ゴールラッシュでホームゲーム2連勝。浦和は6ゴールを叩きこみ、2005年10月15日の柏戦で7−0の勝利を収めて以来の大量得点となった。
ただ、6−2と大差の付く結果にはなったものの、チャンスの数を見ていけば、鳥栖にも大量点の可能性はあった。シュート数を見ると、鳥栖は浦和の14本を上回る16本を数え、そのなかには決定的なシュートが何本もあった。この試合はお互いにノーガードで得意のパンチを撃ち合うような展開──攻撃面を見ればエキサイティング、守備に焦点を当てると粗が見える展開となった。
鳥栖は浦和対策の形を取らなかった。むしろ、浦和にとって最も戦いやすい守り方をしてきた。鳥栖は守備時に前の2枚を残して4−4のゾーンで対応しようとしたが、その形は4バックを攻略するために編み出されたミシャシステムが最も料理しやすい守り方だ。
5トップがDF4枚に対して数的優位に立てるので、サイドで簡単に起点を作れる。それでもDF4枚が中を固めることをすれば、前線に高さのない浦和にとっては嫌らしい守り方になるが、鳥栖はゾーンに入ってきた相手選手に寄せにいった。枚数が足りていないなかでそういう対応をすれば、玉突き事故的にスペースが生まれるので、浦和はそのスペースを活用すれば簡単に決定機を作れた。
「今日はいい形でボールをもらえたと思う。4バックの相手のスライドが絞ってきたので、そこをうまく使えたと思う」。この日、何度もサイドで攻撃の起点となっていた梅崎司はそう振り返る。鳥栖はミシャシステムの利点を引き出すような戦い方をしていた。鈴木啓太も「サイドがフリーになるという意味においてはそう思う」と認めている。
鳥栖の守備を最後列から見ていたGKの赤星拓も「浦和は前に5枚張ってくるのに対し、うちは4枚なのでそこはゾーンでうまく受け渡しして、中では絶対にやらせないというのはあった。でもサイドの対応でかわされて、シュートのところで相手にフリーでやらせてしまう場面が多かった」と指摘している。立場の異なる選手たちが同じような印象を抱いたことを踏まえれば、浦和の戦い方がいかにハマっていたかわかるだろう。
ただ、浦和も攻撃では強みを随所に見せた一方で、守備ではルーズな対応が少なくなかった。試合開始4分のシーンで右サイドからシンプルなクロスが上がった際に、豊田陽平をドフリーにしていた時から嫌な雰囲気はあった。この試合で最も警戒しなければいけないところのケアがいきなり甘くなっていたのだ。攻撃であっさりと主導権を握れる分だけ、リスクマネジメントの意識が薄くなるという悪い癖が出ていた。
22分にも緊張感の乏しい場面があった。GK加藤順大に向かってボールが転がっていった時、浦和の選手複数人が不用意に見切りをつけてボールを追うスピードを緩めたことで、後ろから飛び出してきた岡田翔平に拾われ、あわやというピンチを招いた。プレーを止める前に周囲の状況確認していれば防げた場面だった。
1失点目はまさにリスクマネジメントの意識が薄いところを見事に狙われた。みんなの意識がボールに集中してしまっていて、逆サイドの岡田を完全にフリーにしてしまっていた。自陣には人数が揃っていたので、各々が適切なポジションを取っておく必要があった。2失点目の場面では、守備対応の形はできていたのにゴールを許した。ゴール前で豊田に簡単に入れ替わられた森脇良太の対応、そしてセカンドボールを拾って前に運ぼうとしてボールロストした梅崎のプレーはいずれもやってはいけないものだった。
浦和は攻撃的なスタイルなので、守備対応が間に合わず喫する失点というのは確かに出てくるが、それだけに防げる失点というのはなくしていかないといけない。浦和はリーグタイトルを目指しているチームだ。大勝した時こそ良かった点と悪かった点を冷静に受け止め、さらに強いチームへ成長するための糧にしていってほしい。
以上
2013.05.19 Reported by 神谷正明
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