前半と後半で試合の流れが一変。札幌は5日前のホームゲーム同様に、前半こそ主導権を握りながらも、逆に後半は相手に握られてしまい、結果としても敗れてしまった。
前述の通り、立ち上がりからペースを握ったのはホームの札幌。前後だけでなく左右もコンパクトに保つ京都に対し、横幅を意識した攻撃を展開。中盤の底でプレーする上里一将、深井一希が素早くサイドにパスを散らすだけでなく、ときには右サイドバックの上原慎也も一気に逆サイドへとパスを広げる場面もあるなど、横の動きからチャンスを見出していった。そして、そうやって横の動きを京都に意識させておいて、スピードのある榊翔太が相手のDFラインの背後を強襲。京都のDFラインはプッシュアップの途中で、ラインをピタリと止める場面があるため、そこを狙っていったのだろう。14分には横パスとのコンビネーションからその榊が飛び出して好機を演出している。ホームの大声援を背に、勢いもあった。
この前半については京都の大木武監督も「ウチが悪かったというよりも札幌さんがすごく戦ってきたというか、セカンドボールに対しても球際に対してもしっかりプレーしてきた」と札幌のパフォーマンスを賞賛している。
だが、これもまた前述したように、後半に入るとその流れは完全に逆流してしまう。そしてその大きな要因となったのは、大木監督が前半終了間際に投入した山瀬功治の戦術眼だった。
山瀬はこう振り返る。
「前半はベンチから見ていて、ちょっと後ろに重たいように感じていた。また、2トップも孤立しているような感じもあったし、相手のプレスにうまくハマってもいた」
「後ろに重たい」というのはシステムのバランスにしてもボールの保持位置にしても、どちらも後方にあったということ。それを解消すべく31歳のMFは中盤でシンプルにボールを動かしてバランスを整えていく。また、守備的MFとして投入されながらも、攻撃陣には自らの判断でトップ下の位置にポジションをとって2トップをフォロー。札幌の積極的なプレスに対しても、ドリブルも織り交ぜながら素早くパスを散らして相手の体力消耗を誘った。そうやって、試合のバランスは徐々に変化をしていったのである。
これら一連の山瀬の活躍も含め、大木監督は後半について「安心感のあるゲームになった」と振り返る。流れを完全に奪い返し、66分にはリスタートから安藤淳が巧みにシュートを決めて、これが決勝点となる。
こうして試合の流れを見ていくと、前半は相手に握られていた主導権を、京都がベンチワークにより奪い返し、見事に勝利したと感じ取れる。だが、実際にはそれ以外の要素も存在していたことにも着目したい。
試合後のミックスゾーンで札幌の選手の言葉を拾っていくと、「チャンスでしっかり決めていれば」「全体的には、そんなにやられた感じはしないが、ちょっとした隙から失点してしまった」といった類のものがいくつもあった。だが、これは今シーズンのこれまでの試合でも、何度も聞かれたものだ。
前者については、確かに筆者もそう思う。シンプルにボールを動かしながら全体が前へと進み、ディフェンスラインもしっかりと押し上げられる。アタッカー陣も積極的に仕掛けており、悪くないゲームを演じていたと思う。ただし、失点について言及している後者のコメントだが、この試合の失点は選手交代を行ったタイミングでホンの一瞬、集中を欠いてしまった場面で起きたもの。これはもう、ナイーブな失点の仕方と言うしかない。今シーズンの札幌は若い選手のフレッシュさが全面に出ているものの、その一方で、チャンスを生かしきれなかったり、この失点のように経験不足がモロに出てしまっている試合がいくつもある。こうした課題が今後、どのように改善されていくかという部分は、非常に興味深いところである。
ただし、である。ならば京都のほうは完全に狙い通りに、狡猾に試合を運んだのかと言えば、必ずしもそうとは言い切れない。なにしろ、試合の流れを一変させた山瀬の投入も、前半終了間際に中山博貴が負傷するアクシデントがあったから。もしそれがなければ後半も札幌が主導権を握り続け、ゲームを制してしまった可能性もあるわけで、そのアクシデントは試合の大きなアヤと言って然るべきだろう。
サッカーというのは“経験不足”などといったロジックがそのまま結果に直結してしまうこともあれば、アクシデントが結果を大きく歪めてしまうこともある、まったく先の読めないスポーツであるということが、あらためて感じられた一戦だった。
以上
2013.05.04 Reported by 斉藤宏則
J’s GOALニュース
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