手応えと課題が同居する開幕戦だった。湘南は前節、敵地で横浜FMに挑み、2−4で敗れた。立ち上がりから攻守ともに前向きな"らしさ"を発揮し、主導権を握った。フリーキックによって先制点こそ許したが、キリノのゴールですかさず追いつき、後半には再びキリノが巧みに沈め、逆転にも成功した。オフサイドにこそなったものの、時を待たずして武富孝介がさらにゴールネットを揺らしたことも、いかに自分たちのリズムをつくれていたかを示している。およそ70分間は確かに湘南に傾いていた。
だが以降、横浜FMの選手交代による前線の活性化もあり、次第に後手を踏むようになる。「J1は個の力で崩してくる印象。終盤は僕らの対応がすこしずつ遅れてしまった。しっかり集中し、90分トータルで守りきらなければいけない」3バックの一角を担う島村毅は振り返り、課題を口にした。
思い出されるのが柏と対峙した昨季の天皇杯3回戦である。らしく攻撃的な姿勢から先制し、流れを呼び込みながら、試合終了間際に決勝点を奪われた。リーグ戦とは異なるとはいえ、J1のチームの、90分で勝ちきる力強さを思わされたものだった。
いかにトータルで勝点3に結ぶか。湘南にあっては、それは序盤から走力を加減したり、終盤に余力を残そうとしたりする戦いを意味しない。勝利の確率を高めるうえで、挑戦者たちのギアはキックオフからトップに入っていなければならない。そのうえで鍵となるのは精度だ。高山薫は言う。「パスを繋がれているところで奪う回数をもっと増やし、攻撃を展開して、相手を苦しませる時間を増やしたい」。曹貴裁監督が語る両ゴール前をはじめ、精度の研磨はこれまでもこれからも、取り組み続けるテーマである。
対する鳥栖は前節、ホームに鹿島を迎え、1−1と引き分けた。前半にセットプレーから先制点を許したものの、後半に入り、豊田陽平が同点ゴールをねじ込んだ。勝利こそ手にできなかったが、優勝候補と目される強敵に先制されながらも追いつき勝点1を掴んだこと、そして昨季リーグ2位の19ゴールを挙げたエースに初戦でゴールが生まれたことは、J1でのさらなる躍進を図るうえで好材料といえるだろう。
昨季5位の成績を収めた彼らについて、湘南の曹監督はこんなふうに印象を語っている。
「自分たちはこういうサッカーをやっていくんだという意志を感じるし、チームとしてのスタンダードを選手たちが一生懸命取り組んでいると見ていて思う。鳥栖さんはJ1に上がってさらにパワーアップされたし、うちも学ばなければいけないチームだと思っている」
絶え間ない運動量をベースに、豊田を柱として連動し、ゴール前も堅い。先日、韓国代表に選ばれたハン グギョンは、尹晶煥監督へのリスペクトを語りつつ、「うちと同じく走るチーム。その意味ではマリノスよりも手強いかもしれない。当然ですが、勝つために一人ひとりが役割をまっとうしなければならない」と引き締めた。最終ラインを統率する大野和成も、「初戦に負けてしまったので、引きずらないためにも次は大事。最後までいいラインを保ちたい」と語る。
開幕戦では決定機を重ね、昨季リーグ最少失点を誇った堅陣から2点を奪った。背景では持ち前の守備の連動を発揮し、こと前半においては相手にほとんどリズムを与えていない。課題も手応えも、いずれ違わぬ糧となる。
曹監督は語る。
「横浜FMを相手に2点目、3点目のチャンスをつくれたことは、去年を含めて選手たちの取り組みの成果。力強さでは昨季の開幕戦よりも上回っていた。オフサイドになった場面も僕はいいゴールだったと思っている。あのようなシーンを今後さらに増やしていきたい」
思えば3年前、J1第2節に横浜FMと対戦した際は0−3、シュートも相手の29本に対し6本と、内容、結果ともに大差をつけられた。時を経て、湘南は自分たちのスタイルを築き、今季加入した新たな仲間とともによりたくましくピッチに映しつつある。内容だけでなく、つぎはシートにその進化を刻みたい。
以上
2013.03.08 Reported by 隈元大吾
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