Ｆ東京の２年連続ＡＣＬ出場の夢は潰えた。残留を争う神戸に０−１で敗れ、ＡＣＬ出場圏内の３位の可能性が消滅。神戸は１５位を死守し、柏、広島と続く残り２戦で残留を目指す。

ピッチに降り注ぐ雨粒は、時間の経過とともにその激しさを増した。ピッチは姿、形を変え、後半が開始する頃にはスタンドからでも容易に確認できる大きな水たまりがそこかしこに現れた。そこからのゲームは神戸の安達亮監督が「肉弾戦」と話した、球際で激しく体をぶつけ合う試合となった。ボールを扱うこともままならず、ただ前に蹴り出すことしか許されない。資料映像になるような試合だった。だからこそ、この試合は先手を取らなければいけなかった。徳永悠平は「前半で勝負を決めないといけなかった。チャンスもあったし、無失点でいけば展開も違った。崩されたというよりも自分たちのミスからの失点だった」と言い、失点を悔やんだ。

神戸は陣形が整い切らないＦ東京の一瞬の隙を突いた。27分に、右ＳＢ奥井諒がギアを替えて一気にサイドからボールを持ち上がる。途中、小川慶治朗とのパス交換を挟み、さらにスピードを上げる。それに合わせて周りの選手もゴールへと駆け寄った。そして、勢いそのままに右足に力を込めると、鋭い弾道でネットを揺さぶった。

先手必勝の言葉どおり、この1点を神戸は体を張って守り切った。後半開始直後に、ＦＷルーカスがゴール前でシュートを放とうとすると、複数の選手が体を投げ出してコースを埋めようとした。それが象徴するように、激しく90分間を戦い抜いた。途中、ベンチへと下がった奥井はその姿に「外から見ていて戦う姿勢を誇らしく思った。このチームの一員でよかったと改めて思った」と語った。

試合後、高橋秀人は「Ｆ東京も悪くはなかったけど、五分五分というよりも試合序盤から神戸に分があった」と敗戦を認めた。「守備的に入った」（安達監督）という神戸は、最終ラインから前線までの距離を縮めてスペースを消した。マイボールにすると、前線のＦＷ都倉賢を目掛けて蹴りこみ、周りの選手も積極的に背後へと飛び出した。激しい守備と迫力を備えたカウンターにやや押されてしまった。

飛沫を上げるピッチの中では、Ｆ東京のパスをつなぐスタイルは効力を失った。それでも終盤は何とか浮き球をつないでゴールへと迫ろうとしたが、神戸の体を張った守りを最後まで崩しきれなかった。

Ｆ東京の残り２戦はＧ大阪、仙台と続く。対戦相手にとっては残留や、優勝が懸かった試合だ。だが、Ｆ東京は完全に蚊帳の外に追いやられた。「どこよりも早く来年の準備ができる」と強がってみても後悔は残る。今できることを真剣に考えないと、無駄な数週間を過ごすだけになってしまう。課題は目の前に転がっている。ピッチコンディションや環境は違ったが、またも同じ展開での敗戦だった。これをクリアしなければ、２０１２年は終われない。

以上

2012.11.18 Reported by 馬場康平