大宮は11日に行われた第11節アウェイ仙台戦で、リーグ戦では昨年８月25日以来の敗戦を喫し、連続無敗記録は21で、連勝記録も７でそれぞれストップした。さらに15日のヤマザキナビスコカップ第６節アウェイ川崎Ｆ戦も落とし、リーグ戦とカップ戦とはいえ形の上で連敗したことは、ここまでのチームの良い流れに水を差した感がある。対する湘南はリーグ第11節のＦ東京、カップ第６節清水戦と連勝している。「アグレッシブさが特長のチームが、さらに勢いに乗ってくると思うので、そこに飲まれないように。連敗しているので、(悪い流れを)断ち切らないといけない」(高橋祥平)。大宮にとっては厄介なタイミングで、厄介な相手と戦うことになる。

湘南とは2月26日のプレシーズンマッチ、３月23日のカップ戦に続いて今年３回目の対戦となり、２試合とも大宮が４−１、３−１と大勝している。しかし今の湘南に、J１のプレーと判断のスピードに苦しんでいた当時の姿はない。５月６日の鹿島戦、ダヴィの一発に沈んだとはいえ内容では上回ったのを皮切りに、昨年J２を席巻した攻守にアグレッシブなサッカーが戻ってきている。激しい前線からのプレスは、Ｆ東京と清水のビルドアップをかっさらって計３得点の猛威を振るった。攻守の切り替えの速さにますます磨きがかけられ、選手たちも迷いなく自信を持ってプレーできているようだ。しかも同じ連戦をこなしているとはいえ、湘南は清水戦ではＦ東京戦のスタメンから９人を入れ替えている。途中出場まで含めれば主力を４人しか温存できなかった大宮は、ただでさえ体力的に不利な状況からのスタートとなる。
当然、大宮もそこは警戒している。「立ち上がりからアグレッシブにプレスをかけてくるので、変な奪われ方をしないようにロングボールを蹴るのも手だし、かといってそればかりにならないように、上手くいなすことができればスペースがあると思う」(下平 匠)。カップ戦の対戦では、序盤は湘南の前線からのプレスに苦しめられたが、一瞬プレスが弱まった隙を突いた上田康太のロングボールに富山貴光が抜け出して先制し、流れを引き寄せている。あの日とはメンバーは違うが、大宮がプレスをかいくぐれば、湘南にとってはさらに怖いズラタンとノヴァコヴィッチが前線に待ち構えている。湘南としては、この２人にボールが入ってから応対するよりも、そこに入れさせないのが理想で、当然、大宮のボランチと最終ラインに激しく圧力をかけてくるはず。大宮のビルドアップと湘南の前線からのプレス、そこがまず一つの見どころになるだろう。

大宮の懸念材料は、仙台、川崎Ｆと、自慢の堅守が連続してロングボールで攻略されたことだ。仙台はFWが競ったあとのセカンド勝負、川崎Ｆは裏抜けでサイドに起点を作って勝負という違いはあったが、いずれにしても脆さを露呈したことで、今後はどの対戦相手もねらってくるはずだ。最終ラインを高く設定したコンパクト守備がここまで大宮の組織的サッカーの肝であり、前線からプレスをかけてロングボールを蹴らせないのが理想だが、時間帯によってはコンパクトにしたまま最終ラインを下げてスペースをなくすことも必要だろう。「その修正が、川崎Ｆ戦では試合中にできなかった」と下平が反省を漏らす。湘南も、素早い切り替えから、川崎Ｆと同様に下平の裏へのロングボールにFWや古林将太を走らせ、そこで起点を作り人数をかけて攻めてくるだろう。「選手たちが自分たちの判断で、試合の流れを読んで対応すること」をベルデニック監督は求めている。相手にねらわれた上で、その対応力を示せるかどうか。「上の順位になればなるほど、どこのチームも分析して嫌なところを突いてくる。日々のトレーニングの積み上げから、それを上回るものを出していくこと」(渡邉大剛)ができるか。大宮がこの先も上位で戦っていけるかどうかを占う試合になりそうだ。

記録はいつか途切れるものであり重要なのは負けた次の試合であり、仙台に敗戦後の選手たちも口々にそう語っていた。大宮は現在首位に立っているとはいえ、もしこの試合を落とし２位の横浜FMが勝てば、得失点差で首位陥落となる。ここでしっかり立て直せるか、大宮にとっては「踏ん張りどころ」(金澤 慎)だ。
またこの試合、湘南にとってもJ１通算１００勝がかかっている。記録のかかった大事な試合か、記録が途切れたあとの大事な試合か、勝負の行方に注目したい。

以上

2013.05.17 Reported by 芥川和久