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【J1:第12節 大宮 vs 湘南】レポート:正念場の大宮、アグレッシブな湘南に苦しみながらも首座を守る(13.05.19)

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試合後、湘南・曹貴裁監督は、「結果は残念でしたが、死力を尽くし、堂々とプレーした選手たちに『よくやったよ』と言ってあげたい」と、爽やかに語った。一方、大宮・ベルデニック監督は「内容は良くなかったが、闘争心、気持ちで上回って勝ったことは大きい」と、こちらも選手たちを讃えた。死闘、というと表現がややオーバーだが、攻守が目まぐるしく入れ替わる好ゲームは、ホーム大宮が苦しみながらも勝点3を手にした。

いろいろと意外なことがあった。湘南は下村東美が今季初先発を果たしたが、その位置は3バックの中央。本来3バックのレギュラーである島村毅は、ベンチにもその姿はなかった(その意図について?監督は「戦術的なことは詳しく言えない」としている)。そしてゲームが始まってみると、大宮が最も警戒していた前線からのハードプレスを、湘南はそれほど仕掛けてこなかった。センターバックまでは深く追わず、ボランチに入ったら厳しくチェックし、「サイドに入れたところをハメようとしてきた」(下平匠)。
大宮の武器であるボランチから2トップに入れる縦パスを封じ、湘南のストロングポイントであるサイドの高い位置で数的優位を作って奪い、一気に攻撃を仕掛ける意図はある程度成功したが、逆に湘南も、それで大宮がシンプルにロングボールを蹴ってきたことに戸惑っているように見えた。湘南の最終ラインを押し下げ、スペースを作ることに成功した大宮が、序盤は主導権を握る。15分に左サイドを下平とのワンツーで抜け出したチョ ヨンチョルがクロスを上げると、ファーポストで渡邉大剛が折り返し、ズラタンがヒールで流し込む。先制した大宮はさらにその2分後、渡邉のスルーパスからズラタンが強烈なシュートを放つ。惜しくもバーに弾かれたが、湘南は完全に浮き足立っているように見え、その瞬間は今年2回行われた対戦でのように、大宮の大勝も予感された。

しかし、そのバーに弾かれたボールを拾った湘南が電光石火のカウンターでゴールに迫り、コーナーキックを得ると、大野和成が頭で合わせて同点に追いつく。すると湘南は、スイッチが入ったかのようにアグレッシブさを取り戻した。切り替えの速さのギアが一段上がり、球際の激しさでも上回った。大宮にセカンドボールを拾わせず、激しいプレスでミスを誘発し、鋭いカウンターで一気に大宮ゴールへ迫る。ベルデニック監督がコーチングゾーンから「切り替え! 切り替え!」と必死に指示を送る。その光景は後半に入っても繰り返された。

しかし湘南は、ペナルティエリアの前まで、あるいは横までは一気呵成に侵入するものの、クロス、ラストパスの精度が低く、決定的な場面はほとんど作れなかった。そしてそのまま、あれだけアグレッシブにプレーし続ければ無理もないことだが、やがて脚が止まり始めた。湘南が落ちてきたことで、大宮もボランチが前を向いてボールを持てるようになり、試合は次第にオープンな撃ち合いとなる。大宮は高橋祥平が、「自分のマークのミスで失点したので、点を取りに行きたかった」と、気持ちの入った攻撃参加でチームに活を入れる。74分、「我々にはパワーが必要だった」というベルデニック監督は、2週間前の広島戦でゴールキーパーと激突しながら決勝弾を挙げた富山貴光を投入。スタジアムが大きく沸く。そして81分、中盤の金澤慎からズラタンに縦パスが通ると、「慎君ならズラタンに入れると思った」渡邉大剛がすかさずサポートし、ワンタッチでの落としを受けるとさらに前方のノヴァコヴィッチへ縦パスを入れ、そのままゴール前へ走り込む。「練習通りの形、みんなに感謝したい」と振り返った渡邉が、ノヴァコヴィッチからのワンタッチを鮮やかに沈め、大宮が再びリードを奪った。

残り時間、湘南も必死に攻めた。しかしゴールは遠い。アディショナルタイムは4分。湘南はコーナーキックにゴールキーパーの阿部伸行まで上がって行く。大宮サポーターが「大脱走」に乗せて「無敵大宮」を歌えば、湘南サポーターも「いつでもどこでも、共に戦う」と、祈りを込めて歌い続けた。90分+4分、梶川諒太の左からのクロスを鎌田翔雅がファーでゴール前に落とし、そこに菊池大介が飛び込む。当たり損ねたボールはゴール方向に転がったが、倒れた菊池の身体に当たってラインの手前で止まる。そこへ大宮は北野貴之、片岡洋介、菊地光将、湘南は鎌田、大野が殺到。大混戦の中、何とか大宮がかき出し、最後までハラハラさせながらもリードを守りきった。

タイムアップの瞬間、多くの選手が膝に手をつき、湘南には座り込む選手もいた。すべてを出し切った選手たちの背中に、ずっと途切れなかった湘南サポーターの「俺らは歌うのさ、湘南のために」とのチャントが優しく響く。敗れたとはいえ、湘南のサッカーは素晴らしかった。勝敗は別として、どちらがやりたいサッカーを表現できていたかというと、湘南のほうだっただろう。ただ湘南は、決定力不足というより、決定機を作る力そのものが不足していた。J1の水にも慣れ、しっかりと自分たちのスタイルを発揮できるようにはなってきたが、同時にその先の課題を突きつけられた形。それでもプレシーズンマッチ、ヤマザキナビスコカップと、対戦するごとに成長している湘南には、そこも克服してきそうな勢いがある。試合後にベルデニック監督が曹監督にかけた「次に対戦するときは勝てるかどうかわからない」という声は、あながち社交辞令ではないだろう。

大宮は、内容が悪くても少ないチャンスをモノにして勝ちきる強さを見せた。前節でリーグ戦連続無敗記録と連勝記録が止まり、ミッドウィークのヤマザキナビスコカップも落とした、悪い流れを断ち切れるかどうかの試合で、しっかりとチームの真価を発揮してみせた。首位にいることは、もはや勢いやフロックではないと思わせるだけの強さが、今の大宮にはある。2位の横浜FMが引き分けて勝点差は5に広がったが、勝点差6の3位浦和が1試合少ないため、首位で中断期間に入るためには次のアウェイ甲府戦(5/25@中銀スタ)で勝点1以上が必要だ。この日のヒーローとなった渡邉は、「甲府をオレンジに染めてください」とゴール裏に呼びかけた。「首位を守るのは、我々のチーム力では簡単なことではない」(ベルデニック監督)が、大宮はチームとサポーターが一丸となって次を戦う。

以上

2013.05.19 Reported by 芥川和久
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