背番号7が躍動し、スタジアムを沸かせたのは72分。左タッチライン際でサイドチェンジのボールを受けた西河翔吾から、一つ高い位置で縦パスをもらいターンしたところがスタート地点。テクニカルエリアの最前線で戦況を見守る富山・安間貴義監督の前を通過すると、対峙する國吉貴博を内側から突破。センターラインを越えたところで國吉とキム ヨングンの間に挟まれかけ、さらに交代でピッチに入ったばかりの伊東俊の裏へのランニングに対応してラインを下げていた吉井直人もたまらず前に出た。前方には味方4人もパスコースを空けながら受ける準備を整えていたが、中村太亮は白い三角形を抜け出すようにアウトサイドへ逃げる進路を取ると、追ってきた吉井と平出涼の2人に囲まれた。追い込まれたかにも見えたが、そこから中村太は2人の間にボールを通し、自らも2人を振り切りフリーでペナルティーエリアに入ると、ゴール前で待つ林陵平に速いクロスを送った。これは舩津徹也にクリアされ、こぼれ球からシュートに持ち込むこともできなかったが、1点のビハインドを追いつこうと後半開始から激しい攻撃を仕掛けてきた富山の時間の終わりを告げるのに十分なインパクトを含んでいた。
勝点1差の対戦。前節と同じメンバーで臨んだ富山に対し、先発3人を入れ替えたホームの山形は、立ち上がりからロングボールで相手の裏を突きながら主導権を握る。富山もセカンドボールの奪取では引けを取っていなかったが、「自陣で奪ったあとのパスが前半ことごとく山形さんのほうに出してしまったのが痛かった」(安間監督)と受け手との間合いが定まらず、相手に有利な条件を与えることになった。
木村勝太からの縦のフィードを左スペースで受けた西川優大がマイナスに折り返し、朝日大輔が2列目で完全にフリーな状態でシュートを打ち込んだのは12分。その2分後には宮阪政樹からのサイドチェンジを受けた中村太が縦に仕掛けてミドルシュートまで持ち込んだ。互いにチャンスをつくりながら、しかし山形が富山を徐々に守勢に回して迎えた27分、GK常澤聡のゴールキックのセカンドが廣瀬智靖によって密集からスペースに送られると、前を向いてそれを受けた小林亮が2タッチ目で浮き球をゴール前へ送った。すでに3バックの間を割って走り出していた比嘉厚平は、ペナルティーエリア内でジャンプして胸トラップ。ややボールが跳ねたのを見た舩津が比嘉との間に体を入れたが、比嘉は入れ替わって足を伸ばし、ゴール左隅に狙いすまして蹴り込んだ。ここ数試合、積極的な仕掛けでゴール寸前まで迫っていた比嘉のJ初ゴールで先制した山形が、前半をリードして終えた。
後半は、つなぎの精度とテンポが改善されたビハインドの富山がペースを握る。敵陣に押し込んだ際には跳ね返りのボールがおもしろいように白いユニフォームに吸い込まれていた。50分には左サイドで起点をつくったキム ヨングンから中へ入れて國吉が裏へ、木村が胸で落として再びキムのクロス。ここまですべてワンタッチでつないで西川をニアに滑り込ませると、53分には相手のパスミスを拾ったソ ヨンドクから朝日を経由し、西川がノープレッシャーでシュート。直後のコーナーキックでは頭から飛び込んだ木村のシュートが、守る小林の頭でコースが変わりクロスバーに弾かれた。
決定機が続くこの時間に富山がゴールネットを揺らすことはできず、流れは徐々に山形へ移る。70分、スローインの流れから秋葉勝が平出の外へ流れた比嘉へパスを送ると、比嘉はキーパーが飛び出せないゾーンへグラウンダーのクロス。混戦でこぼれたボールに伊東が飛び込み、富山が懸命にボックスの外へかき出すとそこに現れたのは秋葉。左足で右方向へ持ち出し、右足でほんの軽く持ち出してから相手の股を通すシュートを放つ。「結構落ち着いて見れば相手のほうが焦ってたり、ゴール前は時間がないと感じることもあるんですけど、意外とあったりというのがある。自分の去年8点取った自信もあった」と時間をコントロールして追加点を奪うと、3点目は74分。相手ボールをつっかけた宮阪から林がキープしながら左サイドヘ展開。この日無双の中村太がまたもドリブルで1対1をかわし、フリーでペナルティーエリアに進入したところで左足を振り抜くと、低く這うようなスピードボールがサイドネット内側に突き刺さった。
富山は朝日が足を痛めたままプレーを続け、交代のタイミングの前に3点目を失ったことが悔やまれる結果となった。78分に投入された木本敬介が何度も右スペースを突き、85分にはこの木本のクロスから木村のヘディングで1点を返したが、反撃はここまで。アディショナルタイムにはゴール前の混戦から途中出場の苔口卓也が反転からのシュートを放ったが、これも枠を外れた。ただし、安間監督は「点数が入ったことによってバランスが崩れるんですが、それを恐れずに点を取りにいってくれたことは、少なからず成長してるかなとは思います」と最後まで勝利の可能性を追求した選手たちを評価した。
「ここ何試合か、低い位置でボールをもらったり、あまり仕掛ける場面が少なかったので、今日は思いきってやってみようと思って、それがいい結果につながった」と中村太。前節は引いた相手を崩すだけの思いきりのいい攻撃を発揮できず、その反省を受けての今節、積極的な姿勢はすべての選手で随所に見られた。守備の選手を2枚代えたところで失点したが、3点差があったからこそ、中2日の次節も見据えてカードを切ることができたととらえることもできる。今季初先発となった西河はここまでベンチ外が多く、試合日には他のベンチ外の選手とともにトレーニングを続けてきた。その西河の試合後の言葉は、「僕なんかがいきなりベンチ外から先発になって、ベンチ外の選手も見てたと思うんですけど、そういう選手に少しでも希望を持たせてあげることができたかなと思います」。山形はプラスのスパイラルに向け、また歯車を回し始めている。
以上
2013.05.04 Reported by 佐藤円
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