ヤマザキナビスコカップ予選リーグも佳境に入った。Bグループ3位のＦ東京は、同6位の新潟と対戦する。Ｆ東京は、最終節に試合がないために、この試合に負ければその時点で予選敗退が決まる。2試合を残す新潟も、予選リーグ突破のためには勝利が欲しい状況だ。互いに攻めあう試合になるだろう。

Ｆ東京は、数人の選手を入れ替えてこの一戦に臨む。平山相太は今節出場停止だが、李忠成、石川直宏、加賀健一に加え、田邉草民、三田啓貴らが前日練習で主力組に入ってプレーした。新潟は、レオ・シルバと坪内秀介が出場停止でけが人も多い。リーグ３戦負けなしで11日にチーム日本人初のハットトリックを決めるなど川又堅碁が絶好調。多くの決定機をつくりながらも決め切れなかった序盤の面影はもうない。
ポポヴィッチ監督は昨季、「うちが力を出せなかった試合のひとつが新潟戦だった。それを払拭しなければいけない」と語る。ボールロストした瞬間の素早い攻守の入れ替えや、ラインのプッシュアップなどに練習時間を割き、ここ3試合で7失点している守備の安定がこの試合の勝負を分けるポイントとなるだろう。

石川は「不思議だよね」と言う。20年前の同じ日、同じ場所にいた。93年5月15日、国立霞ヶ丘競技場で日本のプロリーグは産声を上げた。チアホーンが鳴り響き、フラッグが風になびく。５万９６２６人の中に、12歳の石川と、7歳の李が混じって試合を観戦していた。李は「バックスタンドの2列目ぐらいだった。本当にあの当時は毎試合がお祭りみたいだった」と話し、改まって「幸せですよね。20年後のその日に立てるなんて」と続けた。
20年前のＪリーグ開幕戦の前半19分、ヴェルディのFWマイヤーが左サイドから中に切り込んで右足を振り抜くと、ボールはグングンと伸びてゴールネットを揺らした。徳永悠平は「あのシュートは覚えている。本当に華やかだった。あのころの華やかさが欲しいよね。もっとサッカー選手の地位も上げないといけない。マイヤーみたいなシュートを決めたい。右から切り込んで左で弾丸を」と嬉々として語った。
物心がついた時にはＪリーグがあった世代もいる。試合前日に主力組に入った三田は「Ｊリーグが開幕した日にしかも国立でプレーできる。それでプロ初ゴールなんて決めたら…」と想像して「運命がきてる。記念に残るプレーで魅せたい」と初々しく話した。
対戦相手の新潟にも同じ思いや、もしかすると、あの日の国立のスタンドにいた選手がいるかもしれない。

ポポヴィッチ監督は「すでに日本のサッカー界は世界の仲間入りをしている。国内だけのニュースではない。世界のサッカー界にとってもＪリーグの20周年というニュースは大きなこと。ブンデスリーガも50周年を迎える。30年間のアドバンテージがドイツにはあるが、オーガナイズでは差がない。20周年を祝うだけでなく、歴史をつくってきた人たちへの感謝を忘れてはいけない。そういった人たちがいたからこそ、今の素晴らしい土台がある。そして、その後に続く人たちのためにもよりよい環境をつくり、より質の高いリーグにしていくことが今の自分たちの使命である。明日は皆さんと祝福すると同時にそういう気持ちを新たにする日でもある」と語った。

石川は「国立は聖地で、憧れの場所。そして、何かが生まれる場所でもある」と言い、明日のＪリーグの二十歳の誕生日を祝う一戦に思いをはせた。「ハッピーバースデーＪリーグ！」。その言葉で始まる試合は国立霞ヶ丘競技場で19時、キックオフする。

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2013.05.14 Reported by 馬場康平