このような試合展開になると、いくら選手たちが「疲れはない」と首を横に振っても、15日に行われたAFCチャンピオンズリーグ・ラウンド16第1戦、全北との今シーズン一番のタフなゲームの影響がまともに出てしまったと言わざるを得ない。それだけ柏のパフォーマンスには、前後半で大きな開きがあった。
柏は素晴らしい試合の入り方をした。大谷秀和と栗澤僚一のダブルボランチがC大阪の攻撃の芽を摘み取り、攻撃陣は相手が食い付いて発生したスペースにレアンドロ ドミンゲス、ジョルジ ワグネル、クレオが入り、テンポ良くボールをつないで軽快な攻撃を展開していく。
逆にC大阪は杉本健勇、柿谷曜一朗が孤立しており、ボールを奪う場所も自陣のかなり低い位置であるため、普段の流れるような攻撃へ転じられず、アバウトなボールを前線のスペースへ送るか、カウンターに出ようとしても柏のダブルボランチの読みの鋭さ、寄せの速さに後手を踏んだ。
26分の柏の先制場面は、C大阪が酒本憲幸からシンプリシオにパスをつなぎ、攻撃へ転じたその瞬間、大谷のインターセプトから始まっている。自らボールを運ぶ大谷は「中にスペースがあるのはわかっていた。そこに僕がボールを出せるか」と言うように、外から中へ入って行った工藤壮人の素晴らしい動き出しに対し、絶妙のスルーパスを送る。工藤がコースへ流し込む落ち着いたシュートで先制した。
前半アディショナルタイム、それまで最高のプレーを見せていた大谷が中盤でバウンドの処理を誤り、それをシンプリシオに奪われC大阪のカウンターとなる。ボックス前で仕掛けた柿谷が倒され、ゴール正面でのフリーキックを得ると、山口螢のキックが壁に当たってコースが変わり、GK菅野孝憲の反応した方向とは逆に流れてゴールネットに吸い込まれていった。
内容では圧倒しながらも結局は1点しか取れず、追い付かれてしまった柏。内容が悪いなりに1点に抑え、前半終了間際に追い付いたC大阪。こういう心理状態も働いたのだろうが、後半は両者の立場が完全に逆転した。
C大阪の守備陣形が後半は見違えるように統率され、最終ラインと中盤による2層の壁で柏の付け入るスペースを消した。柏の前線の動き自体、ガクッと少なくなり、相手をゾーンから引き剥がしておいてから、誰かが入るといった連動した前半のような攻撃は全く見られなかった。C大阪の両センターバック、藤本康太・山下達也は縦パスの入る瞬間を「取りどころ」と狙いを定め、中でも前半の茂庭照幸のアクシデントで急遽出番の回ってきた山下の出来が素晴らしく、仮にボールを奪えなかったとしてもタイトな守備で連携ミスを誘い、柏に起点を作らせない。
バランスを崩れ始め、柏の組織に発生したスペースを今度はC大阪が素早い攻撃で突いた。中盤から前線の選手がゾーンの間でボールを引き出し、サイドチェンジを取り入れながら柏の陣形を揺さぶりにかかる。74分には「速さを生かして、前がかりになる柏の攻撃を止めた後に、さらに点を取りにいく」(レヴィー クルピ監督)という意図から、楠神順平、南野拓実を投入。この交代は、この後の展開を考えるとひとつ大きな鍵になった。
この交代を機に、右サイドで何度も何度も細かい動きを繰り返して最終ラインの背後を狙っていた柿谷。渡部博文が南野の対応に引き出された時に、その背後のスペースにポジションを取り、見事な動き出しでラインの裏を突いた柿谷に扇原貴宏のパスが通る。柿谷は「トラップミスだったんです」と照れながらその瞬間を振り返ったが、逆にそのコントロールが菅野のタイミングをうまく外す形になり、76分に柿谷の右足シュートがゴール右へと決まる。
アディショナルタイムにはC大阪がトドメの3点目を挙げるが、近藤の死角からボールに迫った南野の献身的な動きがあったにせよ、ACLでの激闘による精神的な疲労も手伝い、普段の研ぎ澄ますほどの集中を持続し切れていなかったことが、あの対応につながったのではないだろうか。ただ、そのこぼれ球を「来ると思っていた」と予測していた柿谷が、怠らずに詰める動きをしていたことも忘れてはならない。大事にしすぎて外しがちなこういう局面でも、柿谷は落ち着いてグラウンダーのシュートを流し込んだ。
劣勢時には崩れることなく、後半に相手の動きが落ち、パフォーマンスの質が下がったところで一気に畳みかける。ネルシーニョ監督も「相手が勝ち方を知っていた」と評した通り、C大阪が試合運びや駆け引きの部分、フィニッシュの質も含めて柏を上回ったからこそ手にした勝利で、総合的に見てC大阪の完勝だった。
「前半は完璧だった」と言っても、敗れてしまえばその言葉は何の意味も持たない。今シーズンは敗戦を教訓にするケースが非常に多いが、今回のC大阪戦で学んだことも柏は生かさなければならない。ACLのラウンド16第1戦で良いゲームをしても、第2戦の出来次第で、それをフイにしてしまう可能性もある。それを教えてくれた敗戦と捉え、次のACLに備えて前を向こう。
以上
2013.05.19 Reported by 鈴木潤
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