1993年5月15日、国立競技場――。ヴェルディ川崎対横浜マリノスの一戦において川淵三郎チェアマン(全て当時)が「Jリーグの開会を宣言します!」との開会宣言が為されてから、20年が経つ。当初10だったJクラブは現在40を数え、毎週末には日本各地で幾つかの悲しみとそれを凌駕する喜びが生まれている。「本当にサッカーで飯を食える時代がやってきたのか……」とぼんやりと思いながらもどこか遠くの出来事でしかなかった自分も、今サッカーメディア界の末端の末端に籍を置き、こうして原稿を書いている。これが奇跡ならば、この『Jリーグの日』にプレビューを書ける事も奇跡。この重なり合う奇跡について本当に嬉しく思っています。
1965年の創設以来、半世紀に渡り地域クラブとして活動を続けてきた松本だが、Jリーグの仲間入りを果たしてまだ2年。その意味では新興のクラブだ。一方、東京Vは言わずもがな。産声をあげたばかりのJリーグをリードし、その間に多くのタイトルを獲得した名門だ。降雪による順延という想定外のアクシデントによって、『Jリーグの日』に相対することになった経緯はあるが、その名門と新興のクラブがアルウィンで激突するのだから面白い。「15日に開催になったと聞いた時は『あ、Jリーグ開幕の日だ』と。何か不思議な縁を感じる」と話すのは、両チームに籍を置いた経験を持つ喜山康平だ。
両チームの前節を振り返ると、ホームの松本は北九州相手に先制される苦しい試合内容だったのに対し、アウェイの東京Vは高原直泰の2得点で首位神戸相手に会心の勝利。累積警告により左ワイドの福井諒司が出場停止となるものの、そのポジションで躍動出来るだけの好選手は多いだけに戦力の低下はなく、勢いに乗っていることは間違いない。勝敗のカギは、“どこまでコンディションが回復しているか”だろう。松本は前節、森村昂太の退場で北九州に対してフィールドプレイヤーが1人多い状態が長く続きながら、セットプレーから喜山のゴールで同点に追いつくのがやっと。リトリートする相手に対し、ゴール前でのアイディア不足により追加点を奪うことは出来なかった。攻撃面においてのバリエーションを増やすことはこの先のリーグ戦を戦うに当たり不可欠だが、今節に関しては中2日だけにその課題の修正に手をつけることは難しい。お互いに過密日程で迎えるだけに、まずは体力面で少しでも立て直し、相手よりも一歩でも多く走りたい。特に戦力差では分が悪い松本は、その差を埋めるためにチームとしての戦い方を機能させないと勝利はおぼつかない。泥臭い展開が予想されるだけに、球際の強さや1対1の攻防も見物だろう。
当日はJリーグヤマザキナビスコカップが行われるため、J1に注目が集まるのは想定内であるし、平日のナイトゲームにはなかなか足を運べないサポーターも多いのが現実だ。しかしJ2の公式戦はこの一試合のみ。あえて大袈裟に書かせてもらえば、記念すべき『Jリーグの日』にJ2を代表して戦える、ということでもある。だからこそ、激戦を期待せずにはいられない。
以上
2013.05.14 Reported by 多岐太宿
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