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【J1:第1節 鳥栖 vs 鹿島】レポート:34分の1試合なのか、開幕ダッシュのための最初の試合なのか…。チーム作りの難しさを勉強させられた開幕戦。鳥栖も鹿島も“らしさ”を出した試合は、課題も期待も知ることができた一戦となる。(13.03.03)

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結果を得るためには、偶然の成せる業もあるだろうが、布石を打つことも大事な要素である。結果をみると1−1の引き分けだが、そのお互いの得点にはサッカーの持つ“流れ(試合経過)”が大きな要因であることを知らしめてくれる。この試合のプレビューでは、『守備にもついて触れさせていただくつもりで…』と記したが、それもこのレポートの布石になっていようとは、筆者自身も驚いている次第である。時間のある方は、プレビューを読み返し、録画された映像を併せてこのレポートを読んでいただきたい。鳥栖というチームと鹿島というチーム、それぞれの監督のチームに作りに対する考え方を見ることができるだろう。

まず見て欲しい場面は、32分鹿島の大迫勇也の得点シーン。右CKから中央にいたダヴィのヘディングが流れ、ファーサイドで大迫のボレーシュートが決まったシーンである。鳥栖は、CKなどの対応はゾーンで守備をする。相手の選手をマークして自由にヘディングなりをさせないというわけでなく、入ってきたボールに対して強くいくことができる守り方を選択している。ここで、強くボールを弾くことができないと、ボールはゴールから遠ざけることはできない。これができなかったから鹿島に先制を許したシーンである。

次に見て欲しい場面は、9分の右サイドからの鹿島のFKシーン。ここでも鳥栖はゾーンで守っている。約40m地点からのFKだが、ファーサイドには中田浩二が走り込んでいる。23分のFKでは、ファーサイドに誰も流れていなかったので鳥栖の失点(鹿島の得点)にはつながらなかった。同様に23分の右CKでは、ファーサイドにジュニーニョがフリーとなっている。24分の左CKでもファーサイドにジュニーニョがフリーとなっているし、野沢拓也にボールがながれシュートを放っている。27分の左CKでは、ファーサイドの岩政大樹に高橋義希がマークに付くが、その横の中田浩二はフリーな状態である。

ここに列挙したのは、『フリーの選手を作るな』ということでなく、鳥栖が入ってくるボールに対して『強く行けてない』ということを知って欲しいことである。繰り返しになるが、ゾーンDFではボールに対して強くいかないと、ボールをゴールから遠くにおくことはできないのだから。32分の大迫勇也のボレーシュートも見事だが、ここまでの鹿島のセットプレーに対するファーサイドの意識の仕方も素晴らしいと感じる。セットプレーでの形をキャンプ中から徹底して作り上げてきたのであろう。今季の鹿島のセットプレーには要注意である。

さて、今度は鳥栖を見てみたい。71分に豊田陽平の力強い突破で同点に追いついたのだが、「岡田翔平が入って前線のところで活性化することができた」(尹晶煥監督)ことも、「追いつかれる前あたりから勢いに乗せてしまった」(岩政大樹)ことも大きな流れといえる。この流れの布石のシーンが、33分に高橋義希が鹿島ボールをインターセプトしてペナルティエリアまで運ぶシーンではないだろうか。先制点は奪われたものの「前半から、鹿島のCBにボールが入った時の狙い目を感じていた」(池田圭)のは全員の共有意識だったようだ。その意識を実践したのが後半に入ってから。後半の立ち上がりこそ、鹿島の押し込むシーンは見られたが、確実に鳥栖のプレス位置が高くなっていた。この高いプレスは、53分の池田のプレーに代表される。一度は、鹿島に奪われたが、すぐに池田のプレスが効いて鹿島の陣内でボールがとどまった。これで、完全に鹿島の勢いが落ちた。65分のスピードある岡田翔平の投入も鹿島DFの足を止めるには効いた。もちろん、ハーフタイム中の尹晶煥監督からの「皆でやるべきことをもう一度やろう」という言葉を全員が実践できたからでもある。それが、71分の豊田陽平の同点ゴールへとつながった。偶然ではなく、数々の布石が生んだゴールといえるだろう。そして、ここにあげたシーンは手元の集計なので、読者諸兄の目でも確かめて頂きたい。

鳥栖の前半のセットプレーの守備、後半の前線からの守備についてレポートしたが、鹿島も守備の意識は高かった。「非常に去年は失点数が多かったということを見てもらえばまずディフェンスをしっかり構築しなければいけないわけであって・・・」とチーム作りの過程であることも添えておかないといけない。水戸とのTMを終えた翌日(28日)に35分×2本の紅白戦を行ったという。開幕戦に向けてというより、今シーズンの最終節順位を見越しての試合だったのだろう。この試合で得た課題も次節に生かされるに違いない。

鳥栖も順調なキャンプを終えたが、開幕戦という独特の雰囲気の中で、鳥栖らしさを最初から出すことはできなかった。鹿島も昨年の課題を修正するべく、その過程の中での開幕戦だった。監督の描くチーム作りの結果を見ることができるのは、まだまだ先のことなのである。この試合だけでなく、チーム作りの難しさも知ることができた開幕戦だった。

攻撃の反対には守備がある。得点が生まれれば、相手は失点を負うことになる。ボールを保持すれば、相手は奪取しにくる。これがサッカーであり、見ている側は歓声と悲鳴を織り交ぜる。今年もシーズンが始まった。予測できないドラマに心を馳せながら、勝手な思い込みで贔屓チームを応援しよう。サッカーは、それが許されるスポーツなのだから。

以上

2013.03.03 Reported by サカクラゲン
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