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【J2:第12節 熊本 vs 水戸】レポート:点の取り合いを制した熊本がホーム初白星で今季初の連勝。水戸の無敗記録は4でストップ。(13.05.04)

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熊本の吉田靖監督はこの試合で、期限付き移籍で加わったばかりの堀米勇輝と橋本拳人を先発で起用。若い2人がきっちりと期待に応えた。
「ペナルティエリアで仕掛けるのが課題だったし、怖い選手になるには、あそこで技術を発揮しないといけないと思っていた」と堀米は言う。キックオフからファーストタッチまではやや時間がかかったが、ボールを持っての仕掛けから、その天性の感覚は見せていた。左利きの堀米が右サイドら中へ入る動きをすることで、サイドバックの筑城和人が攻撃参加するスペースを生み出す等、熊本の攻撃に流動性を生むことを促している。

吉田監督が話していた「守備ブロックが整う前に攻める」という点を意識して、立ち上がりからDFラインの背後を衝く形を狙っていた熊本だが、細川淳矢が戻った水戸の守備もこれに対応。それでも後方からのビルドアップではそれぞれがうまく間に顔を出してボールをつなぎ、水戸のプレッシャーを剥がしながら前に運ぶことによって、熊本が徐々に試合の主導権を握っていった。守備でも前線からのプレッシングに連動して全体がスライド。時折バイタルを開ける場面はありながら、トップの鈴木隆行に入った後でもうまく水戸の攻撃を分断。ボールを奪ってからの切り替えの段階でミスが目立ち、なかなか得点には結べなかった前半ではあったが、43分、仲間隼斗とのスピードを生かしたコンビネーションで抜け出した堀米がPKを獲得。自ら落ち着いて左足で流し込み、熊本が先制する。
「冨田(大介)さんが『右だろ?左だろ?』って言ってきて(笑)。今までだったら動揺してたかもしれないんですけど、自信を持って蹴れば入ると思っていた」と振り返った通り、難しい場面でしっかりと決めたことは、自身の成長を甲府の関係者にも示すことにつながったと言えるだろう。

だがプレビューでも触れたように、ゲームはこのままでは終わらなかった。決して熊本が守りに入ったわけではない。しかし「2点取れるチームになっている」(前節終了後の柱谷哲二監督コメント)水戸が後半に入って流れを引き戻したのは、前半から積極的にゲームを進めた熊本が、「運動量が落ちて、アプローチに行けずにラインが下がってしまった」(吉田監督)ことも関係している。

まず55分、左でボールを受けた橋本晃司が中央の内田航平へとつなぎ、内田が鈴木へ縦パスを入れると、そこへサポートに入ったのはバイタルエリアを横切ってきた橋本。DFに身体を預けながら流した鈴木からのパスを受けて右足を振り抜いた橋本のシュートは、ファーサイドのネットをきれいに揺らした。これで1−1。さらに69分、今度も鈴木、橋本、さらに難波宏明とボックス付近でつなぎ、オフサイドラインぎりぎりで抜け出した小澤司がGK南雄太の動きを見て鮮やかなループ。ハーフタイムに「ドリブルだけでなくコンビも使っていこう」という監督の指示を受けた水戸が、複数が連動して絡む形で熊本のディフェンスをしっかりと崩し、逆転してみせたのである。

だがこのリードによって水戸の選手たちに若干の気の弛みが生じたのを、熊本も逃さなかった。直後の70分、相手のクリアミスから左へ展開すると、堀米と代わった藤本主税が収めて仲間へ。仲間は相手選手3人をひきつけたところで、フリーでサポートに入った養父雄仁へ柔らかいパスを送る。「DFに当たらないように、枠に飛ばすことを意識した」という養父は、右足アウトにかけてダイレクトでミドル。抑えのきいたシュートがGK笠原昂史の反応から逃げる軌道を描いてネットに突き刺さり、あっという間に熊本が追いついた。

さらに熊本の攻勢は続く。原田拓を下げて前線に高さのある坂田良太を入れたことでターゲットが増え、両サイド深い位置までえぐる場面を作ると、78分に得た右からのコーナーキックで、養父からのボールに矢野大輔が飛び込んで3−2と逆転。流れの中でも執拗に駆け引きを繰り返していた坂田が相手DFをうまく抑えたことで、矢野がほぼフリーで飛び込める状況になっている。

追いつかれて逆転されながらも、追いついて突き放すという展開で再びリードを得た熊本は、長崎戦や愛媛戦で得た教訓、すなわち終盤に失点して勝点を失うという経験を踏まえて藤本らがゲームを落ち着かせ、アディショナルタイムもしのぎきった。ようやく訪れたホームでの今シーズン初勝利に、ここまでチームを支えてきたサポーターはもちろん、熊本のスタッフにも笑顔が浮かんだ。

敗れた水戸にとっては、「一時リードしながら逆転負けするというのはショッキングな状態」(柱谷監督)なのは確かなのだが、それでもリードした後の運び方について「今日気づけて良かった」(小澤)のもまた事実。何より、後半に入って立て直し、しっかりとしたコンビネーションから崩した攻撃が、チームの成長を証明している。柱谷監督が話したように、「クオリティを上げて」さらに得点を重ねられるようにすること、くわえて失点場面の修正を施せば、プレーオフ圏内へと浮上するポテンシャルは十分あると見ていい。

連勝を飾った熊本も、今まで少なかったPK、ミドル、セットプレーからと、2試合連続の3得点で攻撃に勢いは出たものの、後半に押し込まれたことや2失点につながった守備の脆さは改善が不可欠。とは言え、ホームである程度やろうとする形を出せたこと、そして何より結果を出したことはチームにとって大きなプラスとなる。ホーム初勝利に安堵の表情を見せた吉田監督も、「安定したゲーム運びをして勝ちきれるようにならないと、なかなか上位にはいけない」と、気持ちは既に次へと向いている。

中2日で乗り込むのは、過去5シーズンでもいまだ未勝利の鳴門・大塚スポーツパークポカリスエットスタジアム。苦しい時期を乗り越えても、まだまだ歩みを止めるわけにはいかない。

以上

2013.05.04 Reported by 井芹貴志
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