前半は完全に愛媛のゲームだった。4試合勝利なしで3勝6分2敗の9位という戦績に、千葉サポーターはゴール裏スタンドに『あの日の悔しさを忘れたのか? 俺達はこんなもんなのか? この場所に満足なのか? 今までの悔しさ・想い・気持ちを1試合1試合全てにぶつけろ。いつだって傍にいる。黄色の情熱見せてやろうぜ』という手書きの長い横断幕を掲げ、選手入場時には『12』をあしらった綺麗なコレオグラフィーで選手の奮起を促した。だが、残念ながら前半の千葉はサポーターの想いにまったく応えられなかった。
前節は試合開始わずか6分で2失点して敗れた愛媛は、守備意識を強めて手堅く試合に入るかと思われた。だが、試合が始まると前から激しくプレスをかけてボールを奪い、連動性の高いスピーディーなパスワークで千葉を翻弄して何度も千葉ゴールに迫った。ダブルボランチのMF吉村圭司とMF村上巧から左ウイングバックのDF三原向平にサイドチェンジのロングパスが通り、三原がスペースに飛び出すのが目立ったように、ピッチの縦と横を大きく使う。右ウイングバックのFW石井謙伍がドリブル突破を狙い、3トップのMFの河原和寿、赤井秀一、加藤大がゴール前中央へ飛び出す。さらにストッパーのDFの園田拓也と浦田延尚までもがボールを持つと攻め上がり、ボールを支配した。
だが、愛媛の決定機が得点に結びつかない。5分のCKからの浦田のヘディングシュートはクロスバーに当たって落ちるもゴールラインは越えず、11分の石井のミドルシュートは千葉のGK岡本昌弘がセーブ。攻守ともに非常に良かったのに得点だけが足りないという前半は、試合が終わると非常に悔やまれる前半になった。
前からの連動したプレスが機能しないためボールをなかなか奪えず、攻めてもパスの出し手と受け手の意思の疎通を欠いたミスが目立った前半の千葉。攻守ともにちぐはぐな姿に前半終了時には千葉サポーターからブーイングも起こった。30分、そして49分にはMF米倉恒貴のクロスからFWケンペスがヘディングシュートで決定機を作るが、シュートの精度不足や愛媛のGK秋元陽太の好守でノーゴール。愛媛に自分たちがやりたかったことをやられてうまくいかないピッチ内と、その様子を見ながら声援を送っていたスタンドという2つの『千葉』の雰囲気を変えたのは、53分に交代出場したFW深井正樹だった。
時には連動性を欠いた単独プレスになることもあるものの前から必死にボールを追い、タッチラインを割るようなマイボールにも走って行く。深井の積極果敢なプレーは今季の千葉に不足していた『あきらめないで最後までプレーすること』『労を惜しまずに走ること』『どんな場面でも全力で戦うこと』を表現した、気持ちのこもったプレーだった。攻守で前への推進力を増し、交代出場のMFナム スンウがバランスをとった千葉は、65分に攻め上がったDF大岩一貴のクロスからケンペスのヘディングシュートで先制。79分にはFK時に自分が倒されて得たPKをDF山口智が決め、昨季のJ2リーグ第12節・草津(現・群馬)戦に引き続いて2年連続で長男の誕生日を祝うゴールで追加点を奪取した。
48分の加藤のシュート、57分の河原のシュートは岡本の好守に阻まれ、最後まで決定機をモノにできずに敗れた愛媛。3連敗となったが、今節では連動性を含めた攻守の形は良くなっているだけに、決定力不足を解消できれば勝利という結果が出るはずだ。
今節は決定力の差で勝ったものの、千葉のチームとしての攻守の完成度は低い。だが、それは勝つために、そしてチームメイトのために泥臭く『走ること』や『戦うこと』で高められる部分もあるのではないだろうか。「戦力や選手の技術はJ1クラス」という周囲の評価の影響か、攻守ともに技術先行で綺麗にスマートにやろうとしがちな千葉は対戦相手には脅威ではないだろう。本当の意味で一丸となって戦って勝つチームになってほしい。
以上
2013.05.04 Reported by 赤沼圭子
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