キャプテンの大谷秀和が、高円宮妃殿下から受け賜わった天皇杯を高々と掲げる。茨田陽生が「今までTVで見ていた世界に自分がいると思い、フワフワしていました」と言う通り、この大会独自の授与式に柏の選手が整列している見慣れぬ光景には、確かに不思議な感覚すら覚えた。
リーグ戦とヤマザキナビスコカップを含め、柏はG大阪と5度目の対戦となったが、過去のどの試合よりも相手のパスワークに苦しんだ展開となった。特に左サイド、ジョルジ ワグネル、橋本和、サポートに入る大谷の3人に対し、ボールサイドで人数をかけて攻めるG大阪が数的に上回ることでマークの受け渡しがはっきりせず、「少ない人数で対応するのか、(水野)晃樹や澤(昌克)君が戻ってくるのかと、チームとしてうまくいかなかった」(大谷)。
9分、コーナーキックからG大阪FWレアンドロのヘディングシュートはオフサイドとなり、27分の倉田秋の突破から二川孝広が至近距離で放ったシュートは菅野孝憲のファインセーブで防いだものの、G大阪の圧倒的なポゼッションの前に失点は時間の問題だと思われた。
たまらず指揮官が動く。ネルシーニョ監督は水野晃樹を前半のうちに代え、田中順也を投入。準々決勝の大宮戦、準決勝の横浜FM戦で勝利に貢献した水野の攻撃力を諦め、前線で献身的に動ける田中が1トップに入り、澤を慣れたトップ下に置く本来のシステムに戻すことで守備面の安定を求めた。
そして、この采配の効果が顕著に表れる。レアンドロ ドミンゲスのパスと澤のミドルシュートから得た柏の最初のコーナーキックだった。ジョルジの蹴った左アウトスイングのボールから、空中戦に強い渡部博文がニアサイドで丹羽大輝に競り勝ち、豪快なヘッドを突き刺した。このコーナーキックへ至った形も迅速な選手交代がきっかけとなったが、負傷欠場の近藤直也の代役を渡部に託したネルシーニョ監督の起用が的中した格好となった。
ただ、柏が先制点を奪ったというだけで、相変わらずG大阪の攻勢には変わりない。ハーフタイムには「前にプレスに行きすぎていたFWを修正して、澤がボランチのケアに行くことで安定させた」(ネルシーニョ監督)。さらに「那須(大亮)さんから中は人数が足りているからそこは気にしなくていいと言われていた。数的不利になったとしても、中じゃなくサイドを突破されるなら仕方がない」(大谷)、「回されるのは分かっていた。回させているという気持ちで臨んだ」(渡部)と、ある程度守り方を割り切り、サイドに引き付けられてバランスを失うよりも、中央をしっかり固める守備に徹した。
柏の狙いとしては自陣にブロックを形成し、パスコースを限定させながら、G大阪が中央で勝負を仕掛けてきたときに最終ラインが奪い取る。そこからレアンドロ ドミンゲスを起点にしたスピーディーなカウンターを仕掛けることだった。しかし、守備に人数を割くため、前に出た時の前線の枚数が足りておらず、何度かレアンドロ ドミンゲスが突破してカウンターになりかけたが、選択肢が少なすぎてフィニッシュにまで行く場面はほとんど見られなかった。
それでも守備がカッチリとはまっている感はあった。2011年シーズンにJ1を制した時を彷彿とさせる「前半をリードして終えれば勝率100%」という先行逃げ切りの試合運びだ。近藤の欠場で不安視された守備陣も、近藤のパートナー増嶋竜也が体を張った気迫溢れるプレーでピンチをしのいだ。終盤になるにしたがいセカンドボールを拾えず、G大阪の波状攻撃を浴びたが、パスではなくパワープレー気味にハイボールを入れてきたことは柏にとっては幸いだった。先制弾で気持ちの乗っている渡部は、得意の空中戦では岩下敬輔、レアンドロとのバトルを制し、ハイボールを弾き返し続けた。
アディショナルタイム4分が経過し、試合終了を告げるレフェリーのホイッスルが鳴り響く。訪れた歓喜の時。前身の日立時代以来、37大会ぶりの天皇杯優勝である。怪我人や出場停止で心配された選手層だったが、決勝戦で活躍した渡部や、準決勝で左サイドバックに入った山中亮輔ら、ここまでサブを務める機会の多かった選手の活躍もあり、2011年のJ1制覇のようにチーム全体で戦う一体感があった。
「またACL(AFCチャンピオンズリーグ)に出場したい」と選手の誰もが口を揃え、モチベーションを高く抱き、“Vitoria”のスローガンのごとく勝利に徹した。さあ、再び乗り込もう、アジアの舞台へ!
以上
2013.01.02 Reported by 鈴木潤
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