試合後のミックスゾーン。足を止めず、そのまま立ち去る選手が多かったことが、横浜Ｆ・マリノスの悔しさを物語る。昨年に続き、元日決勝目前での敗退という結果は、屈辱以外の何物でもない。さらに焦燥感が募った、この日のゲーム内容が、１年間戦い続けて疲弊した身に、こたえたに違いない。

敗因は、知将ネルシーニョ監督が練った「秘策」にあったのではないか。
「相手は蹴ってきたので、そういう準備をして戦いに臨めばよかった。まさか、あそこまで蹴ってくるとは…」（富澤清太郎）
横浜FMは戸惑った。本来のショートパス中心のスタイルではなく、立ち上がりから、一つ飛ばした縦パスを多用する柏レイソルのサッカーに面食らい、まず、頑強な最終ラインが珍しくバタついた。跳ね返しても相手の果敢なプレスにあい、セカンドボールを拾われ、「勢いにもっていかれた」（富澤）。その渦に飲み込まれた結果、立ち上がりから、どうにもボールが落ち着かなかった。

しかしながら、18分を過ぎると自分たちの“らしさ”を取り戻し始めたように見えた。司令塔・中村俊輔、プレーメーカー・中町公祐の２人がボールに絡み出し、ようやく高い位置でボールが回り出したのだ。
だが、その矢先に先制点を献上。23分、小林祐三と富澤がかぶって競ったこぼれ球をジョルジ・ワグネルに拾われ、左クロスから、最後は工藤壮人に押し込まれたわけだ。
失点シーンを検証すれば、精度な左足キックを持つジョルジ・ワグネルをフリーにしてしまったことが悔やまれる。小林と富澤が同時に競りに行かなければ、その事態を回避できた可能性もある。ただ、そこで普段の守備ができなかったのは、序盤に、まごついた影響かもしれない。

その後、得点を狙い、ボランチ中町が積極的に前線に顔を出し、中村、兵藤らとの連係から、何度かいい形の攻撃を作ったが、相手の守備を崩し切れず、ゴールに結実しなかった。
また逆に、中町が攻撃参加する代償として、もう一人のボランチ、富澤が相手の手数をかけない速攻にさらされ、ピンチを招く機会が増える。よって、主導権を握りそうで握れない状態が続いた。

後半に入り、横浜FMは、決定力のマルキーニョス、ドリブルの齋藤学、高さの谷口博之と多士済々のオフェンスメンバーを、ベンチから次々と送り出す。だが、時間の経過とともに、焦りも芽生え「同サイドに突っ込んでしまって、なかなか横に動かせなかった」（樋口靖洋監督）。相手の守備を揺さぶれずに、時間だけが刻々と流れる。
ついにアデショナルタイム。齋藤がゴール前に侵入し、最後は谷口が詰めるラストチャンスも、柏の体を張ったディフェンスに阻まれ、寒空に審判の笛が響く。
横浜FMは、昨年と同じ12月29日、国立競技場の舞台で、2012シーズンの幕を下ろした。

以上

2012.12.30 Reported by 小林智明（インサイド）