プレビューでも記した通り、鳥取のJ2昇格後のリーグ戦対戦成績が徳島の4戦全勝、しかもすべて完封勝ちという、このカード。今回も相性の良し悪しは変わらず、またしても徳島が完封勝利を収めた。
鳥取はこの日、布陣をそれまでの4−1−4−1から、徳島と同じ3―4―2―1に変更。これは「布陣を変えて、相手とマッチアップするような形で戦う」(小村徳男監督)狙いに加え、徳島に続いて富山、岡山と、これまで苦手としてきた3バックのチームとの対戦が続くことを見据えたものでもあった。小村監督が「良い形でボールを奪えていたと思う」と振り返った通り、この変更は的中し、徳島の3バックからのパス回しに対し、1トップ2シャドーが先頭を切ってうまくプレッシャーをかけ、ミスを誘発するなどしてボールを奪い、主導権を握った。
鳥取の3バックは、中央がセンターバックの柳楽智和で、右のストッパーには、前節まで右サイドバックだった尾崎瑛一郎が入り、左のストッパーは、前節に初めてセンターバックでプレーしたばかりで、それまではサイドハーフやボランチ、左サイドバックでプレーしてきた森英次郎が務めた。前節のG大阪戦で、オーバーラップから久保裕一の先制点をアシストしている尾崎は、この日も機を見て攻撃に参加。18分には右アウトサイドの三浦修の外を回ってパスを受け、センタリングを送るなど、サイドアタックにも積極的に顔を出した。
ただし、鳥取は良いリズムで攻めたものの、ゴールが遠かった。前述の尾崎のセンタリングで得たCKを、尾崎自身がファーサイドに蹴り、田中雄大がペナルティーエリア外から左足ボレーで狙った決定機は、惜しくも左ポストに当たって決まらず。この他は、ボールを奪った後の最初のパスが乱れたり、リスク回避のロングパスが中心で単調になったりしたこともあり、良い形をつくることができなかった。
だが徳島は、鳥取以上にゴールが遠かった。開始2分に敵陣深い位置でのスローインをつなぎ、アレックスが右足で放ったシーン(左に外れる)が、結果的に前半唯一のシュート。GKも含めて後方の味方を使いながらパスをつなぐことはできるものの、効果的な縦パスを入れることができず、良い形で敵陣に入っていけない状態が続いた。
この流れは後半も続き、「なかなかタイミング良くボールが回るところまでいかず、最終ラインとボランチのところまではいくけど、その前に入れるボールが引っかかったりした」と小林伸二監督も語ったように、良い形になりかけるたびに鳥取の守備網に引っかかり、局面を打開することができない。結局、2本目のシュートは71分、交代出場した花井聖が、約30メートルのFKを直接狙ったシーン(クロスバーの上に外れる)まで待たなければならなかった。
対する鳥取も、後半は前半以上にゴールに迫る回数が増えたものの、得点を奪えないままだった。久保のポストプレーからの両サイドへの展開や、セットプレーから相手を脅かしたものの、決めることができない。72分には廣田隆治のセンタリングを、ファーサイドでマークを外した久保がヘッドで合わせたが、わずかに左に外れた。
そうするうちに残り15分を切ってから、徳島がそれまでのショートパス主体から、前線のスペースへのロングパスを使って良い形を作り始めた。83分にはペナルティーエリア付近で相手のクリアを拾った柴崎晃誠が、左足で惜しいシュートを放つ。ショートパス主体ゆえに鳥取にうまく対応されていた、それまでの攻撃から一転、相手を上下に揺さぶってゴールに迫った。
迎えた84分、徳島は相手のカウンターを止めに入った大久保裕樹が、クリアのような形で前線にロングパス。「とりあえず(プレーを)切らないように、相手の裏に、というイメージはありましたけど、あそこに走っているとは知りませんでした」と振り返るプレーに反応し、ちゃんと走っていたのは、津田知宏だった。ディフェンスラインの背後に抜け出してフリーとなると、右足でネットを揺らし、ついに先制点。「前半は相手のラインがしっかりしていたのと、両チームともバタバタしていたので、なかなか裏が取れなかった。でも、長島裕明ヘッドコーチから『今日は絶対に最後に1本来る』と事前に言われていて、狙い通りにそれが来て、決めることができてよかった」と振り返る、ワンチャンスを生かした値千金のゴールだった。
結局、その後の鳥取の反撃もしのいだ徳島が、1―0で勝利。シュートは計4本、枠内シュートは1本のみながら、その1本を物にして、今季2回目の完封勝利を収めた。小林監督は「厳しい時間帯、ゴール前で体を張ってくれた」と評価しただけでなく、「ただ、その前のサイドのところではアプローチが甘いので、良いボールが入ってきていたので、もう少しきっちりいく必要がある」と付け加えたものの、波に乗り切れていなかったチームにとっては、この上なく大きな勝利。ショートパスとロングパスの使い分けなど、攻撃の課題も残すとはいえ、次節のホームゲーム、熊本戦に向けて、大いにはずみのつく勝点3となった。
鳥取は、G大阪とアウェイで引き分けた前節から引き続き、守備の良い流れを持続。「引き分けでも、もったいないと思っていた」という奥山泰裕のコメントも、うなずけるほどの内容だったにもかかわらず、勝点1すら得ることができなかった。「勝ちにつなげれば自信になって、これから戦っていく上で、チームも個人もステップアップしていけると思うけど、そこで勝てないのが弱さ。内容は悲観するものではないけど、そういうことを、自分自身もちゃんと理解して次の試合に臨まないと、同じことを繰り返すことになる」と振り返ったのは、尾崎。手応えをつかんだがゆえに、それが結果につながらないこと、このままでは昨季同様の残留争いを強いられかねないことへの危機感が募る敗戦となった。
以上
2013.05.04 Reported by 石倉利英
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