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【J1:第1節 大宮 vs 清水】レポート:冷たい強風下の激闘。2点リードの大宮、清水のパワープレーに捕まる(13.03.03)

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春一番が吹いて暖かかった前日とは一変し、日差しは強かったが冷たい北風が吹き荒れた。NACK5スタジアム大宮では、隣の野球場から巻き上げられた砂埃まで運ばれてくる始末。互いに2ゴールずつを挙げて勝点1を分け合ったが、試合を動かしたのは、選手たちを終始苦しめた強風によって生じたエアポケットだった。

風は基本的に北西から南東方向に吹きつけていたが、ピッチ上ではそれほど一定ではなかった。通るはずのサイドチェンジが届かなかったり、押し戻されたボールが競り合いを準備する選手たちの手前に落ちたり、思ったより伸びたボールにキーパーが慌てて飛び出したりと、ボールをつなぐには厳しい状況。この点で、ノヴァコヴィッチとズラタンの2トップへグラウンダーの縦パスをファーストチョイスとする大宮と、両サイドにワイドに張り出したウイングへの大きな展開を得意とする清水とでは、風上であったこともあり、大宮に有利に働いた。

清水は「風の影響で中盤が下がってしまい、相手のボランチにプレー時間を与えてしまった」とアフシン ゴトビ監督が認めるように、前半はほぼ沈黙していた。守備ではボランチが高い位置を取れず、前線の3枚によるプレスを簡単にくぐられたし、選手の距離感が遠く攻撃も単発だった。33分に高木俊幸がサイドを突破してのクロスに、逆サイドから石毛秀樹が飛び込んだのが前半唯一のシュートであり、完璧な決定機だったが北野貴之に阻まれた。

大宮は相手のプレゼントパス、パス交換で完璧に崩して裏へ抜け出した形、さらにコーナーキックからのヘディングと、前半に3度の決定機を迎えたがいずれも決めきれなかった。大宮も精度を欠いたが、清水も最後のところで集中して体を張って守っていたためだ。

後半、「バックラインをもっと上げて3ボランチとの距離を近くするように」とのゴトビ監督の指示、および風上に立ったことで、清水は流れをつかみつつあった。中盤のプレスに激しさが戻り、大宮のダブルボランチに前半のようには自由にプレーさせなかった。逆に大宮のボールを奪う位置は低くなり、勢いに乗る清水の攻撃に中盤のラインを突破される場面が頻出した。確かに清水ペースになっていったのだが、ここで強風がいたずらを起こした。55分、大宮の右サイドから渡部大輔がクロスを上げる。大きく打ち上げてしまったボールはゴール前に合うことなくゴールラインを割るかに思われたが、風で押し戻されて逆サイドのチョ ヨンチョルまで届く。「あれ?出ないの?」といった風情でヨンチョルのマークに向かった高木俊幸が何でもないキックフェイントにあっさり引っかかり、ペナルティエリアにフリーで侵入したヨンチョルが速いクロスを送ると、青木拓矢に届く直前に必死で足を出したカルフィン ヨン ア ピンのオウンゴールを呼びこみ、大宮が先制した。

虚を突かれたかのような失点に、清水は浮き足立った。さらにその3分後には左サイドバックの吉田豊がつまづいてボールをさらわれ、中央でノヴァコヴィッチに合わされるが、シュートミスで事なきを得た。再び清水の中盤はコンパクトさを失い、66分、ヨンチョルの縦パスに抜け出したノヴァコヴィッチに左サイドを走られ、ヨン ア ピンがかわされて折り返しから青木にミドルをたたきこまれた。

2点差を付けられた清水はボランチを1枚削って長身FWの瀬沼優司を、吉田に代えて内田健太を投入。布陣を4−4−2に変更する。ここで大宮はもう少し注意を払って相手の出方を見定めるべきだったかもしれないが、清水は完全に前がかりでオープンな撃ち合いに誘ってきていたし、大宮も勢いに乗って3点目を取りにいっていた。ただ、清水が2トップにした目的は、従来通りのサイド攻撃からクロスへのターゲットを増やすことではなく、縦のロングボールを放り込んでこぼれ球を両ウイングが拾って2次攻撃を仕掛けることだった。

残念ながら大宮は、1点目を失うまでそこに無警戒だった。実際、そこまで攻撃が上手く行っていたことで、守備の集中を欠いた感は否めない。74分、大宮の前線の選手が足を止めている中、平岡康裕が前線にロングボールを送ると、菊地光将の予測ほど伸びなかったボールをバレーがヘッドでゴール前に送り、瀬沼のシュートは北野が防いだがこぼれ球を石毛がJ初ゴールを決めた。

こちらも一瞬エアポケットに落ちたような失点に、大宮は消極的になった。勢いづいた清水は、東京Vから新加入の高橋祥平が思わず「J1でも、まだ(後半の)30分なのにこんなに蹴ってくるのか」と漏らしたように、前線にどんどんロングボールを送り込む。大宮の2枚のセンターバックに対してバレーと瀬沼、そして両サイドバックには高木俊幸と石毛という、最終ラインで4対4の状況が続いた。風もあって下がる最終ラインと中盤の間が空き、セカンドボールはことごとく清水が制し、2次攻撃を仕掛ける。「FWか中盤を一人削ってセンターバックを入れて、最終ラインを5枚にして守るという形を取っても良かった」と渡邉大剛が振り返るが、ベンチからその指示はなかった。「パワープレーに対して心理的に耐えられず」(ベルデニック監督)、受け身に回った結果、84分には内田のフリーキックが直接飛び込み同点に追いつかれる。その後、試合はカウンターの撃ち合いとなり、互いにビッグチャンスを何度か迎えるが両GKと守備陣の奮闘によりゴールは揺れることなく、強風の中の激闘を終えた。

結果的には互いに評価の難しい試合になったが、よりポジティブにとらえられるのは2点を追いついた清水のほうかもしれない。熟成してきた3トップ、3ボランチによるワイドな展開とサイド攻撃からほとんどチャンスを作れなかったのは厳しいが、バレーと瀬沼の2トップによるロングボール攻撃というオプションが十分に脅威となることが確認できた。今後、清水の対戦相手は3トップ対策とともに、ロングボール対策にも神経を使うことになるだろう。

大宮は流れから2得点を奪った攻撃には手応えを感じたはずだが、「失点時における判断の迷いやプレーの遅れなど、守備に改善すべき点」(ベルデニック監督)が残った。「簡単にロングボールを蹴らせないように前から追うか、DFラインを下げてでもしっかり跳ね返して相手にゴールを割らせないようにするか」(渡邉)、その意思統一ができなかった。昨年終盤のリーグ11戦無敗のころのチーム状態であれば、苦しみながらもチーム一丸となって耐え、跳ね返せていたはずだ。「こういう試合を勝ちきっていかないと、上位には行けない」――キャプテン菊地が悔しさを露わに語った、この言葉がすべてだろう。

以上

2013.03.03 Reported by 芥川和久
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