公式記録を見ると、前半と後半で別のゲームとなっていることがわかる。シュート数が、前半は松本の2本に対し群馬は5本、変わった後半は松本が8本、群馬は2本だ。この数字のとおり、前半にリズムを掴んだのは群馬、後半は松本が主導権を握った。
前節に徳島から4得点をあげて快勝している群馬は、その勢いを持続したままアルウィンに乗り込んできた。9分にはフリーキックのチャンスを得ると、横山翔平のキックを空中戦に競り勝った増田繁人が合わせてゴールネットを揺らすがこれはオフサイドの判定で松本にとっては命拾いとなったものの、30分に試合が動く。自陣でボールを持った青木孝太がそのまま眼前に空いていた中央のスペースを一気に独走。最終ラインの枚数こそ足りていたものの、右サイドでパスを受けた平繁龍一が多々良敦斗のマークをフェイントでかわし、左足を振り抜く。これが松本ゴールに突き刺さり、お手本どおりのカウンターで先制に成功する。群馬はその後も高いキープ力と裏に抜ける動きで魅せる平繁を中心に幾度か得点機を作り出す。対する松本はなかなかセカンドボールを拾えず、長沢駿が「攻撃が少し単調だった」と唇を噛むように、ロングボールは増田と中村英之の両センターバックがしっかりとケアすることで効果的ではなく、カウンターもボールを簡単に失う場面が多く不完全燃焼。前半の45分間を見る限り、“自分たちのやりたいサッカー”が出来ていたのは、間違いなく群馬だった。
エンドが替わった後半、ここで状況を打開すべく反町康治監督が早めのカードを切る。連戦での疲労も考慮し、後半頭から楠瀬章仁に代えて北井佑季を、62分には鐡戸裕史に代えてパク カンイルを投入。前への推進力を持った2人が前線をリフレッシュしたことで、「1時から1時45分までは昼寝していたが、2時から目を覚ました」(反町監督)展開となる。守備でも中盤で積極的にボールホルダーに球際強く当たることで群馬の攻撃の芽を早めに摘み、流れを完全に引き戻すと、66分に待望の同点弾が生まれる。ボールをキープする北井の外側を追い抜いた川鍋良祐が攻め上がりクロスを上げると、ニアの長沢が群馬ディフェンダーを引き付けてスルー。ファーの位置にはパクが詰めていた。頭で押し込んだパクのJリーグ初得点で試合は振り出しに戻った。その後、お互いに勝ち越しを狙って積極的に仕掛けたが、松本は70分に北井、90分には塩沢勝吾が決定機を逃せば、2度の警告を受けた黄誠秀の退場で1人少なくなった群馬も守備に時間を割かれてゴールを上げることは叶わず、勝点1の痛み分けという形で終わった。
この日、殊勲のJリーグ初ゴールをあげたパクは、試合後に「得点は嬉しかったが、勝てなかったことは残念」と謙虚に語ったが、韓国から試合を見に来日しているというお母さんとお姉さんに自らの活躍を誇示出来たことは、今後の更なる飛躍への収穫となったはずだ。
以上
2013.05.04 Reported by 多岐太宿
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