試合終了間際、大阪長居スタジアムのボルテージが一気に最高潮に達した。Ｃ大阪サポーターが最も望んでいた姿が、そこにあった。0-0で迎えた88分、今季からエースナンバー8番を受け継いだ柿谷曜一朗が、値千金の決勝ゴール。これにより、1-0で新潟を下したＣ大阪は、J1開幕戦では1999年以来、実に14年ぶりに勝ち名乗りを上げた。

しかしながら、「内容に関しては物足りなさが残る」と、開口一番、レヴィー クルピ監督が試合後の会見で述べたように、ホームチームは今季地元でのお披露目の試合で持ち味を出し切れず、苦戦を強いられた。昨年、2種登録ながら終盤戦で活躍し、今季からトップ昇格した南野拓実が先発に名を連ねたＣ大阪。この試合の20分くらいまでは、その南野と、前線の柿谷とのコンビプレーなどでゴールに迫る場面もあった。ただし、その後、主導権は新潟に握られる。全体の連係にチグハグさが目立ったＣ大阪は、ミスからピンチを招くことも散見され、自陣で堪え忍ぶ展開が続いた。

流れが変わり始めたのは、64分。それまで前線でほとんど機能しなかった新加入FWエジノに代えて、杉本健勇を投入したところからだった。交代直後まではまだ相手の攻勢を浴び続けていたものの、「（杉本）健勇が入ってから、結構前で収まるようになって、Ｃ大阪の形が出てきた」と丸橋祐介も言うように、74分には柿谷と杉本のワンツーから決定機を創出。後半静かだったＣ大阪サポーターがようやく沸いた瞬間だった。

そして、3枚目の交代カードとして、Ｃ大阪は80分に扇原貴宏を送り込むと、この起用が当たった。「自分がしっかりと走って、周りにスイッチを入れられるようにと思って、試合に臨んだ」という背番号2が、ピッチに活気をもたらすと、彼の得意とする左足が、柿谷の決勝点を演出。「（柿谷）曜一朗くんが常に裏を狙っているのは分かっていた」という扇原が、新潟DFの背後を突く縦への絶妙なフィードを送る。すると、「タカ（扇原）がボールを持ったときには、左足ですごくいいボールが出てくるので、あの瞬間に目もあったし、いいボールを蹴ってくれたので、あとは流し込むだけだった」と柿谷。新潟GK黒河貴矢の飛び出しを見計らって、エースは右足でループシュートを落ち着いて決めた。「タカの最高のパスを、曜一朗が冷静にしっかりと、技術を活かしたフィニッシュをしてくれた」と指揮官も絶賛するこの1点を最後まで守りきり、Ｃ大阪が1-0という最少スコアで勝利を収めた。

「今までＣ大阪が開幕で勝てていなかったことも知っているので、スタートダッシュができたことは、すごくいいこと」という扇原は、「正直内容はよくなかったが、そのなかでもしっかりと結果を残せたことは、すごく大きな第一歩だと思う」と、この1勝の価値を強調。しかも、「曜一朗が決めてくれてよかった」と酒本憲幸も言うように、その決勝点を今季の顔となる柿谷が決めたことで、Ｃ大阪にとっては今後への弾みとなるのは間違いない。

一方の新潟は、Ｃ大阪を上回る15本のシュートを放ち、何度も相手ゴールを脅かしながら、最後まで1点が遠かった。だが、柳下正明監督が「あれだけ攻撃力のあるＣ大阪が、なかなか自分たちのプレーを出せなかった。それは彼らが悪いわけではなく、新潟の選手たちの守備の意識や切り替えの速さ、そのほうが上回っていたんじゃないかなと思う」と述べたように、試合内容では完全に新潟がＣ大阪を凌駕。新加入の田中達也、成岡翔、レオ シルバらがピッチ内で躍動すれば、ブルーノ ロペスも昨年までと同様に相手DFの脅威となっていた。「内容は非常によかったので、別に頭を下げず、前を向いて、ゲームがどんどんあるので、次のゲームに向けて準備していきたい」（柳下監督）と、アウェイチームは次節のホーム開幕戦での勝利に向けて、気持ちを切り替えていた。

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2013.03.03 Reported by 前田敏勝