今日の試合速報

ACLE
ACLE

J’s GOALニュース

一覧へ

【J1:第12節 広島 vs 甲府】レポート:圧巻のハットトリック。偉大なストライカーの爆発が、広島に1年半ぶりの逆転勝利をもたらす(13.05.19)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
もちろん、ヒーローはエース。佐藤寿人が存在する至福が広島サポーターの身体を突き抜けた試合となった。とりわけ1点目は、この試合の流れを決定づけた意味深いゴール。先制した甲府の勢いを止め、味方に勇気と落ち着きを取り戻したという意味でも重要だった。

4分、甲府は右サイドで見事なパスワークを披露する。山本英臣のクサビを受けた羽生直剛が、オーバーラップしていた福田健介とのワンツーで右サイドを突破。ニアに入れたクロスをオルティゴサが甲府移籍後初得点。連動性に満ちたサイド攻撃による美しい得点は、城福浩監督が掲げる「ムービングフットボール」の一端を垣間見せた。

昨年、J1初優勝を果たした広島だが、実は先制点を奪われた試合では一度も勝利していない。先制→逆転→再逆転という試合が一度あるのみ。先制された試合をひっくり返したのは、J1では2011年12月3日の対山形戦までさかのぼる。一方の甲府は、先制した試合はJ2時代も含めて26試合連続負けなし。さらにアウェイでは昨年3月20日対山形戦で敗れて以降、25試合負けなしを続けていた。プレビューで書いたような広島との相性を考えても、この素晴らしい先制点が甲府に大きな意味をもたらすはずだった。

だが、そんな小賢しい理屈や感性を、偉大なストライカーは木っ端微塵に吹き飛ばす。高萩洋次郎の縦パスが出たその時、一度は前に走った佐藤寿人は、その軌道とDFの動きを見て修正をかけた。鋭く前に飛び出した石原直樹に引っ張られるかのように甲府の守備陣は3人、ゴール方向に向かって走る。
その瞬間、佐藤は止まった。敢えて、止まった。
なぜ、止まったのか。
「いい形で直樹が飛び出したんだけど、そこでクリアされそうな状況を見て、そのクリアボールが拾える位置で待っていようと思った」

止まることによって自分のマークが外れ、自由になれることも計算の内。土屋征夫のクリアが自分の方向にこぼれてくるのも、その体勢から予測できていた。「思考のストライカー」佐藤寿人が積み上げたJ1+J2での176得点中広島移籍後の143得点を全て、筆者は目撃しているが、「たまたま」のゴールは見たことがない。このシーンも、クリアが偶然落ちてきたのではなく、全ては彼の予測の範疇。高萩のボールに対して「足を止めた」という事実がその証明だ。甲府側の不運はシュートが土屋の頭をかすめ、バーに当たってゴールに吸い込まれたこと。失点の過程は、広島のシンプルさと佐藤の頭脳にはめられた形となった。

この同点弾の影響は計り知れない。失点直後、広島は落ち着きを取り戻し、相手のミスを誘ってのカウンターがボディブローのようにダメージを与える。甲府も必死に前に出るが、広島の落ち着いたブロックを破ることができない。つなごうとする甲府に対して広島は前からのプレスも敢行。それがさらに、アウェイチームの焦りを誘った。
それでも甲府は我慢を重ねながら、チャンスを狙う。39分、福田から出たスルーパスに柏好文が飛び出した。広島の左サイド=パク・ヒョンジンの経験不足を巧みに突いたカウンターだ。一気に飛び出した柏、シュート! コロコロと転がったボール。その行方は、どうか。ポストの横。ため息のエディオンスタジアムだ。

そしてこの場面が、甲府にとって最後の決定機となった。その後は広島のゴールショウ、開幕である。
44分、高萩のサイドチェンジを受けたパクが、上がってきた水本裕貴にボールを渡す。山本のタックルを浮かしてかわし、右足を一閃。守備の重鎮が放った今季2得点目で広島は逆転した。
75分、青山敏弘の縦パスに抜け出した石原がGKと入れ替わる。追いすがった松橋優がシャツを引っ張ってしまう。得点機会阻止ということで松橋は退場。PKを冷静に決めた佐藤は、その7分後にはまたも石原の粘りが起点となり、青山のクロスが流れる場所を予測したエースが押し込む。2006年9月30日の対川崎F戦以来4度目となるハットトリックで勝負は決まった。甲府は暑さと広島のパスワークの影響を受けて時間と共に足が止まり、後半のシュートはわずか1本。為す術もなく、終了のホイッスルを突きつけられた。

86分、次世代エースの野津田岳人がプロ初得点。試合後にはサポーターの前で涙をこぼすという18歳の初々しさも含め、広島は最高の内容で今季2度目の連勝だ。佐藤寿人はJ1通算得点でウェズレイを抜き、マルキーニョスと並ぶ4位に浮上した上で、得点王ランクでも首位に立った。11試合9得点は昨年と同じペース。量産態勢に入ったエースと共に、チームも上昇気流へ。90分間走り抜いたフィジカル、攻守にわたる連動性、全員が攻撃に絡み守備にも参加するスタイル、そして相手の意表を突くアイディア。「らしさ」が爆発したEスタは初夏の広島祭り、寿人祭りに沸き返った。

以上

2013.05.19 Reported by 中野和也
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

テレビ放送

一覧へ

明治安田J1リーグ 第37節
2024年11月30日(土)14:00 Kick off

旬のキーワード

最新動画

詳細へ

2024/11/25(月) 10:00 【週末のゴールをイッキ見!】明治安田J3リーグ全ゴールまとめ【1124】