勝利に飢えたチーム同士が火花を散らす。
水戸は第8節から10年ぶりとなる無失点での3連勝を挙げ、勢いに乗るかと思われたが、その後4試合勝利なし。前節は徳島に前半だけで3点叩き込まれるという完敗を喫し、順位を16位まで落としてしまった。「J1昇格」を目標に掲げるチームとしてもうこれ以上負けるわけにはいかない。今節は勝利だけが求められる試合である。
現在最下位に沈んでいる岐阜にとっても、重要な一戦である。第8節松本戦で初勝利を飾ったが、それ以降勝利がなく、いまだ1勝と波に乗れずにいる。とはいえ、第11節山形戦でシステムを3バックに変更し、守備から試合に入るという意思統一ができるようになっている。前節熊本戦ではスコアレスドローに終わったものの、主導権を握る時間が増え、手ごたえをつかむことができた。今節はアウェイとはいえども勝点3を手にして、現状打破に弾みをつけたいところだろう。両者の勝点3への飽くなき執念がぶつかり合う激戦になることが予想される。
勝負を左右するのは前半の戦いだ。水戸は前節徳島戦で前半だけで3失点。ここ4試合で喫した8失点中6失点が前半に決められたものである。「決して悪い内容ではないけど、自分たちで隙を作ってしまっている」(柱谷哲二監督)ことが勝ち切れない最大の原因となっている。まずは前半45分間、アラートな状態を保って無失点で切り抜けたい。
同時に前半にゴールもほしい。この4試合で決めた5得点はすべて後半に決めたものであり、前半にゴールを決められないという課題を残している。前節は「DF裏を突くことができなかった」と内田航平が反省したように、前半は足元へのパスが多く、相手のプレスにかかってしまい、カウンターからピンチを招いてしまった。「もっと前を意識することが大事」という内田の言葉通り、相手DFの背後を突き、ゴールに迫る意識を見せていきたい。水戸にとってはホームであり、先手を取る戦いを見せなければならない。序盤からゴールへ向かう強い姿勢を見せてもらいたい。
あとは水戸が岐阜の守備を崩すことができるかどうかだ。今節の注目は水戸FW鈴木隆行と岐阜DFデズモンドのマッチアップだろう。強靭なフィジカルを持つ両者の肉弾戦。そこに両チームの狙いが隠されている。前線の鈴木隆が起点となり、厚みのある攻撃を仕掛けたい水戸に対し、岐阜はボールを奪ってスピーディーに攻め込む狙いを持っている。2人の熱いバトルが勝負のカギを握っていると言っても過言ではない。
今節、水戸には負けられない理由がある。試合2日前の5月17日、全選手とスタッフがJR水戸駅で試合告知のビラを配布した。選手たちの周りには多くの人だかりができる大盛況で約40分の間に2000枚のビラが配られたそうだ。そこで選手たちは「必ずいい試合をするから見に来てください」「勝ちますので見に来てください」と約束したのである。「選手たちのいい刺激になったと思う。自分で約束したのだから、ちゃんと実行しないといけないという責任を持ってプレーしてくれると思います」(柱谷監督)。市民と交わした勝利の約束。選手1人1人の胸にしっかりと刻まれているはずだ。それを実現させるべく水戸は戦う。
以上
2013.05.18 Reported by 佐藤拓也
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