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【J1:第12節 広島 vs 甲府】プレビュー:Eスタでの対甲府戦、10年ぶり勝利なるか。広島はリスクをコントロールし、攻撃サッカーで勝負する(13.05.17)

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そういえば、広島が勝った試合を見たことがないなあ。
漠然と思い出していた広島対甲府の歴史。一つ一つ、印象をつむぎあわせていったのだが、エディオンスタジアムでの試合となると、ほとんど広島のいい場面を想い浮かべることができないのだ。
それもそのはずである。2003年9月6日に井川祐輔(現川崎F)・森崎浩司のゴールで2-0と完勝して以来、広島はEスタで甲府に勝利したことがない。しかもこの試合はJ2。J1では0勝2分1敗とEスタでは甲府に全く勝てない。もっともJ1で甲府に勝利したのすら、2011年8月6日が初めて(李忠成(現F東京)・佐藤寿人のゴールで2-0と勝利。この試合後、甲府は三浦俊也監督の退任を決定した)。相性は、最悪に近い。

どうして、甲府に勝てないのか。森崎和幸は「あまりそういう意識はない」と苦笑いしつつも、こう続けた。
「甲府の伝統はハードワーク。常にチームとして戦ってくるし、どういう状況になっても心は折れない。守備にも連動性があるし、選手もさぼらないから崩すのは難しい相手なんです」
堅守という要素が甲府の伝統であるとするならば、今季の彼らはその伝統をしっかりと受け継いでいると言っていい。1試合平均失点は1.00。完封試合こそ11試合中2試合と広島の10試合中5試合と比較すれば少ないが、一方で2失点以上の試合もわずか2試合。第4節・川崎F戦〜第10節・新潟戦まで7試合連続不敗と、実に安定した闘いを見せてきた。

ただ、甲府の城福浩監督も広島の森保一監督にしても、本来のコンセプトは攻撃。全員がボールに関わり、積極的に動いてスペースをつくってマイボールを大切にするサッカーで相手の守備を意図的に崩したい。細かなディテールの違いはあっても、狙いとする方向性は似ている。
それだけに、両チームとも攻撃面については不満があるだろう。広島の平均得点1.50は、昨年の1.85点から大きくダウン。甲府に至っては平均得点1.00(リーグ15位)、平均シュート数7.7本(リーグ最下位)に沈んでいる。もちろん、J2とJ1の違いの質的な差は存在するのだが、甲府が昨年の得点源=ダヴィの穴を埋めきれていないと言われても、仕方はあるまい。
広島も攻撃に躍動感を生み出そうと、もがいている。「結果が出ていないわけではないし、すべてをネガティブに捉える必要はない」と森崎和が語るとおり、攻撃面が機能していない中でも5位という順位をキープし、ACL圏内の3位・浦和とは勝点3差。まずまずの戦績と言うこともできるが、昨年の同時期と比較すれば得点が19→15と減少し、シュート数も134本→103本。記録上から見ても、広島が攻撃面で苦しんでいることはわかる。

ただ、光が見えていないことはない。大宮、そして大分と1点ずつとれなかったことは確かだが、その「1点」の内容がいい。大宮戦はカウンターから速いパス回しで相手陣内に侵入し、高萩洋次郎のスルーパスで裏をとった井波靖奈がGKとDFの間をピンポイントクロスで通してのゴール。大分戦ではボールを奪った塩谷司からダイレクトパスをつなぎ、パク ヒョンジンの精密なクロスに飛び込んだ塩谷がヘッドで決めた。共にピッチ幅を有効に使い、ダイレクトパスを駆使しながら相手DFを横に揺さぶった結果の得点。どれほど守備を固めた相手であっても、ボールをダイナミックに動かせば崩すことができることを、結果を持って証明したのである。

確かに甲府の守備は堅い。土屋征夫・青山直晃のCBコンビは強く、そして経験も豊富だ。ボランチの山本英臣はチームに安定をもたらし、アタッカーたちも献身的な守備を見せる。しかし、広島が持っているクオリティとダイナミックなサイド攻撃を全員で仕掛けることができれば、嫌な相性を吹き飛ばすことはできる。「そのためにも必要なのは、リスクをかける勇気」とは森崎和の言葉。広島サッカーのベースを築いたペトロヴィッチ監督(浦和)はかつて「リスクを冒さないのは、サッカーではない」と言い切った。その言葉をもう一度、思い出すべき時に来ている。
もちろん、「リスクを冒す」ことは「守備を考えない」ことにつながるわけではない。甲府の狙いは、広島の攻撃を寸断してのショートカウンター。「ここぞ」という時の甲府の速攻は鋭く、人数もかけてくる。ボランチやCBまで飛び込んでくる危険性を伴う。一つのミス、安易な取り組みが広島の命取りになることもある。

リスク管理を怠りなく、一方でリスクを冒した攻撃を仕掛ける。一見、矛盾した考え方のようだが、しかし、そこをやりきらないと、広島にとってJ1での対甲府戦Eスタ初勝利は見えてこない。

「理想を高く持ち、現実を直視する」

広島の頭脳=森崎和幸の言葉をピッチで表現できるか。それとも甲府が相性の良さを活かせるか。昨年のJ1王者vsJ2王者の闘い、熱くならないはずがない。

以上

2013.05.17 Reported by 中野和也
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