横浜F・マリノスは、“2つの敵”を相手にしなければいけない。
1つは当然、ベガルタ仙台。首位・大宮アルディージャを撃破し、波に乗り出した好チームである。横浜FMとの相性も良好。J1復帰後、2010年からの対戦成績は、仙台が3勝2分1敗でリードしている。昨年までの2年間は横浜FMに負けていない。
特に印象に残っているのは、昨季の第2節、日産スタジアムでのゲーム。前半、仙台は前線からのプレスを強調して2点を奪うと、後半はラインを下げて、強固な守備ブロックを築き、完封。秀逸なラインコントロールを見せつけられた。榎本哲也も「チームとして“出来上がっている”」と相手を評す。トリコロール軍団にとって難敵以外の何者でもない。
さらに別の敵もいる。それは見えない敵、「疲労」だ。前節から今節まで、仙台が中6日なのに対し、横浜FMは今週水曜日にカップ戦を挟んだので中2日。無論それはわかり切っていたことだが、リーグ戦とヤマザキナビスコカップの“二兎を追う”ことを決意。15日のジュビロ磐田戦では、平均年齢30.73歳のフルメンバーで首位攻防戦に臨んだ。内容的にも予選突破に向け、序盤から飛ばすフルスロットルのアタックを仕掛け、非常にアグレッシブ。幸い3−0とリードを広げたため、攻守の重鎮、中村俊輔と中澤佑二をそれぞれ80分、83分にベンチに下げることはできた。しかしながら、連戦による疲労の蓄積は、やはり気がかりである。
とはいえ、そんな懐疑的な見方を払拭してくれそうなフレッシュな存在もいる。ケガ明け後、初先発出場だった先の磐田戦を自らのゴールで祝した齋藤学だ。第7節・アルビレックス新潟戦で負傷し、戦列を離れた間、チームはリーグ戦2分2敗と停滞した。その要因は様々あるだろうが、ドリブラー齋藤不在による「推進力の欠如」も遠因の一つではないか。事実、復帰戦の前節名古屋グランパスでは、齋藤の途中出場後に逆転に成功。結果を残したわけではないが、決勝点を“アシスト”した。ゴール前に入るフリーランニングで相手DFを引きつけスペースをつくったことで、フリーになった兵藤慎剛が難なく得点を決めている。
今節に向けて話を聞いた際には、「仙台の組織力を自分の個の力で破れればいい。ドリブルのキレを含めて、自分はもっとできるはず」と童顔を引き締めて言った。横浜FMの“リーグ戦再連勝”への鍵は背番号11が握っている。
一方、仙台の3連勝の鍵を握っているのは、ある意味、手倉森誠監督かもしれない。前節は大宮対策を敢行し、見事にハマッた。具体的には、DFの裏を狙うロングボールを多用し、前線から圧力をかけ、相手ラインを押し込むこと。それによって大宮は普段のコンパクトな陣形が乱れ、得意とするプレス守備の効力が弱まったように思う。
もしかすると、今回もこの方策がハマる可能性がある。横浜FMもセンターラインの守備の強さに定評があり、高い位置でのボール奪取後の速攻を得意とする。よって仙台はそれを回避しようと、今回も中盤を省略し、DFの裏を突いてきてもおかしくない。仙台の策士がどんな対策を講じるのか、実に興味深い。
以上
2013.05.17 Reported by 小林智明(インサイド)
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