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【J1:第1節 名古屋 vs 磐田】レポート:東海ダービー開幕戦は1−1のドローも、手応えの差は大きく。充実の磐田は勝点1を持ち帰り、防戦一方の名古屋は辛くも勝点1を守り抜いた。(13.03.03)

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「DF4人でボール回すところを3人で回して、中盤を1枚増やす。それが利点だと思う」
試合後、玉田圭司は3バックの利点についてこう語った。3バックは守備のためのフォーメーションにあらず。しかしそれを体現できたのは、磐田の方だったと言わざるをえない。シュート数は前後半ともに磐田が名古屋を上回り、90分では倍近い数字になった。ゆえに手にした収穫も磐田が上と見るべきだろう。東海ダービーとなった豊田での開幕戦で、優位に立ったのは磐田だった。

名古屋の開幕スタメンは予想通りの11人。負傷欠場が心配された田中マルクス闘莉王もしっかりメンバーに入り、新人の牟田雄祐も開幕のピッチに立った。フォーメーションは3−4−2−1。対する磐田もほぼ予想通りのメンバーだったが、左のウイングバックに宮崎智彦が起用され、前田遼一のパートナーには金園英学が指名された。こちらも新布陣3−1−4−2の配置は変わらない。

試合開始から双方の動きに注目すると、名古屋と磐田の3バックの違いはすぐに見えてきた。3バックにおける守備の最大のポイントはサイドにある。選手の並びだけを見れば、サイドにいるのはウイングバック1枚のみ。彼らに90分の間105mの上下動を課すか、周囲のカバーリングでその負担を軽減するか。名古屋は5バックにする時もあれば、最終ラインがスライドして4バックの形で守る時もあり、かなり流動的。磐田は駒野友一と宮崎をしっかり引かせ、DFラインは常に5バックを保った。どちらが良いとは言えない。だが、名古屋の守備がそれほど安定せず、攻撃に関してもなかなか効果的な崩しを実現できなかったことを考えれば、組織としてのまとまりは磐田に軍配。名古屋はセットプレーとヤキモフスキーのクロスからは決定機を作ったものの、ポゼッションを良い攻撃につなげること、すなわちビルドアップで良い“流れ”を作り出すことができずにいた。

かと言って磐田が前半を優位に進めたかといえばそうでもない。こちらは中盤にうまくボールが供給できずに苦しんだ。相手の2シャドーが常にアンカーのチョン ウヨンの周囲にいるため、DFラインから彼を経由してのビルドアップが封じられ、パスコースはといえばウイングバックかFWへのロングボールのみ。それでも攻撃の流れを作れたのは、金園の存在が大きかった。サイドに運動量豊富に流れ、ボールキープから両サイドのオーバーラップを促す。そこに右は駒野友一と藤田義明が、左は宮崎智彦と山田大記が絡んで重厚な攻撃を生み出していた。

前半は磐田がやや優勢。しかし、先制したのは名古屋だ。36分、縦パスに反応した藤本淳吾がペナルティエリア内で玉田に預け、さらに「パスが返ってくると思ってそのまま走り続けた」(藤本)が、玉田はシュートを選択。それでもDFに当たってこぼれたボールを藤本が拾って折り返すと、闘莉王とDFが交錯する中でボールはゴールへ飛び込んだ。「あれ、オレのゴールじゃないの?」と闘莉王はおどけたが、審判はDFの足に当たって入ったと判定。名古屋の2013年ファーストゴールは、玉田・藤本という攻撃の中心人物たちが誘発したオウンゴールとなった。

1−0で折り返した後半は、名古屋にとっては予期せぬアクシデント含みの立ち上がりとなった。開始3分で闘莉王が足の痛みを訴え、ワンプレーの後、そのまま負傷交代してしまう。「(左ふくらはぎは)もともとできる状態じゃなかったんだ」とは本人の弁だが、これで名古屋は急きょ増川隆洋を投入することになり、リズムを崩してしまった。54分には右サイドを突破され、小林裕紀のシュートがポストを叩く。さらには61分、山田大記のシュートを楢崎正剛が辛うじて弾くなど防戦一方に。ストイコビッチ監督は経験の浅い牟田に不安を感じたのか、牟田と阿部翔平を交代させ4−4−2へと布陣を変更した。

しかし苦肉の策ともいえる4バックは裏目に出た。攻撃面では阿部のビルドアップ能力がプラスに働く部分もあったが、「混乱とまでは言わないけど、今季はずっと3バックをやってきたので」と田口泰士が言うように、感覚のズレを隠し切れない名古屋の守備陣は不安定さを露呈。そして布陣変更から5分後の71分、山田大記にドリブル突破からゴールを許し同点に追いつかれた。以降の試合は完全に磐田ペース。81分には左サイドの突破から駒野がこの日2度目の決定機を迎えるも、またもやポストに阻まれ逆転はならず。名古屋にも78分の直接FKや86分のコーナーキックなど反撃のチャンスはあったがいずれも決められず、試合は1−1のまま終了の笛を聞いた。

結果は痛み分け。しかし内容に関しては磐田に軍配が上がったといえるだろう。「昨季からのトレーニングの成果」と胸を張った森下仁志監督だけでなく、「試合中ふと『今日サッカーが楽しいな』と思えました」(山田)と選手からも充実のコメントが次々に飛び出した。名古屋は指揮官こそ余裕を見せたが、選手たちからは「負けなくてよかった」(楢崎、田口)、「これから徐々に良くなっていけばいい」(玉田)といった趣旨の言葉ばかりがこぼれた。開幕時点でチームが100%になっている必要はないが、この差は序盤戦の戦い方にも大きく影響を及ぼすことだろう。少なくとも磐田は、進むべき道がハッキリ見えている。一方の名古屋は新布陣採用という名の霧がまだ晴れていない印象だ。開幕戦はただの34分の1試合だが、されど軽視はできないもの。この感触の差が、今後にどう影響していくか。名古屋と磐田の序盤戦の動向が、何とも気になる1−1の引き分けだった。

以上

2013.03.03 Reported by 今井雄一朗
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