首位・神戸をレベルファイブスタジアムに迎えて戦う試合。それは福岡にとって2つの意味を持つ試合でもあった。ひとつは、攻守両面において個の能力の高い選手を揃える神戸に対して、福岡がどの程度戦えるのかということ。変化を続ける福岡の現在地が、どこにあるのかを測る意味で重要な試合だった。結論から言えば、この試合で、福岡は上位陣と伍して戦える力が十分にあることを示したと言える。
チーム全体で相手に覆いかぶさるようにプレッシャーをかけてくる神戸と、ボールに対して激しく寄せて、局面で数的優位を作ってゲームを組み立てる福岡。その手段には違いがあるが、高い最終ラインと、コンパクトなゾーン、そして前線からのハードプレスでリズムを作るという意味では、同じコンセプトを持つチーム同士の対戦。立ち上がりは、お互いに中盤を抜け出せない時間帯が続く。
最初に主導権を握ったのは福岡。16分、金久保順、三島勇太、坂田大輔とつないで最初の決定機を演出すると、ここから神戸を押し込む時間が続く。23分には金久保の直接FKがクロスバーを叩き、そのこぼれ球を古賀正紘がヘディングシュート。35分には城後寿とのパス交換で抜け出した坂田が決定的なシュートを放つなど、ゴールチャンスを演出。守っては、神戸のキーマンであるマジーニョに対して数的優位を作ってチャンスを与えず、個の力を組織の力で抑えた。高い位置からのハードプレスと、奪ってから縦に速い攻撃という自分たちの特長を余すことなく発揮する福岡は、前半を狙い通りの展開で過ごした。
一方、神戸もさすがの力を見せる。前半の主導権を福岡に握られたとは言え、18分、28分、40分と決定機を演出。ワンチャンスがあればゴールに結びつける能力の高さがあることを見せつける。そして、後半に入って主導権を奪い返す。立ち上がりの49分、田代有三が放った決定的なシュートはGK水谷雄一の右手に阻まれたが、ここから個の力で福岡を押し込んで行く。攻撃を作るのはマジーニョ、ポポ、田代の3人。これを田中英雄がフォローする。福岡は個の能力に振り回される時間が続く。
だが、立ち上がりの時間帯を凌いだ福岡が、58分、59分に決定機を作ると、ここから試合は攻め合いの様相を呈していく。個の能力をベースにして攻撃を作る神戸。選手交代で先手を取りながら、組織の力でゴールを目指す福岡。互いが持ち味を発揮して真正面からぶつかり合う展開に、スタンドに足を運んだ5,710人の観客が引き込まれていく。どちらかと言えば、押し込んでいるのは神戸。決定的なシーンでも福岡を上回る。しかし、福岡はGK水谷が1対1の場面で体を張り、ゴールライン手前でパク ゴンがシュートを弾き返すなど気迫あふれるプレーでゴールを守り、城後の最大の特長である裏へ抜け出すダイナミックな動きを利用してゴールを目指す。攻めも攻めたり、守りも守ったり。90分間、緩むことなくゴールを狙いあった両チームは、それぞれが終了間際に「決勝ゴールか」と思わせるシーンを作ったが、結局ゴールはならず。試合はスコアレスドローで終わった。
さて、福岡にとって、この試合が持つもうひとつの意味とは、首位チームを直接叩いて上位進出のきっかけを掴むこと。そういう観点から見れば、チャンスを作りながらも得点を奪えず、そして、サポーターとともに戦うホームゲームで勝てなかった悔しさは残る。「神戸が首位で、福岡が11位という現状を考えれば、悲観するような結果ではないと思うが、我々の目標は、あくまでも今年J1に上がること。それを考えれば、ホームで勝点3が取れなかったことは、すごく残念」と厳しい口調で話したのは古賀。坂田も「引き分けで良かったという雰囲気がチームに生まれてしまったらよくない。勝ちにつなげないといけなかった」と話した。
福岡が、試合を重ねるたびに変化を続けていることは、監督、スタッフ、選手、サポーターをはじめ、福岡に関わる人たちが感じていること。昨シーズン18位に沈んだチームは、確実に成長を続けている。その変化をさらに大きな物にするために必要なものは結果。そして、その結果を積み重ねる先に目指すゴールがある。手応えと悔しさを糧に、福岡は次節・横浜FC戦へと向かう。
以上
2013.05.04 Reported by 中倉一志
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