勝点3をたぐり寄せたのは、またしても交代選手だった。前節の北九州戦に引き続き、松田浩監督の采配が冴え渡り、切り札のサビアが岡山との上位決戦に終止符を打った。チーム得点王のサビアは6ゴール中5ゴールを途中出場でマーク。無類の勝負強さを誇る、まさに至高のジョーカーと言える存在だ。「途中から試合を決められる選手がいることは大きい」とは菊岡拓朗。その言葉はサビア以外にも、決勝弾の起点となった三都主アレサンドロにも当てはまる。負けず嫌いのベテランは常にスタメンで試合に出ることを欲しているが、それが叶わなくともモチベーションが低下することはない。こんな思いがあるからだ。
「(先発で)試合に出ていない時に与えられたチャンスの中で、いかに結果が出せるか。ただ怒っているだけでは自分もチームも損をする」
肝心なことは巡って来たチャンスを逃さないように、日々の努力を怠らないことだ。岡山戦の前々日の全体練習後、三都主は最後の最後まで居残り、黙々とFKの感触を確かめていた。常に万全の状態で試合に挑めるコンディション作りとその姿勢が、サブの選手達のモチベーション維持と向上に繋がっているのは言うまでもない。クラブが望んでいた波及効果は、はっきりと目に見える形で現れている。「サブが勝負を決めるチームは一番ややこしい、やりにくいチーム」。経験則から指揮官がそう語った集団へと、栃木は変貌を遂げつつある。
「ある程度、耐えてボールを回して、0で折り返せたのはプラン通りだった」
菊岡は前半をそう振り返った。先手を取られないことを第一に試合を進めたのは、先行された場合に引いた岡山の守りを攻め崩すのが容易ではないからだ。だからといって、栃木は守備的になったわけではない。高い位置でボールが奪えると判断した時には果敢に前に出たし、ボールを走らせることで相手の体力を削ぐプランを忠実に実行した。岡山の切り替えが速く、栃木のカウンタースピードが上がらなかったこともあり、流れの中から決定機こそ作れなかったが、狙いとする戦い方はできていた。一方の岡山もワイドにボールを運び、ファジーな位置で荒田智之が起点を構築し、そこからコンビネーションで崩しにかかる、意図のある攻撃を仕掛けることができた。ところが、「最後のシュートの所、クロスに対して飛び込んで行く所はことごとく弾かれてしまった」(影山雅永監督)。特に前半37、38分にペナルティエリア内で放ったシュートを、チャ ヨンファンが身を挺してブロックしたシーンが象徴的だった。チャンスは作ったが、栃木の高い集中力と体を張った守備に阻まれてしまう。
「油断せず後半に入ろうとしたが、栃木の出足が前半に比べて速くなり、そこで先手を取られてゲームの流れを持っていかれた」と悔やんだのは田所諒。後半3分、素早い攻守の切り替えから廣瀬浩二がポスト直撃の一発を放ったのを皮切りに、栃木は岡山のDFラインの背後に働きかけられるようになった。岡山の足が鈍り始めたのとは対照的に、栃木はカウンタースピードが上がる。サイドチェンジを駆使しながら左右のサイドから攻め入り、ついに後半41分に均衡を破った。三都主の右クロスをクリスティアーノが胸で落とし、サビアが冷静にゴールネットを揺らした。岡山も前線の選手を入れ替えながら活性化を図ったものの、得点の匂いがする形を生み出すことは叶わなかった。
開幕からの無敗記録が11で途切れた岡山。前節の神戸戦で喫した3失点同様、一瞬のスキが痛恨の失点を招いてしまった。「そういう小さいものが強い相手とやると失点に繋がる。もっともっとそういったものをクリアにしていかないといけない」と影山監督が言うように、勝負所でのディテールを詰める必要があるだろう。敗れはしたが岡山の試合内容は悲観するほどではなく、無敗が断たれたことに関しても「負けたからと言って死ぬわけではない」と田所が言えば、荒田も「次に負けないこと、勝つことが一番」と既に気持ちを切り替えていた。ズルズルと順位を下げないためにも、ホームに戻った一戦で連敗だけは回避したい。
連勝を4に伸ばした栃木は順位こそ変わらず4位だが、首位・神戸との勝点差を2つ縮めた。次節は愛媛と鬼門のニンジニアスタジアムで、累積警告によりパウリーニョを欠いた状態で対戦する。昨年、パウリーニョ不在時の勝率は芳しくなかった。今後も累積、あるいは怪我等によりキャプテン不在の試合は必ず出てくるはずだ。幸い、今季は7節の富山戦でパウリーニョが途中交代を余儀なくされたが、その穴を中野洋司が見事に埋めて逆転勝利を収めている。今度の愛媛戦でも総合力が問われることになるが、誰が出ても遜色ないことを証明し、ゴールデンウィーク3連戦を3連勝で締めくくりたい。
以上
2013.05.04 Reported by 大塚秀毅
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