内容が良くないときは全員で辛抱強く戦って結果が出ていたが、逆に内容が良くなったら、どこかにスキが生じて勝てなくなってしまう。サッカーの世界では良くあることが、今回は4月負けなしの清水が同じ轍を踏んでしまう結果になった。
守備の要であるカルフィン ヨン ア ピンが負傷欠場した清水は、代わりに杉山浩太をセンターバックに下げ、ボランチを竹内涼と村松大輔のコンビにしてスタート。そのマイナーチェンジは、少なくとも攻撃面に関しては大きなプラス効果をもたらした。
杉山がDFラインでしっかりとボールを落ち着かせ、機を見て前線に的確なフィードを送ることによって新潟のDFラインに対するバレーの恐さが増し、「前半はバレーのポストプレーに対してちょっと恐がりすぎてDFラインが下がってしまった」(大井健太郎)という状況に。そうなると中盤のスペースが広がり、竹内の持ち味である縦パスやサイドチェンジが大いに生きてくる。
竹内自身も、自分がもっとも得意とするポジションでリーグ戦初先発(今季)を果たし、プレーが冴えわたった。相手に寄せられても落ち着いてプレスを外しながらフリーの味方にボールをつなぎ、スルーパスを出すタイミングもボールのペースも絶妙。そこから新潟ゴールに迫る場面を数多く演出した。チーム全体としても冷静なパス回しが見られ、相手陣内深くまでボールを運ぶ場面を、今季のリーグ戦の中ではもっとも多く作ることができた45分間だった。
しかし、最後のゴール前での工夫や精度はまだもうひとつ。セットプレーでも、自分たちの課題として集中力高く守る新潟のスキを見出せず、前半のシュートは5本。ここはまだ物足りない数字だ。「前半は1本縦パスが入ったら、そこにみんなが反応して、そこから落として誰かがサイドを変えたりというプレーができていた。そういう良い流れのうちに点を取れなかったのは残念でした」(竹内)というのは、スタンドで観ているファンも強く感じたことだった。
ただ、その流れを後半も継続できていれば、必ず点は取れるという雰囲気もあった。それができなかったことが、この試合でもっとも悔やまれる部分かもしれない。
新潟のほうも、「前半は、少し前に急ぎすぎたり、落ち着きがなかったりしてイージーミスが多く、守備でもマーキングがルーズなところが見られて、危ない場面を何度か作ってしまった」(柳下正明監督)という部分をしっかりと修正。中盤でボールを失う場面が少なくなれば、DFラインも上げやすくなり、守備もコンパクトになって早いプレッシャーをかけられるようになる。前半28分に投入されたケガから復帰の田中達也も徐々に動きが良くなり、前線でボールを引き出して起点を作っていく。それらが良い循環をもたらし、流れを自分たちのほうに引き寄せていった。
そして後半7分の右スローインの場面で、清水の集中力が一瞬欠けたスキをついて右サイドのスペースを崩し、リーグ戦出場2試合目の川口尚紀(18歳)が絶妙なクロスを送る。そのボールに対して、リーグ戦では今季2度目の先発となった川又堅碁が完全に競り勝って、うれしいJ1初ゴール。ここまで辛抱強く戦ってきた新潟に大きな先制点をもたらした。
自分たちの良い流れのうちに点が取れず、逆に相手にはワンチャンスを生かされて先制点を奪われた清水。この失点で少し浮き足立ってしまったのは、やはりチームの若さなのか。その6分後には、相手ロングボールの処理を誤り、セカンドボールからズルズルと攻め込まれて、最後は成岡翔に冷静な左足シュートを決められてしまう。この2失点目は、4月の試合では見られなかったような淡泊な守備になってしまい、結果的にこれが決勝点になってしまった。
その後、2点のビハインドを背負った清水は、焦りから前半のような余裕がなくなり、縦に急ぐ形が増えてしまう。それに対して新潟は、金根煥と大井のセンターバック2人が空中戦の強さを発揮して、つけいるスキを与えない。清水が後半33分に瀬沼優司を投入し、パワープレーを仕掛けてきても、2人のセンターバックはハイボールを確実に跳ね返し続けた。
それでもホームで負けられない清水は最後まで必死に攻め続けたが、後半39分にセットプレーから平岡康裕が一矢報いるのが精一杯。リーグ戦ではホームで3敗目を喫し、1万6千人を超えた観客の8割以上を締めた清水ファンを喜ばせることができなかった。
アウェイで今季3勝目を挙げた新潟としては、劣勢から自分たちの力で流れを取り戻していって勝てたという意味でも、非常に自信になる1勝。出場機会を得た川又と川口が結果を出したことも大きな収穫だった。
逆にホームでなかなか勝てない清水のほうは、ゴール前の迫力を増すためにハーフタイムで河井陽介を交代させたことも結果的に裏目に出る形となり、前半に輝いた竹内も後半はあまり生きなくなってしまった。今回のような負け方は「サッカーではよくあること」と言ってしまえばそれまでだが、本物の強さを獲得するためには、こういう試合は減らしていかなければならない。
以上
2013.05.04 Reported by 前島芳雄
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