相手の得点より多ければ勝者になる。裏を返せば、相手より失点数が少なければ勝者になる。サッカーでは、得点をあげると相手には失点が記録される。1点でも相手を上回ればいいのである。

今節まで、4試合で10得点をあげている鳥栖。昨季までの『堅守』のイメージは薄れている。攻撃力が増した要因の一つに、サイドからの攻撃が機能していることがあげられる。金民友、水沼宏太の元気者2人に加え、丹羽竜平、呂成海とサイドDFの攻撃参加回数も多い。サイドからのクロスが入る回数が増えればその分だけゴール前でのシュート機会が増える。その機会を決めてくれる選手＝豊田陽平が鳥栖にはいる。
これだけではない。セットプレーからの精度あるキックも備えている。藤田直之のピンポイントキックは、豊田や小林久晃、呂などの高さに強さを持つ選手たちに合わせられている。これに今節はＣＢ金正也が加わりそうだ。

対する清水は、4試合で12失点と苦しんでいる。前節の広島戦では、開始14分に失点してしまい、立て直すすべもなくその後3失点を喫してしまった。広島の攻撃も褒めるべきだとも思うが、早々の失点で流れを悪くしてしまうのは、若きチーム故なのかもしれない。攻撃である程度の形を作ることができれば、流れを引き寄せるチャンスも訪れるだろうが、サイドでボールを回してもゴール前での“あと一本”が打てていない。これも、広島の流れるような攻撃の対応に追われてのことだった。

となると、鳥栖の元気なサイド攻撃と中央での強力なフィニッシャーへの対応に清水が追われる展開になるのか……と、簡単に言えないのがこの組み合わせである。
鳥栖は、今節までの失点数はワースト3位と、得点力の陰に守備でのまずさを見せている。両サイドの奥深くまでを使われてのクロスからの失点と、セットプレーからの失点が目につく。逆に、清水は河井陽介が左サイドで起点となるシーンが目立つ。シュートこそ少ないもののＦＷバレーがボールに触れる機会が増えている。試合をこなすたびに、ゴトビ監督が目指すサッカーが形となって徐々に表れているようだ。

今節までの結果を見ると、“鳥栖が攻めて清水が守る”シーンが多いように感じるが、実際は“両サイドの攻防から少ないチャンスを決める”試合となるだろう。この試合では、両チームの左サイドに注目しておいて欲しい。

ゴールは、“サッカーの華”と言われる。
サッカーを志したものは、一度ならずともエースストライカーに憧れたのではないだろうか。
（恥ずかしながら、筆者は今でも気づいた時にはゴール前でボールを待っている）
でも、サッカーの醍醐味はゴールに至るまでの過程にあることも忘れてはならない。
花を生けるときには、葉や茎、それを取り巻く空間も一緒に生けるそうである。
サッカーの華を楽しむならば、その過程も楽しんでいただきたい。
サッカーは、ボールがないところでもプレーが行われているのだから。

以上

2013.04.05 Reported by サカクラゲン