東京Ｖにとって、開幕戦以来に喫した今季2つ目の黒星は、残念ながら完敗とも言わざるを得ないものとなってしまった。「内容的にも良くなかったですし、内容も結果も、結果通りのゲームだったと思います」エース高原直泰も、ただただ素直に受け入れるしかなかった。

この試合は、東京Ｖの三浦泰年監督、横浜FCの三浦知良の『兄弟対決』としても注目されていたが、話題性に応えるかのように、三浦知が今季初先発となった。だが、これが決して話題作りのためではないことを、三浦知は63分間のプレーで自らしっかりと証明してみせた。
「真ん中でボールをしっかり受けて、動かして欲しいというところでリズムをつかむというのが狙いでした。戦術理解度も非常に高いので、ヴェルディに対してのはめ込み方をやる上で非常に力になってくれると思いました」と、山口素弘監督は先発起用の意図を語ったが、その期待に背番号11は見事に応えた。

「中の感じは任せてもらっているので、チン（寺田紳一選手）とカズさんと話して、今日は最初からボランチ2枚で、カズさんにトップ下で相手の14番（鈴木惇選手）を見てもらう形がしっくりくるということになった」と松下裕樹が明かしたこの中盤の配置が、攻守にわたって非常に機能。特に守備面で効果的であり、東京Ｖ側からすれば上手くはめられた感じだった。森勇介、小池純輝の特徴ある両ワイドを使って相手を誘い出し、中央が空いたところを飯尾一慶、西紀寛、常盤聡、高原が躍動し崩していくという「いつもやろうとしているのと同じように、この試合もやろうとしたけど、なかなか相手が空いてこなかった」と、飯尾が難しい顔をするのも無理はないかもしれない。横浜FCにとっては、「サイドに吊り出されたり、14番（鈴木惇選手）のところに釣り出されたりして、真ん中を空けることだけは絶対にしてはいけないという意識は特に強く持っていました」との松下の言葉が示すように、それこそが東京Ｖ対策のポイントの１つでもあったようだ。加えて、「相手の2トップと中盤2人が個の力があるので、当然そのケアは大事だけど、その前に、そこにボールを入れさせないことも大事」（松下）と、起点の時点で潰す意識も高かった。結果として、それらを終始徹底できた横浜FCに軍配があがったということではないだろうか。

当然、東京Ｖも何とかして自分たちのリズムに持ち込むべく、スペースを開けるために高原がボールを受けに入ったりするなど、各々が手を尽くした。1点のビハインドで迎えた後半21分、CKから金鐘必が移籍後初ゴールを決め、流れが東京Ｖに傾くかと思われたが、その金がわずか6分後にペナルティエリア内で痛恨のハンドによって、PKを献上してしまった。さらに後半36分には、DFとGKとの連携ミスを内田智也に狙われダメを押されてしまった。せっかく同点に追い付いたにもかかわらず、「集中力の欠如による失点、または過度に相手を意識しすぎたプレーによる失点というのは非常に勿体無かった」と、三浦監督も悔やんだ。ここまで10試合5失点と、リーグ最少失点数を誇っていたDFラインだが、今一度立て直しが必要となりそうだ。

そして、何よりも無念だったのが、この日の観客数は15,022人と、今季最多となった中での不完全燃焼である。試合2日前、１万人超が予定されているという情報を聞いた小池は、「開幕戦も1万人以上も来てくれたのに、良いサッカーを見せられなくて悔しかった。今度こそ、楽しいサッカーをして、またヴェルディのサッカーを観に来たいって思ってもらえるチャンスだと思います」と、語っていた。その絶好の機会を、またしても逃してしまう結果となってしまったことは、極めて悔やまれるに違いない。「ホームでしたし、GWでお客さんもたくさん入っていた中で自分たちに勝ちがこなかったのは本当に悔しい」。8試合ぶりにピッチに立った安田晃大も、無念さを隠さなかった。

とはいえ、高原も話すように「今日負けたことで終わったわけではない」。10試合ぶりの敗戦、今季初の複数失点だけに、悔しさも相当のものではないだろうか。だからこそ、「１つ１つの反省点を、チームとして、個人としてしっかりと受け止め、切り替えるところは切り替えて、次に生かさなければいけない」とも高原。中2日で迎える次節には、この試合を教訓とした、しっかりとした内容で勝利し、歩を進めたい。

以上

2013.05.04 Reported by 上岡真里江