5月3日に行われた第12節・京都戦(札幌ドーム)で1人の男がデビューを果たした。曵地裕哉、22歳。2009年に札幌U−18からトップチームに昇格した大型GKだ。
「試合前は吐きそうなほど緊張しました」
試合翌日に彼はそう振り返った。天皇杯やヤマザキナビスコカップでも出場実績がなく、プロ5年目にして初めて掴んだ公式戦出場。だが、プレーはとくに危ない雰囲気もなく安定していた。キックの質も問題なし。試合こそ敗れてしまったものの、上々のデビュー戦だったと言っていい。
想いの詰まった一戦だった。
「プロになって4年以上が経った。『やっと来たか!』という心境。常にいい準備をしてきたつもりだし、試合を楽しみたいと思う。積み上げてきたものを、すべて出しきりたい」
試合前日、曵地はそうやって力強く発していた。
ひたすらにトレーニングを積んできた。それこそプロ入り当初などは、技術面云々以前にまずは体力的な部分で先輩GKらに遅れをとり、メニューについていけないような場面もあった。失礼な言い方になるかもしれないが、彼がリーグ戦でゴールマウスの前に立つ姿をイメージするのは、その頃は極めて難しかった。
でも実際、今こうして試合で活躍した彼のことを書いているわけである。筆者は外部から勝手に見ていただけとはいえ、やはり何かしらの感情は芽生えてくるものだ。
京都戦の開始前にピッチレベルからスタンドを見回してみると、曵地を応援する横断幕がいくつか目に入った。京都戦に曵地が先発起用されそうだという報道がされたのは試合の前日や前々日だったはずだから、それを知ってから横断幕を発注しても間に合わない。きっと、それらの横断幕はずっと以前から張られていたのだ。そしてそれらは間違いなく、若き守護神に力を与え続けていたはずだ。
ここ最近、曵地はメンタル的に成長してきた手応えがあったという。そして、その支えとなっていたのは、ポジション争いのライバルでもある先輩GKの杉山哲だという。「テツさん(杉山)も鹿島でなかなか試合に出られない時期が続いていたそうで、そういうときのメンタルコントロールについていろいろとアドバイスをもらったんです」と曵地は感謝する。
厳しいプロサッカーの世界では、新たに誰かがポジションを掴めば、必ず誰かが失っているわけである。その意味では、新戦力の台頭というのは必ずしもすべての人をハッピーにしているとは限らない。だけれど、この曵地のデビューに関して言えば、「努力は必ず実を結ぶ」ということを証明してくれたわけでもあり、ベクトルは様々なれど、誰もが前向きな気持ちになれたのではないだろうか。少なくとも筆者はそう感じている。
「試合前夜はなかなか寝付けなかった」と曵地は笑って振り返る。きっと、同じように興奮して寝付けなかったファン、サポーターもいたのではないだろうか。
喜んだり、悔しがったり、怒ったり、眠れなかったり。勝ち負けという部分での「結果」ばかりがフォーカスされてしまうプロサッカーの世界だが、しかし同時に、こうやって選手と同じような心境になれたりする素晴らしさも併せ持っているし、そうした感情の起伏もまた、大きな「結果」として僕らの生活に活力を与えてくれていると思う。
この国、この街にJリーグがあることの素晴らしさ。それをあらためて感じながら、5月の中頃を過ごしている。この札幌市内はまだまだ肌寒いが、気持ちは何となく夏っぽくなってきた。プロサッカーがある夏は、どうやっても必要以上に熱くなる。今からとても楽しみです。
以上
2013.05.15 Reported by 斉藤宏則
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