J１リーグ開幕戦で勝利を挙げたチーム同士の対戦となる。Ｆ東京はアウェイで大分に２−１で逆転勝ちを収め、柏はホームで川崎Ｆを３−１で沈めた。２０１３シーズンのスタートダッシュを飾るのはどちらか。

Ｆ東京は昨季、柏と３度対戦して１度も勝利を挙げられていない。柏の前線からの守備と、ブロックを組んで守りきる守備の双方に手を焼いた。攻め残るレアンドロ ドミンゲスを捕まえ切れず、結果的に起点をつくられて失点。その堂々巡りを続けてしまった。今季は、そこから数段レベルアップした相手をホームに迎えることとなった。柏は今シーズン、しっかりとした土台の上に新戦力をうまく融合させた印象が強い。まず、なんといってもFWクレオだろう。早速チームにフィットし、ACL貴州人和戦で決勝ゴールを挙げ、川崎F戦でも２ゴールを決めている。そして昨季、Ｆ東京のアジア挑戦の夢を砕いた男でもある。屈強なフィジカルに加え、足元の技術も確かだ。ただでさえレアンドロ ドミンゲス、ジョルジ ワグネルといったリーグ屈指のタレントが控えている上に、クレオまで加わった攻撃力は迫力満点だ。キム チャンスと鈴木大輔を補強した守備陣もより強固な陣容となった。橋本和が負傷離脱中だが、左サイドバックに入った増嶋竜也がその穴を埋める。右サイドのキムを高く押し出し、状況に合わせて４バックと３バックの使い分けも可能だ。

Ｆ東京の高橋秀人は「柏は勝利のメンタリティーと呼ばれるものを持っているチーム。そういう部分を僕らも身につけなければいけない」と言う。だからこそ「ここで勝たないと駄目。今年はそれぞれが優勝という言葉を使っているが、普段言っていることが試される。ふがいないゲームだけはできない」と続けた。

Ｆ東京は、東慶悟と李忠成が青赤のユニフォームを着てのホームデビュー戦となる。「これまでと違う東京を見せられる」（李）という言葉がこの試合の勝利を引き寄せる鍵となる。先発出場が濃厚な東は開幕戦の大分戦でつなぎ役とフィニッシャーの両方を演じるマルチロールぶりを見せた。東は「（プレーが）楽しみ。大分との試合をいい形で終えられたし、今は早くまた明日が来て欲しいと思っている」と語る。受けてよし、飛び出してよし、さらに守ってよしの東が周囲の力を引き出しつつ、自分の色を出して東京の攻撃力を倍加させたい。

李も開幕戦で途中出場を果たし、数度決定機に顔を出すなどらしさを見せている。途中出場の可能性が高いが、９年前のプロ１年目でデビューすることができなかった舞台に立つことはほぼ間違いない。その相手が柏ということも因縁深い。柏の選手たちとは旧知の間柄だが、恩返し弾と勝利を誓った。「在籍期間も長かったし、知っている選手もたくさんいる。好きな相手だからこそ、負けたくない。勝ちたいし、点を取りたい」。

開幕前から取り組み続けた中央を閉める守備で、柏の絶対的なキーマンであるレアンドロ ドミンゲスから前を向くスペースを奪えるか。そして、積み重ねてきた連係で柏の守備を崩しきることができるか。勝利はその２つの課題の先に転がっているはずだ。

ランコ ポポヴィッチ監督は「ホーム開幕戦には、少なくとも３万人の来場を期待している。もしも近くにまだ行くかどうか迷っていて決断していない人がいるのなら、その人に足を運んで欲しいと伝えて欲しい」と言う。少なくとも、この２チームの対戦は見るだけの価値はある。

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2013.03.08 Reported by 馬場康平