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【第92回天皇杯 準々決勝 名古屋 vs 横浜FM】レポート:1年前と瓜二つの巡り合わせは結果までもが同じことに。スコアレスの120分を戦った末のPK戦は、またも横浜FMに軍配が上がった。(12.12.24)

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日付が1日違うだけの1年越しのリターンマッチは、結果までもがシンクロした。スコアレスの120分を経て、決着はPK戦へ。ゴール前の守護神も同じ、キッカーの顔ぶれも似通った状況で、準決勝への切符を手に入れたのはまたしても横浜FMだった。

名古屋としては“奇襲”を仕掛けた試合だった。今季終盤の基本戦術となっていた田中マルクス闘莉王の1トップをやめ、背番号4は本来のDFとしてゴール前に配置された。代わって前線は玉田圭司、金崎夢生、永井謙佑の流動的な3トップに一任され、中盤もダニルソンを底に小川佳純と藤本淳吾をインサイドハーフに起用。「こちらの想定とはだいぶ違う布陣でした」と横浜FMの樋口靖洋監督が振り返ったように、名古屋はフォーメーションとサッカーのスタイルを大きく変えて臨んできた。長身FWへの放り込みからの展開を排除し、丁寧なポゼッションからスピードとテクニックによる仕掛けでゴールを狙う形は実は選手たちも待望していたことだった。

果たして名古屋の奇襲は成功し、前半は概ね横浜FMが守勢に回った。「闘莉王が一番後ろにいたこと、そして前回対戦(リーグ30節@豊田ス)でウチがワンボランチの横をうまく使えたので、今日はダブルボランチだと思っていた。それが受けに回った要因」と樋口監督は状況を分析したが、それでも守りが崩れないのは今季リーグ最少失点チームの本領発揮か。相手に主導権を渡してしまったものの、被シュート数としては3本のみ。チャンスは作らせても決定的な場面は抑える我慢の展開に持ち込み、前半残り15分ほどは攻撃面でも盛り返した。1トップの小野裕二は精力的なフリーランニングで名古屋DFラインをかき回し、兵藤慎剛、小林祐三ら右サイドも中村俊輔ら中央との連係で形成を回復する一翼を担う。

迎えた後半は横浜FMが名古屋の布陣に慣れたこともあり、動きのある展開に。開始早々49分の金崎を皮切りに、56分の中村俊、66分の藤本と決定機が次々と生まれる。しかしここは楢崎正剛と飯倉大樹の両守護神が抜群の対応で事なきを得るなどしゴールは生まれず。名古屋は67分にダニルソンに代え田口泰士を投入、横浜FMも75分に狩野健太をマルキーニョスに代え、攻撃陣へのテコ入れを図ったが、その後の決定機も得点にはつながらなかった。

延長戦は横浜FMが支配した。見るからに運動量が落ちた名古屋を尻目に、小野と兵藤、小林らを中心に白いアウェイユニフォームが躍動。彼らを操った中村俊の貢献度はさすがの一言だ。試合開始から守備面での働きも目立った司令塔はセットプレーでも好機を演出し続け、流れの中でも惜しいシュートを放った。名古屋は楢崎のビッグセーブがなければどうなっていたか。延長後半終了間際には横浜FM に好位置での直接FKがあり、リーグ30節の悪夢がよぎったが、ここも楢崎が無難にセーブ。細かなカバーリングを見せた闘莉王含め、リーグきっての名手3人による心理戦は非常にエキサイティングなものだった。

かくして決着はPK戦へ。1本目のキッカーは1年前と同じく横浜FMが中村俊、名古屋が藤本だったが、藤本がまさかのミスキックで失敗。「(今季は得点をうまく取れなかったが、)PKまで入んなくなったか」と藤本はうなだれた。そのまま2本目から4本目は両チームがきっちりと決め、勝負の5本目を楢崎が止めたことで形勢は名古屋へ傾いたかと思われたが、8人目の田中隼磨のシュートを飯倉がセーブし試合は終了。今季も瑞穂陸で歓喜に沸いたのは、トリコロールに染まったアウェイ側スタンドだった。

それぞれの立場で試合を振り返れば、まず横浜FMとしては想定外の事態に対応しきったチーム力に自信を深めたことだろう。この試合の隠れた功労者は富澤清太郎と中町公祐のダブルボランチだ。彼らが攻守に冷静さを保ったことでチームは我慢の展開を堪えきることができた。中町はセットプレーの二次攻撃でも存在感を見せ、富澤のビルドアップでの配球センスは実に効果的だった。スコアレスに終わったとはいえ、チャンスの数自体は十分。樋口監督が「あと二つ、元旦まで行って喜びたい」と早くも決勝を見据えたのも、よほどの手応えがあったからだと推測できる。久々のタイトルとAFCチャンピオンズリーグ出場権、勝利に飢える古豪は充実の表情でスタジアムを後にした。

一方、これで2012年シーズンが終了した名古屋の表情はサバサバとしたもの。すでにリーグ戦で7位と不本意な成績に終わっており、この敗退で来季は3年ぶりに国内タイトルのみのシーズンになることが決定した。唯一の救いは充実の横浜FM相手に新たなスタイルが一定以上の内容を作ったこと。阿部翔平、藤本、玉田らは一様に「悪くなかった」との見解を示しており、長身FWに頼らない攻撃の構築の先鞭はつけられた。とかくケネディ不在がクローズアップされてしまった今季最大の課題に、今から手を付けられたことは小さくない成果だ。だからこそ試合後のサポーターは温かく敗戦のチームを迎え、引退する巻佑樹と戦力外となった生え抜き11年のベテラン吉村圭司、三都主アレサンドロらを笑顔で送り出すことができた。来季は勝負の年。アジアへの挑戦権を失って戦うシーズンといえば、リーグ初優勝を遂げた2010年が記憶に新しい。国内に集中できるとポジティブに捉え、復活といえる1年にできるか。「今のJリーグは絶対的なチームがない。だからこそすごくチャンスがあるし、また返り咲けるようにしたい。戦力は揃っている。それができれば今年みたいなシーズンがあってよかったなと言えるようになれる。このまま落ちていくわけにはいかない」。淡々としながらも、玉田は強い意志を言葉にした。来季のチーム始動は約1か月後。新たなモチベーションを得た名古屋は、ひとまずの休息期間に入った。

以上

2012.12.24 Reported by 今井雄一朗
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