい鳥取は82分、交代出場の岡野雅行がディフェンスラインの背後に抜け出し、右サイドから右足でファーサイドを狙ったが、GK常澤が防ぎ、一矢を報いることもできない。
逆に山形はアディショナルタイムの90+1分、中村の右CKを、西河が再びマークする森の上からヘッドで合わせて6点目。ゴールラッシュの口火を切ったDFが、この日2点目で最後を締めくくった。
鳥取は山形の持ち味を封じることができず、クラブワースト記録の7失点に迫り、最大得点差タイ記録となる6点差での完敗。セットプレーの守りだけでなく、事前に警戒していたボランチへの守備も機能せず、逆に厳しいプレッシャーを受けて何度もボールを奪われ、「自分たちがやりたかったことをやられた」(田中)。広島からの期限付き移籍で加入したばかりの鮫島晃太が、前半途中からの交代出場でデビューし、まずまずのプレーを見せたことは、わずかな光明とはいえ、4節以来の未勝利は12試合に伸びた。雨に濡れ、ボールスピードが速いピッチでの細かいミスも目立つなど、多くの解決すべき課題が残されていることを、あらためて痛感させられる大敗となった。
一方の山形は、奥野僚右監督が「ベンチから見ていても興奮する、素晴らしい試合にできてよかった」と振り返るほどの見事な勝利。これまでセンターバックで先発していた堀之内聖を、ロメロ フランクとのコンビでボランチの一角で起用。他にも「コンディションのことや、痛みのある選手が多かったので、そういう選択が一番、今のチームにベストなんじゃないかということで」(奥野監督)メンバーを大幅に入れ替えたことが吉と出て、代わってセンターバックに入った西河の2得点など、クラブ史に残る大勝を収めた。今季は開幕から連敗と連勝(無敗)を繰り返し、なかなか勢いに乗れなかったが、上位追撃に向けて、これ以上ない勢いをもたらしそうな、まさに会心の勝利となった。
以上
2013.05.20 Reported by 石倉利英
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